価値観を変える「複眼の視点」~ウェブメディアganas編集長、長光大慈さん(平成17年度3次隊・ベネズエラ・環境教育)[2016年8月25日掲載]

大学卒業後、フィリピンやタイなどアジアの国々でメディアの立ち上げに参画し、電力業界紙記者を経て青年海外協力隊に参加した長光さんは、2012年8月、国際協力や途上国に関するウェブメディア「ganas」を立ち上げた。それから4年。国際協力や開発問題を取り上げるメディアとして、ganasは独自の存在感を持つ媒体に成長した。

ganas画面ページ
2012年にスタートしたganas

スペイン語で「やる気」を意味するganas。発行の意図は、途上国や国際協力・開発について発信することで海外になじみが薄い人にも途上国に関心を持ってもらうこと。そして、開発問題を体系的・複眼的に考える機会を提供し、「まずしい」「かわいそう」といった途上国の極端なイメージの払拭、を掲げる。途上国の話題を中心に、経済、環境、紛争、人権問題など、月に平均20本ほどの記事を掲載している。

“途上国”にフォーカスを当てる背景には、「途上国には貧しさや不条理がある一方で、魅力的な音楽や料理があり、日本では出会うことができない人々がいる。途上国の人々と本音で触れ合うと、ステレオタイプな考え方が薄まっていく」という長光さんの考えがある。例を挙げれば、途上国では定刻になっても電車が発車しないし、約束の時間に現れない人も多い。時間を守ることが常識である日本とは大きく異なる。けれども途上国の視点に立って日本を見ると、社会の過剰な厳しさが弊害となり、自殺や鬱を生み出しているようにも映る。「逆に、途上国のおおらかさにはプラスの面もある」と長光さんは言う。これが、創刊時からganasがテーマに掲げてきた「複眼の視点」だ。

長光さんは大学卒業後、香港を拠点に日本語情報紙を発行する企業に勤務。タイで情報紙を立ち上げ、フィリピンではメディアの立ち上げだけでなく、編集長も務めた。民主化運動のさなかにあったインドネシアにも駐在した。その後アジアを1年間放浪し、日本に帰国後、電力業界紙の記者に。そして環境問題やCSR(企業の社会的責任)を専門とするフリーランスのジャーナリストとなるが、南米への憧れから青年海外協力隊員に応募。ベネズエラで活動した。

派遣されたベネズエラでは、人々が当たり前のようにゴミをポイ捨てしていた。環境教育隊員として、環境美化への啓発のため、地域の高校生たちを「ボランティア記者」に仕立てたフリーペーパーを立ち上げた。発行の目的は、環境啓発を訴える紙面を長光さん自身が制作するのではなく、書くという行為を通じて村の人々に環境美化について考えてもらうこと。「おもしろい」「かっこいい」を追求し、日本の話題も盛り込んだ。次第に読者が増え、ボランティア記者の高校生たちがフリーペーパーを地域のコンテストに出品したところ、入賞し、地域でも話題の存在になった。

ganasの運営モデルは、ベネズエラで発行していたこのフリーペーパーの運営モデルが元になっている。国際協力や途上国に関心がある、あるいは、ジャーナリストを目指す学生や社会人を「ボランティア記者」として募り、プロボノ(専門的スキルによる社会貢献)として、ジャーナリスト経験がある複数名のデスクが原稿をチェックし、必要に応じて修正する。記者育成を目的とした講座を定期的に開くほか、カンボジア、フィリピン、ミャンマーでの記者インターンシップも企画している。思うようにならないことも多々あるが、「あるボランティア記者の大手新聞社への就職が決まった時には、成果を感じた」と言う。

途上国の話題を中心に紹介するメディアではあるが、ganasの立ち位置は決して途上国寄りではない。「一般的に『途上国=貧しい、悲惨』のイメージを持たれがちだが、若い人は『途上国の人々は心が豊かだ』と言う。僕はどちらとも思わない。物事にはさまざまな面がある。どちらがいいか、悪いかを決めるのではなく、媒体として、多角的な視点を紹介していきたい」と長光さんは言う。紛争や人道問題など厳しい現実を伝えるニュースももちろん掲載するが、ganasには途上国に関するさまざまなニュースとして、国際協力や開発事業を立ち上げた日本人や、各国のローカルな食やサブカルチャーの話題なども紹介されている。そこから透けて見える世界の広さと逞しく生きる人々の姿には、読む人を元気づけるエネルギーに満ちている。

関連リンク

▼ganasウェブサイト
http://www.ganas.or.jp/ 

 

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