【京丹後市】 「地域おこし協力隊」になった、今淵崇さん(平成18年度1次隊/マラウイ/村落開発普及員)[2011年6月1日掲載]


今淵 崇さん(京丹後市 在住)

田舎暮らしや地域活性化への貢献を希望する都市住民が、報酬付きで地方農村部の過疎地域へ移り住み、その担い手として活動する『地域おこし協力隊』(総務省ホームページ)。この制度は青年海外協力隊をモデルに2009年度より総務省の事業として開始され、各自治体が隊員の受入れに取り組んでいます。

地域おこし協力隊として活躍する青年海外協力隊OB、京都府京丹後市で活動中の今淵さんを紹介します。JOCAネットコミュニティの登録者同士が本サイトの利用によって繋がった一例です。

<経緯>
2010年5月 “JOCAエリアサポーター”にご登録の京丹後市さんが「地域おこし協力隊」募集掲載

⇒ “地域実践者”として登録している今淵さんが同募集を閲覧、応募
⇒ 書類審査、面接を経て採用
⇒ 2010年8 赴任

※ 本記事の下段に、京丹後市役所 元企画政策課 担当職員さんのコメントを掲載しています。 

 赴任地は人口11人の集落 

京丹後市は2004年4月に6つの町が合併して誕生した近畿地方最北端の町。
「日本ジオパーク」に認定され、2010年10月に世界認定を受けた「山陰海岸ジオパーク」(HPリンク)の貴重な地質遺産をはじめ、美しい山や海岸線等の自然環境に恵まれている。全国ブランドで知られる「間人ガニ」や、上品な香りと甘味と粘りが特徴の「丹後産コシヒカリ」等、豊かな水産物、農産物の産地。


上山地区の全景

丹後半島の中山間地域にある丹後町上山集落(地区)【「風渡る里 うえやま」】(HPリンク)が今淵さんの赴任地。公共交通機関での最寄りはバス停となるが集落までは徒歩1時間。町と集落を結ぶ生活道路(市道)は一本。冬場は積雪が多く、道路アクセスが絶たれてしまわないよう除雪は不可欠となる。


上山地区の全世帯主のみなさん
(一番右は今淵さん)

人口は11人5世帯(今淵さん以外)。半径100メートル以内に全世帯が寄りそうように並ぶ。高齢化率は50パーセント、孫がいる世帯を除くと39歳の今淵さんが最年少者だ。2010年8月、この限界集落と呼ばれる上山に移住した今淵さんは、地区の方と市役所が提供した築200年の古民家に住み、地域おこし協力隊の隊員として活動を続けている


今淵さんの家(築200年の古民家)

京丹後市の地域おこし協力隊の赴任地は当初四つの候補地があり、今淵さんは敢えて上山地区を選んだ。

「ほかの地域は比較的に活動範囲が広域にわたるところで、自分としては小さな集落でじっくり腰を据えて活動していきたいと考えていたので、上山地区を選択しました」

地域おこし協力隊の面接試験では、赴任先の地域・地区の代表者が面接官となることが多い。今淵さんの面接では上山地区の地区長さん(町内会長にあたる)であった。志望動機に書かれた今淵さんの意気込みが気に入られ、マッチングが成立したという。

[志望動機 (抜粋)]
“忘れ去られつつあるお年寄りの方々が持っている知恵が、地域の活性化に役立つことがたくさんあるはず。集落のおじいさん、おばあさんからその知恵を学びながら、一緒に集落を元気にして、地域を離れた人たちにもいつかは戻って来られる場所にしたい”

外から来た自分を活かす

京丹後市は総務省事業である「地域おこし協力隊」の受入れのほか、農水省事業である「田舎で働き隊」や京都大学との連携事業なども含め、活用できる地域おこし事業を積極的に行っている自治体である。過疎高齢率は府内ナンバーワン 。京都市民(都市住民)のなかで京丹後市の場所を知らない・府内で行ったことがない地域ナンバーワン。不名誉なナンバーワンから脱するため、これらの事業をきっかけに京丹後市が外部に宣伝され、I・Uターンで若者を呼び込むことを狙いとしている。

国際協力農業分野の専門学校やマラウイでの青年海外協力隊での経験を通じて参加型開発の手法を学んで以来、国内での地域振興に携わる仕事を目指していた今淵さん。


野焼きをする今淵さん

上山地区に赴任する前は、自然環境が厳しく交通の不便な場所で暮らしていけるのか、外から来た自分が地区の方々に理解してもらえるのか、過酷なマラウイで活動経験を活かす自信を持っていたにも関わらず、正直不安を感じていた。同じ日本人を相手に協力隊活動をするというのは言葉の面で問題なくとも、妙に緊張してしまう。

赴任後しばらくは、地域の人々から警戒されていたそうだが、同じ外部からの入居者で73歳である地区長さんのいろいろな気遣いのおかげで次第に集落の人々から理解してもらえるようになり、今や地区長さんの側近かの如く集落に溶け込んでいる。

