マラウイでの経験が経営の力に~桑折信明さん(昭和46年度2次隊/マラウイ/上下水道)[2014年3月1日掲載]

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青年海外協力隊員に参加後、桑折(こおり)信明さんはシンガポールに渡り、土木会社を興した。それから30年余り。会社は一昨年にシンガポール株式市場に上場する規模となった。

多民族社会のシンガポールで、さまざまな国籍の従業員を束ね、経営を軌道に乗せることができたのは「協力隊員時代の経験によるものが大きい」と話す。


 

「男らしい仕事をしたい」と土木の世界へ

体を動かすのが好きだったから、土木の仕事に就こうと決めた。「いったん生を受けたからには男として生きようと思った。それに合った商売として土木を選んだ」。技術者になろうと、大学では土木工学を学んだ。

卒業後、建設会社で経験を積んだ後、協力隊に応募。その動機は「海外に行ってみたかったから」だという。当時は1ドル360円、外貨の持ち出しは500ドルまでに制限され(※)、個人が海外に観光に行ける機会などめったになく、大学を出たばかりの若者には手が届かないものだった。

※1964(昭和39)年4月、海外渡航が自由化された際、日本からの外貨の持ち出し額は年1回500米ドルまでと制限されていた。その後、1966(昭和41)年に1回500米ドルまでとなり、1971年6月には1回3,000米ドルに引き上げられた(昭和43年・46年『運輸白書』より)。

協力隊では、マラウイで学校に水道を敷設するため、作業に加わる生徒とともに水道工事に携わった。

帰国後は日本の建設会社で海外事業を担当し、アメリカ領グアムに5年間赴任。その後、東京に建設会社を興した。そのころ、シンガポールでの日系企業の仕事を紹介され、以前から景気がいいと聞き興味をもっていたことも相まって、現地に行ってみた。「いい国だな」と気に入り、1982年に土木会社を設立。1992年にはマレーシアにも会社を設立し、2012年に持ち株会社「コオリ・ホールディングス」を設立、シンガポールの株式市場に上場した。シンガポール、マレーシア、ドバイなどさまざまな国々で掘削した面の土砂崩壊を防ぐ「土留」やトンネル掘削時に岩盤の崩壊を防ぐ「支保工」を中心に、土木施工やトンネル掘削などの事業を請け負ってきた。

従業員の国籍は、シンガポール、マレーシア、タイ、バングラデシュ、フィリピン、ベトナムなどさまざま。現場作業員も含めると従業員数は500人近いが、日本人は桑折さんだけだ。さまざまな国籍・文化を持つ従業員を束ねるコツは「自分に厳しく、人に優しくしていれば、人はついてくる。それから、給料をたくさんあげること」と笑うが、人付き合いのノウハウをつかんだきっかけは、マラウイでの協力隊経験だという。

「アフリカに行って、日本人とは何かを考えた。日本人だからといって偉いわけではないし、人としての価値は、肌の色に関係なくみな同じだと学んだ。その経験が東南アジアで人々と良好な関係を築く上で役に立った。協力隊に行かなかったら、今の自分はないと思う」

今でこそ、東南アジアで起業する日本人は少なくないが、桑折さんが会社を立ち上げた約30年前、同じように起業した日本人の話を聞いたことはなかったという。今日までに、多くの困難があったことは想像に難くない。会社がつぶれると思うほどのトラブルも何度も経験したという。「立ち直れたのは、周囲の人々の支えがあったから。私一人ではとてもできなかった」。30年間、まじめにこつこつと会社を経営してきた姿勢が周囲からも評価を受け、人々の信頼を得るに至った。

若い頃の苦労は自分のため

若者の「内向き化」が問題視される昨今。「日本には何でもあり、海外のほうが厳しいが、自分を鍛えるためにも、若者はたくさんの苦労を経験できる海外に出たほうがいいんじゃないか。そこでなんとかなれば、もっと新たな困難にも立ち向かえる」と、若者にアドバイスを送る。桑折さん自身、協力隊員参加前は語学に自信がなかったものの、参加後は海外で生活することに自身がついたという。

「人生なんて苦労の連続で、最後にちょっと楽できればいいんですよ。でないと楽しくない。たった一回しかない人生だから、自分のやりたいことをやって、失敗するも成功するも自分の責任。もし当時、苦労を厭う気持ちがあったら、今は何にもなっていなかったと思う」

マラウイに派遣されたとき、「『行ってみればなんとかなる』というより、『なんとかする』」という心構えで活動した」と話す桑折さん。グローバル人材が話題になることが増えた昨今、海外で活動するには語学が重要だと捉える向きがあるが、大切なのはむしろ、挑戦しようという気概ではないか。協力隊創設期に家族と水杯を交わしてアフリカに渡った先輩の半生を聞き、そう感じた。

 

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