【神奈川出身】 ウナギ研究の第一線で活躍する、青山潤さん (平成1年度1次隊/ボリビア/養殖)[2011年5月16日]


青山潤さん

2011年2月3日 世紀の大発見ニュースが世界を駆け巡った。東京大学大気海洋研究所と独立行政法人水産総合研究センターの研究チームが、ニホンウナギの卵の採集に世界で初めて成功した。各国メディアでの報道の前日には日本の各新聞で大きく取り上げられた。このチームの中心研究者の一人に青山潤さんがいる。青山さんは現在、東京大学大気海洋研究所海洋アライアンス連携分野の特任准教授としてウナギ研究の第一線で活躍している。

青山さんの実績はこれだけではない。2009年にフィリピン・ルソン島で新種のウナギを発見したこともニュースになった。それまで世界では18種のウナギが確認されていた。世界で初めてこの18種類のウナギを全て採集したのも青山さんたちの研究チームである。

世界を駆け巡ったニュース


青山さん著書

その奮闘ぶりは2007年『アフリカにょろり旅』の出版によって一般の人にも広く知られるようになった。この本はベストセラーとなり、第23回講談社エッセイ賞に輝いた。アフリカ以外のウナギ採集については、2011年2月に出版された2冊目の本『うなドン』に詳しく書かれている。

研究者としての青山さんはどのような仕事をしているのだろうか。研究内容によって大きく異なるが、例えば、昨年のローテーションは次のようになる。

1月~3月 インド洋・インドネシア周辺海域での海洋調査
5月~8月 マリアナ諸島周辺海域での海洋調査


調査船の甲板にて(右端が青山さん)

上記以外は、毎月1回の相模川における夜間のシラスウナギ採集、岡山県、熊本県でのフィールド調査、共同研究のための海外出張、デスクワーク、学会、学生指導などを行っている。

研究のメインである海洋調査中は、当然、船上生活となる。調査船での観測作業は、24時間休むことがない。このため、船員さんたちにあわせ、午前と午後、それぞれ12時から4時まで、4時から8時まで、8時から12時までのシフトを組んで観測にあたる。基本は4時間勤、8時間休で動く。しかしチームリーダーの青山さんは、不測の事態に随時対応しなければならないため殆ど休めないという。

世界に通用する人間になる

青山さんは大学卒業後すぐに養殖隊員としてボリビアに赴任した。まず、アンデスの先住民が集落単位で管理している標高4000~5000メートルの湖に、養殖したニジマスの稚魚を放流した。それらは、わずか半年ほどで60センチの大きさとなり、極めて肉質の良い商品となることがわかった。各集落は、単に生活用水としか考えていなかった湖に、高い生産能力があることに気がついた。活動は軌道に乗り始めた。しかし、任期の途中で思わぬ展開になる。

寒冷な高地で活動していた青山さんは、低地の熱帯アマゾン流域にある大学の魚類博物館に配置転換された。博物館の魚類関連資料の再構築が新たな仕事。ここで壁にぶつかる。いくら良い提案をしても、日本から来た学士の言うことは、博士の一言で覆される。日本以上に学歴社会の壁を思い知った青山さんは、日本に帰ったら博士号を取って世界に通用する人間になりたいと強い意志を抱く。

帰国当初は再び海外に出ることを考え、協力隊事務局で国内協力員として働きながらチャンスをうかがっていたが、隊員時代と同じ轍を踏めないと気づき、博士号取得のために色々な経緯をたどりつつ、最終的には東大の大学院に入った。

ここで恩師である教授のもとで、世界の誰もが成し遂げていない18種のウナギを採集して博士論文を書くという冒険とロマンに満ちたウナギ研究人生の開始となった。

出版秘話

Q: なぜ、本を書くことになったのですか?

2001年にルポを書くために調査船に同乗してきた作家の阿井渉介の「研究のアウトプットはテレビや新聞に取り沙汰されるが、その成果がどうやって得られたのかというインプットの部分は誰も知らない。だから、研究者といえば白衣を着たマニアのように思われてしまうのでは?」という言葉がきっかけです。

Q: どれぐらいの期間で書きましたか?

2004年に参加した南極航海の船上、2週間ほどで書き上げました。窓の外に氷山を見ながら、灼熱のアフリカに思いを馳せました。

Q: 本を出して何か変わりましたか?

普段は、理系の研究者に囲まれ生活していますが、出版後はそれまで全くつきあいがなかった文系の人たちとのつながりもでき、人脈が広がりました。

Q: 3冊目の出版予定はありますか。

新種のウナギを発見したフィリピンの物語を講談社の「小説現代」に連載することが決まっていて、連載が終わったら3冊目の出版となります。あと、ウナギの卵の採集に至るまでの研究者達の話も書きたいですね。

発見は入口

今回のウナギの卵の発見は、博物学的研究のゴールに過ぎない。ようやく冒険の時代が終わったということだ。今後は、激減するウナギ資源の保全など社会貢献を念頭に置いた研究が始まる。青山さんは、これからやりたいこととして3つ挙げた。

一つ目は、ウナギの産卵場形成メカニズムを明らかにする。このことはウナギ資源量の変動予測のみならず、効率的な完全養殖技術の確立にも極めて重要な応用研究課題である。
二つ目は、未だほとんど明らかになっていない世界のウナギの産卵・回遊生態を解明すること。現在は19種のウナギのうち5種しかその産卵場は明らかになっていない。
三つ目は、もう一度国際協力の現場に立つこと。隊員時代から大きく成長した自分が、国際協力の場で何をしでかすのやら興味があるという。

本当にいるのだろうか、採集できるのだろうか。数々の苦難を重ねてきたウナギ博士は後輩隊員たちにエールを贈る。

「先のことを深く考えてもしかたない。一寸先は闇なんだから。目の前にある面白いことに、全身全霊で取り組んでいればいいと思う。本当の時間を積み上げていくことが大切」

 

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