【山梨県】「協力隊 指と言葉と母心」 古屋由美子さん(平成10年度3次隊/インドネシア/鍼灸・マッサージ)[2009年9月10日掲載]

訓練所訓練所には、協力隊に参加しなければ出会うこともなかったであろう職業や技術の持ち主が、日本中から集まり苦楽を共にする。それぞれが協力隊に参加した理由もさまざまだ。

「からだと心の痛みをほぐしてあげると人間は笑顔になります。ストレスなく健康で笑顔のひとが増えれば、世の中の争い事もなくなり、みんな平和になる・・・」

鍼灸・マッサージ隊員であった古屋由美子さん(平成10年3次隊/インドネシア/鍼灸・マッサージ)が協力隊になったときの信条だ。聞いているだけでもなぜか心身が和らいでいく。治療と癒しのプロがいう言葉には不思議なチカラが働いているようでならない。

協力隊時代の経験が会話のきっかけに

帰国後、古屋さんは山梨に戻り、鍼灸師として働いている。歩行が困難な高齢者や障がい者の自宅を駆け回って訪問治療を行う日々。確かな技術と人柄の良さが好評で、ちょっとした地元の売れっ子鍼灸師である。患者さんとの会話には、協力隊のときに経験したことを話すことが多いと言う。

「インドネシアでは毎日手洗いで洗濯していましたよ。お婆さまの時代は着物だったでしょ? 洗濯さぞかし大変だったでしょうね?」

尋ねられたお婆さんは昔を懐かしみながら洗濯の話を語るそうだ。昔の日本の母たちが家事の労苦を経験したことを、古屋さんはインドネシアで体験している。それを知ったお婆さんとはすぐに意気投合する。開かれたお婆さんの心は、からだの治療に一層の効果が出るという。協力隊経験談ひとつでも治療現場で活かされている具体例がここにある。ベッドでテレビを見る時間が多い患者さんは、外国を知っている人=古屋さんに、国際情勢や援助のニュースについて質問することもある。

「日本も戦後は外国の援助を受けて復興していったんですよね」

途上国で暮した古屋さんが答えると、戦争世代の患者さんは、「そうじゃったな。そしたらなんとかっていう国は、今もまだ昔の日本みたいな もんということじゃな」と、親近感が沸いて理解するそうだ。

患者と協力隊経験がある鍼灸師、高齢者と協力隊経験がある若者。甲府での小さな世代間交流のなかにも、「協力隊経験がある」という形容詞が付くと、ニュースを話題にした会話にしても国際理解に一役かっている。

話すことが好きな古屋さん。任地に居たときは、多くの協力隊と同じく言葉の壁ぶつかり、苦悩の日々が続いた。

配属先は視覚障がい者施設。住まいも施設内にある。目の不自由な生徒さんとのコミュニケーションには身振り手振りでは通用しない。暇を見つけては現地人職員の家や生徒さんの寮に行き、つたないインドネシア語を駆使しながらも、とにかく話すことを徹底し、生きた授業での勉強を繰り返した。

「言葉で困っていたわたしに、任地のみんなは辛抱強く優しく接してくれたから、お互い解りあえたと思う。彼らの御恩に対してお返しできずに帰国しちゃったから・・・」

古屋さんは鍼灸師としての仕事に勤しむ一方、甲府に在住するインドネシア人のために通訳ボランティアも行う。現地でお世話になった同じインドネシア人への恩返しができると、公共機関での通訳募集を知り、採用された。インドネシア語が¥¥できる甲府市民は希少なだけに重宝されている存在だ。

通訳に立ち会う在住インドネシア人の話は深刻な問題も多く、通訳が終わると緊張と重圧でかなりの疲労感に襲われるという。日本語にはないニュアンスの言葉が多いインドネシア語。語学力のみならず、現地の文化や生活習慣を体感して知る協力隊としての利点を通訳のなかに活かせるという強みでカバーしている。

祖国を知る身近な日本人として頼りにされる古屋さんに甘えるインドネシア人には、容赦なく説教することもしばしば。厳しさは日本人の母役を買って出ている古屋さんの愛情でもある。 

「指圧の心は母心・・・」


国際体験キャンプにて(右から2番目)

指圧の創始者が世の中に「指圧ブーム」を巻き起こし、他界されてから年月が過ぎた。指圧は"SHIATSU"として海外に知られ、途上国へは協力隊によって普及したところもある。

古屋さんは指を通して、言葉を通して、協力隊の経験を通して、地域の人々の笑顔を増やしている。社会還元、社会貢献とは、こうしてひとりの協力隊経験者が日々の生活の中で関わる人たちに自然と滲み出ているものなのかもしれない。

母を思いやる気持ち、困っている人のために母となって包容する気持ち。誰しも持つ母心が根源にあるような気がする。

 

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