【神奈川県】 医療ソーシャルワーカーとして活躍する、水野義之さん(H17年度3次隊/ルーマニア/ソーシャルワーカー) [2010年10月21日掲載]

病院などの医療機関で患者さんやその家族の相談に乗り、経済的・心理的・社会的な悩みなどの問題解決のお手伝いをする医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker略してMSW)。医療や福祉に携わる人材不足が社会問題となっているが、このMSWという専門職においても質的・量的に不足し、全国に1万人ほどしかいないと言われている。

水野義之さん(平成17年度3次隊/ルーマニア/ソーシャルワーカー)は2010年4月から神奈川県の民間病院でMSWとして勤務。病気や障害によって退院後の独居生活に不安のある高齢者に公的サービスの紹介や調整、クライアント家族の協力を得るために家族関係の調整などを担っている。病気、怪我、家庭環境などそれぞれ事情が異なるクライアントひとり一人に添い、聞く・話す、を繰り返し、悩みをなくしていく。身寄りのない高齢者のクライアントには行政サービスを得る手続きなどを代わってすることもしばしば。勤務先の病院では3名のMSWで常時150人ほどのクライアントに対応する。入退院前後の相談が重なるとフル回転になることもある。

「何を成功とするか判断は難しいですが、『お話し易いです』と言ってもらえたり、退院した後も相談に来てくださったりすると、自分の援助は少なくともクライアントにとって不快や不利益を与えていなかったのだと思えます」

精神的フォローが重要

病気というのは全てが徐々に進行するわけではなく、突発的に脳卒中になってしまったり、事故等に遭遇して健康体から突然寝たきりになることもある。病院現場ではクライアントもその家族も先ず、病気や障害を受けいれることに時間がかかり、さらに治療や療養について次々と重大な決断に迫られ困惑状態になる。当事者にならないと医療や福祉を活用する方法を全く知らないということがほとんど。

「残念ながら医療も福祉もお金がかかります。できるだけ負担を減らせるように制度やサービスのアドバイスをすることも重要です。そのような援助が結果的に精神的な負担の軽減とフォローにつながります」

唯一性の職域に惹かれて

MSWは資格取得を必須としていないため、稀に一般文系の大卒者もなれることがあり、看護師や介護の現場を経てMSWのような相談職になる人もいる。

水野さんは北海道出身の29歳。はじめは新卒で地元の病院のMSWとして3年勤めた。求人では社会福祉系の大卒が条件でクリアしていたが、現場の経験は初めて。クライアントは高齢者が大半を占め、その家族も水野さんの親世代の方々。感情的な場面では新米の水野さんが怒鳴られることもあった。

困っている人や悩んでいる人を助けられる仕事をしたいと思っていた高校時代。医師になろうかと考えたが、そもそも理系科目は大の苦手。医療系大学に入れる自信がなく、文系の学歴でも病気や障害による弱者、困窮者と言われる人々を対象にした仕事につけるのは福祉だと思った。なかでもMSWという職種を選んだ動機は、「『病院』という臨床の場に憧れていたということが大きいです。そこで病気や身体の治療をメインとする医師や看護師とは違って、患者の社会的な部分を取り扱う、回復させるという特殊性、病院における唯一性のような職域に惹かれました」

見えてくる社会の問題

北海道と神奈川、海外ではルーマニアでMSWの活動を経験。同じMSWの仕事でも接する人々の地域環境や背景が異なると、影響している社会の問題の違いに気付かされるという。

例えば北海道。クライアントの自立生活にむけた各種サービスは、都市部と比べて選択肢が確実に少ない。限られたサービスや資源を最大限活用する工夫が必要となり、『家族』自体を資源のひとつとして考えることが重要で、経済的にも社会的にも回復するにあたり家族が作用することが大きなポイントとなる。ルーマニアでは活動の対象は貧困児童であったが、ジプシーといわれる人種に対する差別や社会主義体制崩壊による急激な経済発展の影が要因となっていた。

「単純だけれどもいろんな人と各地で接してきたことはそのまま自分のMSWとしての能力が高まったと思います。社会背景やサービス環境の違いを理解することで、クライアントの事情をパターン化したり自己解釈することなく、広い視点で問題解決に手助けできるようになったと思う」

医療と福祉 わたしたちは何をすべきか

医療も福祉も民間の力で多用なサービスを選択できるようになった一方で、裕福な人に向けたサービスが大きくなりバランスが崩れている。民間有料老人ホームは充実したサービスを受けられる代わりに、入居金や家賃が高額であることが多く、一般に得られる年金だけで入居するのは難しいと言わざるを得ない。水野さんは日々高齢者のクライアントと接するなかで医療福祉の在り方について考えさせられると言う。

「福祉も民間企業の力を活用するというのは非常に良いことだとは思いますが、ややベクトルがずれている場合もあるのではという気がします」

他方、医療福祉現場では従事者の不足、重労働・低賃金などの問題がある。MSWも質・量ともに不足している状態にある。特に福祉というのは歴史的に困窮者や弱者への『奉仕』というのが根底にあることが問題の根源ではと水野さんは考える。最近では一般的に看護や介護を『サービス』として捉える感覚も養われてきているが、サービスを受ける人と働き手との感覚の差が生じ、結果的に人材が定着しにくい業界と化しているとみている。

途上国の貧困や社会問題を肌で感じてきた協力隊経験者のほとんどが、“日本は恵まれている”ことを実感したが、帰国後の生活をおくるなかで “日本はこのままで大丈夫なのか” と疑問を感じているひとも多く、各方面で途上国経験を仕事や社会活動に活かしている。

「途上国での困窮の要因は違うとしても、日本で生活している身近なところで何かしらの援助を必要とする人がいます。そういう人の存在を知り、協力隊として海外で実践してきたように、国内のそういう方に対して親身になって何ができるかを考えること自体がとても重要なのだと感じます」

 

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