帰国隊員のネットワークを復興につなぐ~福島OB会が「ふくしま応援ツアー」を開催(2016年3月)

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ツアーを企画した小熊OG

「家に帰ったら、ぜひ家族の方にこのツアーで見たことを話してください。それが、福島への理解と風評被害の軽減につながることを願っています」

福島県の協力隊OB団体であるふくしま青年海外協力隊の会は、2016年3月12日~13日に「ふくしま応援ツアー」を開催した(協力=二本松青年海外協力隊訓練所、青年海外協力協会)。全国から集まった協力隊経験者やその家族、これから協力隊に参加する候補生など約70名の参加者に、ツアーを企画した小熊則子さん(平成2年度3次隊・サモア・音楽)は呼びかけた。

東日本大震災による津波と東京電力福島第一原子力発電所事故による二重の災禍に見舞われた福島県の沿岸部。一方、原発事故の影響を受けていない内陸部は、原発事故の被害をほとんど受けなかったものの、今も農業や観光業が風評被害を受けている。

派遣前訓練を受けた二本松青年海外協力隊訓練所がある福島県をふるさとのように思う協力隊経験者は多い。そこで、福島に思いを寄せる隊員経験者の力を借り復興を後押ししようと、ふくしま青年海外協力隊の会は、協力隊経験者などを対象にした企画を2012年3月より開催してきた。

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福島県農業総合センターで説明を聞く

一日目、郡山市に集合した参加者は、福島県農業総合センター(郡山市)を見学。同センターは震災発生後から、コメや野菜・果物、肉類、水産物など、農水産物の放射性セシウム検査を実施している。

見学者を案内した佐藤一雄安全農業推進部長は、「肉・卵については震災直後から基準値を超えたものはなく、野菜・果物については2014年以降基準値超えがない」と説明。実際に検査が行なわれている施設を公開し、正確な検査の下、安全な農水産品が出荷されていることを強調した。

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二本松青年海外協力隊訓練所に到着

 

次に訪れた二本松青年海外協力隊訓練所(JICA二本松)では、洲崎毅浩所長(昭和62年度1次隊・ザンビア・公衆衛生)から、「協力隊訓練所のあり方を考え、帰国隊員のために活用したいと考えていた中、このツアーを受け入れる機会を得てうれしく思う」と歓迎の挨拶を受けた。

福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの高木亨特任准教授※による、地域活性化と災害からの復興についての基調講演を聞き、協力隊事業発足50周年に合わせて製作された映画『クロスロード』を鑑賞。その後は、教育、農業、被災者支援、被災生活など6つの分科会に分かれ、福島県在住の隊員経験者から被災経験は震災後の活動などの話を聞いた。県立高校の教員を務める大山博文さん、特別支援学校教員の齋藤智恵子さんは、それぞれ教育現場での被災時から避難中の経験を共有。福島県職員の齋藤誠一さんは、放射性セシウムの吸収を抑制する作物栽培への取り組みを紹介した。被災者支援の分野では、県外から移住してきた清山真琴さんが南相馬市での医療分野での被災者支援について、二本松市在住の渡邉恭子さんは子どもを中心とした被災者支援について話した。震災前、東京電力福島第一原発がある大熊町に住んでいた川崎豊さんからは、避難時の経験が紹介された。この日の夜、訓練所内で開催された懇親会には派遣前訓練を終えたばかりの平成27年度4次隊員も加わり、先輩隊員であるツアー参加者と交流した。

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特別支援学校教員の齋藤智恵子OGは、震災後の教育現場での災害対応への取り組みを紹介

活動紹介
福島県の農業分野での取り組みを紹介した齋藤誠一OB

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被災者支援経験を話す渡邊恭子OG

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二日目、二本松訓練所の出発前に記念の一枚

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「郷人」によるよさこい演舞(下郷町)

 

翌日は会津地方を訪問し、下郷町では全国大会で上位に入賞する「郷人」が、ツアー参加者だけに公開したよさこいの演舞を鑑賞する機会に恵まれ、大内宿で江戸時代の宿場町の景観を楽しんだ。

今回のツアーには、北海道から東北、関東のほか、関西や九州など全国から参加者が集まった。懐かしい訓練所を訪れたいと同期会を兼ねてグループで参加した人や、協力隊OB同志として応援したい気持ちから参加した人、以前、復興支援ボランティアに参加し、現地の復興の様子を見たいと参加した人など、動機はさまざま。なかには4回目という参加者もいたが、みな、帰国隊員同士の親睦や福島のOBの活動への理解を深めることができたと満足げな様子だった。協力隊先輩隊員に会い、話を聞きたいと参加した平成28年度に派遣予定の隊員候補生の参加者もおり、「実際に先輩隊員から話を聞くことで、インターネットよりも有益な情報を得られ、勉強になった」と話していた。

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宿場町の風情が残る、大内宿

過去のツアーがきっかけとなり、沖縄県のOB会は福島の物産を購入して県内のイベント等で販売、その収益で再び福島の物産を購入し、次の販売につなげる循環型支援「ゆいまーる」を実施している。この取り組みは青森県OB会にも波及し、現在も継続されている。一方、京都のOB会は福島の産品を使って2016年の新年会を開催するなど、このツアーがきっかけとなり、青年海外協力隊OB会を通じた福島への支援につながっている。

小熊さんは、「協力隊経験者にはさまざまな職種の『プロ』がいて、今回のツアーもそのおかげで企画を組むことができた。これは協力隊の強み」と話す。ツアーは毎回、OB会メンバーが総出でサポートに当たる。小熊さん自身は震災発生当時に福島OB会長を務めおり、東北6県のOB会と連携し、全国の協力隊経験者に呼びかけて義援金を募り、被災した隊員経験者に届けた。

震災から5年。被災地から離れると、震災後に不安な気持ちを抱いていた日々を遠い過去のように感じるが、福島では今も新聞やテレビのニュースは震災や復興に関連する内容がよく取り上げられている。今回のツアーで訪れた会津地方は、東京電力福島第一原発の被害をあまり受けておらず、放射線量も東京のレベルとさして変わらないが、放射線が高いと認識する人が多く、基盤産業である観光業は震災後に大きく落ち込んだ。最近では一般の観光客が戻りつつあるものの、修学旅行の受入数はまだ震災前の数に達していないという。会津を訪れるだけでも、観光を通じ、復興を支援することができる。

これまでに開催された5回ツアーへの参加者は延べ400人に上る。協力隊仲間を地元に呼び込む福島OB会のメンバーと、福島を思う全国の隊員仲間の連帯。参加者を通じ、ツアーにおいて紹介された復興活動と風評被害払拭への取り組みが全国に広く共有され、福島へのいっそうの理解と、災害に強い社会づくりにつながることを願う。

 

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