【熊本県甲佐町宮内地区】農業を通じた地域活性~地域おこし協力隊員として活動する、フィリピン、バングラデシュOB[2012年11月1日掲載]

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耕作放棄されていた田んぼで収穫された稲

実りの秋。熊本県中央部に位置する甲佐町宮内地区では、この秋、耕作放棄されていた田んぼで久しぶりにコメが収穫された。また、荒れ地から再生された畑にもさまざまな野菜が実り、豊かな秋を彩った。

これらの成果は2012年4月に着任した3人の地域おこし協力隊の活動によるもの。うち2人が帰国隊員だ。隊員らは「ボシドラ農園」という生産者を名乗り、この地区で採れた農作物を販売し、活動や甲佐町での生活をフェイスブックやウェブサイトを通じて発信している。

地域おこし協力隊員として活動する、二人の帰国隊員

熊本県上益城郡甲佐町宮内地区は、熊本市中心部まで約20キロ、車で約50分という立地にありながらも、近年、人口減少と高齢化が進んでいる。

宮内地区の人口は、平成元年と比較すると約半数に減少。住民の約4割が65歳以上の高齢者となっており、町全体の推移と比較してもその傾向が顕著だ。そこで、地区の衰退を食い止めようと2012年度から3名の地域おこし協力隊員が起用され、「農林産業への従事と支援」「地域の情報発信」「地域おこし支援」の3つを活動の柱に据えて取り組んでいる。

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緑豊かな風景が広がる宮内地区

活動地の宮内地区には、古くから雨乞いの踊り「ボシドラ舞」が伝えられていたが、継承する人が途絶え、長い間踊られる機会がなくなっていた。伝統芸能をよみがえらせようと、地域の宮内小学校の児童に継承されるようになったが、3年前に小学校が統合のため廃校となり、再び継承が難しくなっている。地域おこし協力隊員らは宮内地区での活動において、この地域にしかない「ボシドラ舞」はとても大切なものであると考え、地元の人たちの了解を得て農園名に「ボシドラ」の名を付けたという。
宮内地区の魅力を伝えていく

地域おこし協力隊員の一人、越智新(おち・あらた)さん(平成6年度1次隊/フィリピン/森林経営)は地域の現状について、「以前は林業が盛んだったが、国内の林業の衰退により廃業する人が増え、それが現在の地域の問題につ ながっている。また、山間部ではその立地条件から、生活していくだけの収益を得られるような農業を営むことが難しい。結果として人々は仕事を求めてよその 町に移ってしまう」と説明する。

今年4月に着任する前は、都内の広告代理店でマーケティング業務を担当していたという越智さん。「以前 から地方での暮らしに興味があった」と話す。いろいろな可能性を模索している中で、甲佐町の地域おこし協力隊の募集が目に留まる。応募要請に書かれていた 商品開発や地域のブランド化などに自身の経験を生かせるのではないかと考え、応募したという。 

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農作業をする越智さん

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川上さん

半年間の活動を振り返り、「地元の人たちが当たり前のように続けてきたこと、たとえば、山菜取りや手作業でのコメ作り、鹿や猪の害獣駆除など全てが『生きる』ことに直結している。地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちがたくさんの生活の知恵を持っているなど、尊いものが残っている地域だと思う」と地域の魅力を挙げる。
その言葉から、活動を通じて、さまざまなものを発見した様子がうかがえる。

「今後、様々な世代の人たちにこの場所に来てもらう企画を展開していく。実際に来てもらうことで、この地域の魅力に気づく人がたくさんいるだろう。そういった活動を積み重ねていくことで、『ここに住みたい』『ここで子どもを育てたい』という若い人たちが、徐々にでも増えていけばと思う。それを実現するためにも、空家の活用による住まい提供のしくみ作りや、野菜の流通や加工品事業などによる仕事作りが必要であると考えている」と、抱負を語る。

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地元のおばあちゃんと話をする越智さん(左)と川上さん

人が集う場所をつくりたい

もう一人の帰国隊員、川上昇(かわかみ・のぼる)さん(平成20年度3次隊/バングラデシュ/感染症対策)は、活動を終えて帰国後、出身地の宮崎県がある九州で農業に携わる仕事を探していたが、当時、宮崎では口蹄疫や鳥インフルエンザにより畜産業が大きな被害を受け、宮崎と鹿児島の県境にある新燃岳(しんもえだけ)の噴火が続いており、宮崎での就農は難しかった。
 

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バングラデシュで感染症対策隊員として活動していたころ

こで川上さんは宮崎を離れ、北海道(稚内市)で実家が酪農家のバングラデシュの先輩隊員に紹介された農家で約3か月間酪農実習した。実習を終えたある日、当会が発行するメルマガで甲佐町での募集を知り応募、現在に至る。「わが身一つでどこにでも行けるし、住めば都。いまの生活にも何の不便も感じない。そんなタフさが身についたのは、協力隊経験のおかげだと思う」と話す。当初、10~15アールの面積だったボシドラ農園は、今や約1町(1ヘクタール)にまで広がり、柚子や栗も採れるようになった。

活動を目にした人たちが所有する農地を次々に貸してくれるようになったからだ。「面倒を見られないから」と、1反4畝(約14アール)の畑をいきなり任せてくる人まで現れたという。

農作業の傍ら、10月には事務所を置く宮内社会教育センターでカフェを開くイベントを催し、川上さんが豆を挽き、ネルドリップで入れたコーヒーを来場者に運んだ。今後は、「野生動物に荒らされた古民家(空家)があり、 地域に暮らす元大工や元左官職人などと協力して、そこを再生したいと考えている。そしてカフェを開くなどして、地域住民同士や、町外からも人を呼ぶことができ、人的交流が生まれる場所を作ってみたい」と話す。10月のイベントでの経験が生かされる企画だ。

地域おこし協力隊員が活動を初めてからまだ半年間だが、耕作放棄地の再生が進んでいくことで、地域には少しずつ変化が生まれている。熊本県の助成事業の認定も決まったことで、2年目のボシドラ農園には、新たな展開が期待される。

(写真はすべて越智さん、川上さん提供)

関連リンク

▼ボシドラ農園 ウェブサイト(農産品のオンライン購入が可能)
http://boshidora.com/

▼フェイスブックページ
http://www.facebook.com/boshidora 

 

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