今淵さんは京丹後市役所企画政策課の臨時職員としての身分で、市役所からは報酬、住居のほか、活動に必要な車両、ガソリンなどの提供を受ける。市の担当職員からは活動に対するアドバイス、関連部署との連携など、ソフト面での支援を行ってもらっている。

今淵さんの上山地区での地域おこし協力隊としての主な活動メニューは次のとおり。

  • 農産物の販売促進、交流活動(物産展などの参加)
  • 地域の発信・宣伝活動、地域振興に関する外部情報の収集
  • 高齢者世帯への農作業支援
  • 行政のケアが行き届きにくい地域へのサポート
  • 冬期間の除雪作業
  • 町の行事参加(地区代表として)
  • お年寄りを元気にする各種活動

なかでも農産物の販売促進では、特産品であるお米 丹後産コシヒカリ(平成21年度までは魚沼産コシヒカリと並ぶ食味審査特Aランクを3年連続獲得)を目玉商品として売り込む。お米作りは上山でも盛んにおこなわれ、特に湧水を利用した水田でできるお米は、最近では希少な米として出荷シーズン直後に売り切れになることもあるそうだ。 


国連大学前でのファーマーズ・マーケット

今淵さんは京都市内で行われた商工会議所主催の販売会や、東京・渋谷にある国連大学前でのファーマーズ・マーケットなどに参加し、都会の人々へ丹後・上山の紹介をしていった。催し物以外でも関東出身である今淵さんは「外の人間」であることを活かし、関東にいる知り合いのルートを伝って丹後上山産コシヒカリの購入先を確保することもできた。

もちろん、青年海外協力隊のOBという利点も活かす。

今淵さんは耕作放棄地を地元の方から無償で提供を受け、自ら米作りや野菜栽培も行っている。5月にはJICA京都デスクの国際協力推進員(元青年海外協力隊)と連携した「田植え会」では都市の人たちと地区の人々を交えて田植え体験を行った。

畑ではナタマメやハバネロの栽培をはじめた。ナタマメは京都府の青年海外協力隊OBOG団体、京都海外協力協会(KOCA)の集まりに参加したときにナタマメをお茶にすると換金作物になるという情報を得て、早速実践に取り掛かった。うまくいけば集落の人々へ紹介して、少しでも収入向上に繋がればと期待を膨らませている。

また、ちょっとした国際交流として、所属先の同じ課内に京丹後市国際交流協会がある。そこでは、国際理解教室の講師としてマラウイで体験した話をしり、京都市内の留学生を対象として1泊2日のホームステイの受け入れを行い地区の方々とのプチ国際交流を行った。留学生を通じて上山のことが広まる可能性を期待している。

しかし、なんでもかんでも新たなことをすれば良いという訳にはいかないことを今淵さんは心得ている。地区のために良かれと思っていても、周辺の地区外の方々への配慮は不可欠である。

「上山で何か新しいことをするときは他の地区の方々のことをきちんと考えないと、逆に上山地区の方々に迷惑をかけてしまうから、地区内外を問わず良好な人間関係の構築は何よりも大切なことですね。マラウイの村で活動していたときと全く同じことです」

厳しい自然との共存


5月30日 豪雨による土砂崩れ(市道)

農作業は無理をせず自分のペースでやらないと体が動かなくなるとおじいさんたちから常々言われている今淵さん。農業を始めた当初、進み具合いや天候の変化につい焦ってしまい、がむしゃらに動いてしまう傾向にあった。師匠の教えはごもっともだ。

とはいえ客観的に見て、地区のお年寄りのタフさとパワフルさには未だに驚くという。例えば83歳のおじいさんがバリバリの現役で農業をし、農業機械や除雪車も自由自在に操り、地区一番の乗り手だ。外で体を動かしていないと落ち着かないそうだ。加えてお酒も強く、長い時には10時間位飲み続けているときもある。地区のお年寄りは年代を問わず、皆同様に元気モリモリだ。


冬場の除雪作業(市道)

自分たちの生活する場は自分たちの手と身体と知恵で守る。地区の方々が長年厳しい自然環境のなかで生活を営んできた教訓。現代社会のなかで忘れられてきた大切なことを今淵さんはこの集落に来て学び続けている。

東日本大震災ボランティアへの参加

今淵さんは地域おこし協力隊員になる前、青年海外協力隊二本松訓練所(JICA二本松)で働いていた。大地震発生後、二本松訓練所は福島原発の周辺住民の避難所となるなど、愛着がある東北地方の被災地のことを気にしながら上山で活動を続けていた。JOCAネットコミュニティで東日本大震災での「災害救援専門ボランティア」(URLリンク)の募集を見て登録した今淵さんは、市役所と地区の了解を得て、田植え前の活動に支障がない時期の4月16日から1週間、仙台市若林区での支援活動に参加した。

