博物館で「ディープ・アクティブ・ラーニング」 ~神奈川県立生命の星・地球博物館 主任学芸員 田口公則さん(平成5年度2次隊・ヨルダン・地質学)

当協会広報紙Springboard 2016年12月号からの転載

簡単に情報が手に入る時代だからこそ、深く考える力を


博物館内の展示「アンモナイトの壁」

 

私が勤めている「神奈川県立生命の星・地球博物館」は、地球誕生から現在までの46億年にわたる地球の歴史と生命の多様性を、実物大の資料や映像などで実感できる博物館です。1987年にNHKで放送された「地球大紀行」が展示のベースの一つであり、地球に落ちてきた隕石、アンモナイトの壁、巨大な恐竜の実物標本など、世界中から大きな標本が集められ、まさに地球規模の展示を楽しむことができます。

この博物館の学芸員になって20年。専門は古生物と地質で、県内の化石産地を中心に地質調査と化石採集をすすめています。ある遊水地整備工事の現場では、とある貝化石の発見からその地層の年代を12.5万年前と推定することができました。とある貝化石とは、「タイワンシラトリ」という二枚貝で、現在は台湾以南に生息しフィリピンなどでしか見られません。12.5万年前は、地球全体が暖かかった温暖期のピークのひとつとして知られています。タイワンシラトリが12.5万年前の温暖期にあわせて北上してきたと推測したわけです。


展示見学ポートフォリオづくり
 

市民向けの講座でこの話を紹介したところ、参加者から「実際に採りたい」という声が挙がり、新たに観察会が企画されみんなで採集に行くことができました。研究対象として自分だけで採集するのではなく、「これはただの貝殻のように見えるけれど、世界的にすごいものですよ」と、市民のみなさんと対話をしながら地域を巻き込んでいくことが私はうれしいのです。

最近は博物館教育にも力を入れています。博物館教育は海外では盛んですが、日本ではまだまだ。「博物館、面白かったね」でもいいのですが、これだけ豊富な資料がそろっているのですから、展示を見ながら「本質を見極める」「深く考える」トレーニングをし、自分なりのストーリーで展示を深く楽しめるような人を育てたいと考えています。今日も小学校の高学年を対象に、自分自身の展示見学のポートフォリオを作る活動を進めました。タイトルを自由につけるなかで、4年生の男の子が「地球+隕石=生命」とタイトルを書いているのをみて、「本質をついているなあ」と感心しました。


観察会(12.5万年前の地層)

12月中旬より、県内の石材とその産地の地質学的な背景を紹介する展示が始まります。岩石から石材を採り地域で使う。岩石が人々の暮らしとつながっている地産地消の形です。協力隊ではヨルダンのペトラ遺跡で活動しました。ペトラは崖をくりぬき地質そのものを使った文化遺産で、自然と文化が合体していることを強く感じたものです。そのセンスが今度の石材展示に通じるものがあるような気がします。最近、地質学会の中に「文化地質学」というセッションが新しくでき、文化と地質の領域を超えて考えていく、という自分と似たような考えの仲間が集まりました。

一つのこと突き詰める研究者の世界では珍しいタイプかもしれませんが、領域を広げコラボする面白さを感じるのも、多様な職種の仲間と時を共にした協力隊の影響があるのかもしれません。

 

参考リンク

神奈川県立生命の星・地球博物館

http://nh.kanagawa-museum.jp/

 

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