【群馬県神流町】わたしの仕事道具~なたとのこぎり 木村高江さん(平成10年度3次隊/ニジェール/青少年活動)[2010年12月25日掲載]

「アラフォーにしてすごい筋肉がついてしまった。さすがに女性として悲しい・・・」

木村高江さん(平成10年3次隊/ニジェール/青少年活動)は、鉈(なた)と鋸(のこぎり)をぶらさげ、ヘルメットをかぶり、毎朝6時半には山へ入る。グリーンキーパーとなって2年目。木こりの仕事が板についてきたうれしさ反面、たくましくなった腕を見るや、婚活への影響を心配することもしばしば。

職場は群馬県神流川森林組合。組合では森林作業員のことをグリーンキーパーと呼ぶ。年間を通じて「森を育てる」お手伝いする仕事。森林の健康を保つためには色々な手作業が必要となる。林内に陽がさすようにする「間伐」、余計な枝を落とす「枝打ち」、周囲の雑草を刈る「下刈」、苗木を植える「植付け」、下地の準備をする「地ごしらえ」など。

現場で感じる、林業の厳しさ

肉体疲労は避けられない。チェーンソーなどの機械とともに燃料を担ぎ、足場の悪い急斜面を歩く。危険できつい労働ではあるが、山がきれいになったのを見ると気持ちがいい。一緒に働く人たちが、一つの現場が終わると「これでこの林もよくなるだんべ!」と言うが、本当にそう思う。四季の移ろいを五感で感じられる贅沢な環境。暑さ、寒さ、風の音、水の音。本当に自然の中にいることを実感できる。

そう感じる一方、日本の林業の厳しさを身にしみて感じている。
間伐した木は、必ずしも市場に出されるわけでなく、多くが「伐り捨て間伐」として山に捨てられている。こんなにいい木なのにもったいない!と思う毎日。スギ、ヒノキ、端材だって十分使える。間伐材の活用促進が方々で取り上げられているがコストの問題解決は容易ではない。有効に利用できるような取り組みができないものかと思う。30年前の森林と今の森林では、価格はもちろんだが、生態系や環境の変化により同じではないので、変化にあった森林経営が求められている。というのが、私たち外から入った人間の目。言うは易し、行うは難し。

厳しい業界に入った私は、そもそもいきなり林業に興味を持ったわけではなかった。

生活の場での青少年育成に携わりたい思いで協力隊に参加。現地では青少年活動が皆無に近かった配属先で、レクレーション活動を立上げ、子どもたちとともに青春の汗を流した。

短期派遣をふくめニジェールには3回赴き、将来のことを考えた。ニジェールの人々が厳しくも豊かな自然と直結した生活を送っていることを体験・実感した自分。ふと日本での生活をみると、自然がなんとなく遠いところにあって、それが不自然な気がした。

帰国後、なんらかの形で自然に関わりたいと考え、森林ボランティア活動に参加するようになる。森の師匠から、なぜ木を伐るのか、森林を守るってどういうことなのか、自分も森林の恩恵を受けて生きていることが実際の活動を体験することでわかってきた。教われば教わるほど興味がわき、疲労のなかにも何とも言えない心地良さが気持ちよく、どんどんはまってきた。

デスクワークではなく、現場で体を動かして、お天道さまとともに、自然に逆らわずに生活・仕事がしたかった

本当に林業でやっていけるのかを再度見極めるため、自治体の林業就業講習にも参加した。ボランティア感覚ではなく、仕事としての感触とともに、人生設計を考えなおした結果、自分にゴーサインを出した。都内での仕事をやめ、Iターンや女性の受入実績があった神流川森林組合に、林野庁「緑の雇用担い手対策事業」で研修生として入り、現在に至る。

神流町の生活は、のんびりでゆっくりで、どこかニジェールの生活に通じるものがある。大きく違うのは、お年寄りが多く子どもが極端に少ないこと。知らない地で林業という世界に飛び込めたのは、途上国で生活した経験があったからかもしれない。自然の恩恵を受けていることを実感でき、足るを知る生活。地元の人とのかかわり方。そんなに大きく驚くこともなく、わりとすんなり入っていけた。