住宅会社で約10年の勤務経験がある今淵さんは当時取得した建築士の資格を活かして、建物被害の調査業務を行った。ボランティアが被災建築物(主に一戸建て)の中で家財搬出などのボランティア活動を行う前に安全かどうかを確認する危険度判定の仕事。ほかにも津波被災住宅での土砂拠出(泥すき)の作業にも汗を流した。

ボランティア活動を終えて上山に帰任したあと、地区の方々に被災地での様子を伝える発表会を行った(丹後では84年前(1927年)にM7.3の北丹後地震が起こった歴史がある)。

「地区のなかで当時のことを覚えている88歳のおじいさんは、4歳のときに体験した記憶を思い出し今の東北の状況を思い浮かべていました。また、倒壊した建物の状況について説明した後、上山は古い家がほとんどだから、地震に対してはそなえを忘れずしてくださいと話をしました。地区のみなさんに地震対策について考えてもらえる機会となりました」

これからの課題

赴任して約10カ月。これまでの期間、補助金や助成金などを活用した地区の事業が計画され、今淵さんも地区の寄り合いなどの会議に参加してきたが、各々の意見の違いなどで調整がつかず先送りとなってしまった。地域全体の利益を優先する意見、世帯単位での利益が増えることで結果的に地域の活性になるという意見。地域振興の難しさを感じる日々が続いている。今淵さんの任期は今年度末まで。地区内に設置する案内看板や観光マップ看板などの小さな取り組みや、集会所改修、加工所の設置といった補助金事業など、大小関わらず計画事業はいくつかあり、今後も地区の方々との模索が続く。

これまで外の人間の利点を生かしてきた活動をより有機的なものに実らせ、残る任期の間に上山地区の将来的な地域振興につながる成果が生まれることを切に願っている。

京丹後市役所 元企画政策課 担当職員さんのコメント

Q1: 今淵さんの活動をどのように評価されていますか。

当初から積極的に地域の中にとけ込もうと努力され、今ではすっかり地域住民となり活動されていることに非常に深い感銘を受けています。

Q2: どのような成果がありますか? 

 今淵隊員の主な活動場所となる上山地区は、高齢化率約46%で10戸未満の集落であることから、自身の活動に加え、区長という自治会長のサポートをしていただくことも多々あります。このような中、今淵隊員自身の頑張りにより、区長をはじめ、周囲の人にも隊員としての存在が認められ、地域の人を動かす場面も多く見受けられるようになりました。またそのことにより、今淵隊員自身のモチベーションが上がり、活動をより積極的に行うことになるといういい方向への相乗効果も出てきています。
 また、地域おこし協力隊員として自身の関わる地域での市の他の地域政策(水と緑の里づくり支援員、ふるさと共援事業、里力再生事業)への協力も行っています。今淵隊員が間に入ることによって政策と政策が連携するという非常に良い成果も現れ始めていいます。

Q3: 市役所内や地域の方々のなかで「青年海外協力隊」のイメージが変わりましたか?

 「青年海外協力隊」って、自身の信念と希望を持って、外国で活動される方々という漠然としたイメージがありましたが、今淵隊員と関わることで、具体的に諸外国で活動される大変さや楽しさを聞き、益々いいイメージとなりました。
 また、今年2月にモンゴルOG「ふたり女子キャラバン」のお二人が来られた際も、全く面識はないのに、同じ「青年海外協力隊OBOG」ということで、活動の助けのために市役所に働きかけをしてお二人を歓迎していただいたことなど、本当にJICAボランティアOBOGの絆の強さを感じました。

Q4: 今後の京丹後市ならびに過疎地区における 「地域活性化」の課題に対して、青年海外協力隊のような草の根活動の若者に寄せる期待などがあればお願いします。

今、京丹後市に限らず日本各地で過疎地域が増える中、地域おこし協力隊を始めとする「地域活性化策」が行われています。行政主導のものから、民間事業者が行うものなど色々な角度から見た活性化策があると思いますが、根本は「地域を良くしたい、活性化したい」という同じ考えで行っているものと理解しています。

地域活性化の課題には、まず最初に地域にどのように入り込むのかという課題があり、当然、市役所等行政がその役を担うべきところもありますが、青年海外協力協力隊OBOGの方々のように、「積極性を持って地域に入っていくんだ」という強い気持ちを持たれるかただからこそ、最初はとまどいを感じ、一見、他人任せになりがちな方も次第に打ち解け、隊員と一緒になり地域活性化に取り組もうと意識の変化が起こるのだと思います。

関連サイト

上山集落
http://www.geocities.jp/ueyamaku/index.html

丹後町
http://tan-go.jp/kankou/index.html 
京丹後市
http://www.city.kyotango.kyoto.jp/

JOIN 移住・交流推進機構 地域を変えていく新しい力「地域おこし協力隊」

http://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/ 
 

 

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