「時」を紡ぐ言葉~壺井繁治賞を受賞した、ザンビアOBの詩人、おぎぜんたさん [2015年6月15日掲載]


受賞の講演をするおぎさん
(5月31日,東京)

2014年、詩集『時を歩く人』を出版した、おぎぜんたさん(本名:荻ノ迫善六,昭和56年度3次隊/ザンビア/野菜,鹿児島県出身)が、第43回壺井繁治賞(主催=詩人会議)を受賞した。

現在ケニアに在住するおぎさんは、貧困や民族対立といったアフリカが抱える課題を日本人の視点で見つめ、言葉を紡ぐ。

青年海外協力隊に参加後、日本国際ボランティアセンター(JVC)のスタッフとして、ソマリアで約4年間、エチオピア難民支援に携わった。再び日本に帰国後、大学で農業を学び博士号を取得。ソマリアで活動する機会を得たいと隣国のケニアで農業分野の研究員の職に就いたが、ソマリアの情勢が悪化し、その願いは叶わなかった。

以後、ケニアを拠点にし、ウガンダやスリランカで国際協力機構(JICA)の技術協力プロジェクトの専門家を務めた。現在はケニアに農場を持ち、酪農とイチゴ栽培を営むほか、JOCAがマラウイで実施する「農民自立強化・生計向上プロジェクト」の専門家を務めている。

詩作を始めたのは2002年、50歳のクリスマスの日。仕事のため滞在していたケニア山のふもとのホテルで思い立ち、書き始めた。2005年には、テレビ番組で見た遺骨を運ぶ象の母子に、自身の亡き母への思いを重ねた作品「象の分骨」で白鳥省吾賞を受賞。続いて2006年には、詩人会議新人賞を受賞した。今回の壺井繁治賞受賞作『時を歩く人』には、時間をテーマとした詩34編が収められ、現実とも寓話ともつかない不思議な世界が描かれている。

「“アフリカの水を飲んだ者は再びアフリカに戻る”という言葉のように、青年海外協力隊に参加したから、ケニアで生きる今の自分がある」と、おぎさんは言う。

2015年5月31日に東京で開催された受賞講演では、ケニアのガリッサ大学がイスラム過激派組織「アル・シャバブ」に襲撃され、150名近くが殺害された今年4月の事件を挙げ、アフリカの部族対立について語った。貧困、差別、民族対立、悪政、腐敗、虐殺――経済成長の陰に落ちる、負の世界。言葉の隙間から、アフリカの厳しい現状が透けてみえる。「植民地時代の後、白人たちが黒人に民主主義を教えなかったことが、独立から現在までのアフリカの混迷につながっている。それを、植民地時代の白人の負の遺産と言うには時が経ちすぎてしまった。しかしそんな世界でも、庶民はたくましく生きている」

受賞の選評では、<長い間、日本を離れてアフリカで暮らしている作者が、自己の所在をたしかめるためには、アフリカの大地と人と日本の故郷の父母の実在を俯瞰する〝時〟という観念が必要だったのではないか。それらの葛藤のエネルギーはいまの日本の詩に不足しているものだ>(詩人会議編集人、秋村宏氏)等、高く評価された。今後の抱負を、アル・シャバブの襲撃で犠牲になった学生のエピソードを挙げながら、「虐殺された人の心や、アフリカに流れる悠久の時の流れを書いてみたい」と語る。今後は、2冊目となる児童小説『少年・空を飛ぶ』(偕成社)と、レイシズム(人種差別)をテーマとした和英対訳の新詩集の出版などが予定されている。

書籍データ


 

時を歩く人(TIME WALKER)

おぎぜんた詩集 2014年9月発行
発行:土曜美術社出版株式会社
定価:2,000円+税

土曜美術社出版 ウェブサイト
http://www1.vc-net.ne.jp/~doyobi/index.html 

詩人会議 ウェブサイト
http://www.ne.jp/asahi/hiroba/shijin-kaigi/

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