町の人の多くは本当に親切だ。組合の人、ご近所のひと、あちこちから、季節のとれたて野菜をたくさんいただく。狩猟の時期になると、鹿肉、猪肉のおすそわけも。本当にありがたい。

そして、勝手に婿探し。これも大変ありがたい話だが、残念ながら、今のところヒットなし。もう、あれこれいっている場合ではない!という声もあるが、おすそ分けのようにただ、ありがとうございます!助かります!といただくわけにはいかず、自分の心に正直に・・・。

町には小さな商店があるだけ。最寄のスーパーまでは車で山道を下ること30分。週に1度買出しに山を下る。また、2ヶ月に1度は「上京」し、都内の行きつけの店で友人に会い、大好きなタンタン麺を食べ、美容院に行き、たまには某所で馬たちの分析をして楽しんだりもする。

神流町は、ひと山越えれば30分で埼玉県の秩父。都会に近からず遠からずの程よい距離が気に入っている。都会に疲れた友人たちが週末は自然を求めて来るのと逆で、私にとってはたまに都会に出て、町にない生活をほどよく楽しみ、かつての同僚や友人と会い、情報交換もよい刺激。そしてまた山に戻るという逆リフレッシュ。

ここでの生活と仕事を楽しんでいるが、地元の悩みはつきない。「山持ちはお金持ち」というのは、ひと昔前の話。山を持っていても木が売れないのが現状。安い外材に押されて国産材の価格も全盛期の3分の1から半分くらいの価格。そんな山に手をかけてもお金にならない、と放置された山もたくさん。今はかろうじて組合に任せているが、一緒に住んでいる子や孫はまったく山に興味がないという山主さんも多い。この先、どうなるのだろうと思う。

組合で働く同僚でも、地元出身の若者はほとんどいない。儲からないから親は勧めないと。私たちのように、山に興味を持った「よそ者」が担い手になっている状況。そんな夢と希望?をもって好んで林業をはじめた若者も、3年5年と続けて戦力になったところで、家族を養うにはしんどいと辞めてしまい、待遇のいいところへ移ってしまうことも多い。
せめてこうした理由で辞める人がいなくなるよう、林業に携わる人たちが、希望を持って続けられるような待遇改善が必要だと感じる。これは、林業界全体の課題だと思う。

これら担い手問題に対して組合は、「緑の雇用制度」を積極的に利用し、Iターンの受け入れに積極的だ。わたしと同じような志を持ってか、群馬県内には協力隊経験者5人が森林組合などで林業に携わっている。今年来た新人の同僚もタンザニアOVだ。
現在もグリーンキーパーの7割近くがIターン者。神流町としては、今年から「緑のふるさと協力隊」の受け入れも行っている。さらには地域住民も立ち上がり、行政と連携して地域活性化を促進するため、「かんなマウンテンラン&ウォーク」を開催した。

全国から400名ものエントリーで盛況であった。大会後、神流町に興味をもった参加者などからの問い合わせが多く寄せられるようになった。

高齢化が進み、行き詰っている町や村に協力隊経験をした若者がもっと入ってほしいと、体験者のひとりとして強く願っている。地元側も若い人が少ないからこそ、なにかをしたいと思ったとき、新しい感覚やアイデアをもって来た「よそ者」によって町や村が活気づくきっかけとなるだろう。

都市に住む人たちにとって、これだ!と思える仕事のチャンスは、意外と地方のほうがたくさんあるのかもしれない。自然を間近にして、心にゆとりをもって生活できるのが何よりだと改めて思う。厳しいけれど楽しい一次産業。若い仲間が増えますように。

関連リンク

林業ネット
http://www.ringyou.net/

かんなマウンテンラン&ウォーク
http://www.kanna-mountain-run.com/

 

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