【岩手県】100年後につながる農業を~桶田陽子さん(平成16年度1次隊/インドネシア/野菜)[2014年1月15日掲載]

東日本大震災の岩手県沿岸部被災地への県沿岸部の救援後方拠点となっていた遠野市に、当協会が事務所を開設してから2年余。被災地への復旧・復興支援活動をきっかけに、遠野市で農業の再生を通じて地域活性化、国際交流を目指す「ふるさと新生モデル事業」を立ち上げ、活動する中で、岩手県内の協力隊経験者との親交も深まっている。

その一人、遠野市在住の岩手県青年海外協力協会会長の桶田陽子さん(H16-1/インドネシア/野菜)は、協力隊から帰国後、インドネシア・ジャワ島地震復興の短期協力隊員を経て、現在は農事組合法人宮守川上流生産組合の農産物加工部長として、地域の野菜などを加工した商品の生産を担当する。「地域にあるものに誇りをもってほしい」という思いから、旬の素材を使ったジュースやジャムなどの加工販売に携わり、農業の経営基盤強化に取り組む。


会長を務める岩手県青年海外協力協会は不便な場所にある仮設住宅を訪ね、野菜の訪問販売を行う。
協力隊OBと販売の準備をする桶田さん(右)

地域に応援される商品を目指す

山々を背に広大な畑や田んぼが広がる遠野市。農業が盛んで、稲作を中心にホップやたばこなどの工芸作物が作られてきたが、近年は農業従事者の高齢化が進んでいる。

市西部に位置する宮守地区には小規模農家が多く、農地が狭く大型機械が導入できないなど、農業の振興が難しい状況にあった。ただでさえ日本の農業は、人件費を計上できないほどの赤字経営で、後継者を得られず、高齢化しており、衰退するばかりだった。いったん開墾された土地は、耕作されなくなっても森には戻らない。農地を保全していくためには、新たな取り組みが必要となっていた。

そこで、宮守川上流生産組合は国の基盤整備事業により1994(平成6)年に農地を大区画化し、農業効率化のための集落営農を開始し、有給で農業の担い手を雇用。コメ中心の農業から大豆への転作を始め、併せて、高価な農業機械を共有化して農家の負担を減らし、農地を守り持続できる農業を目指した。2年後に任意組合「宮守川上流生産組合」が発足、2004(平成16)年には農事組合法人に移行した。

桶田さんは岩手県盛岡市出身。北海道にある大学を卒業後、道職員として農業改良普及員を8年勤めた後、青年海外協力隊に参加。インドネシア・ボルネオ島で有機農業普及にあたった。帰国後は、「農村が10年後も100年後も残る農業経営に携わりたい」という思いから、新規就農の道を探す中、母方の故郷である遠野市で宮守川上流生産組合の求人を見つけ、就職した。当初は稲の育苗に使うビニールハウスを活用したトマト栽培を担当していたが、2010(平成22)年に組合が農産物加工事業に着手するにあたりその担当となり、以降加工部門の運営にあたっている。

組合は、トマトやニンジン、ブルーベリー、山ブドウのジュースやジャムのほか、地元産の大豆を使ったとうふ、地元米で作った酒「どぶろく」などを生産。桶田さんは加工のほか、商品の企画からラベルのデザイン原案、販売までを一貫して担う。規格外の野菜などは加工することで商品として販売でき、トマトやブルーベリー栽培は、家にこもりがちになっていた高齢の農家の人々に雇用を生み出した。組合ができたことで地域が活性化しただけでなく、次世代につがる営農システムが築かれた。

「大々的に宣伝などはせず、まずは地域の人に知ってもらい、地域に愛され応援される商品づくりがしたい。それが地域を盛り上げることにつながれば」と、組合は通販サイトどころかホームページも持たないが、商品は市内はもちろん、県外にも知られるようになってきた。

OB会活動とも両立

北海道での農業普及員、インドネシアでの野菜隊員時代と、いつも農業の振興を願い、活動してきた桶田さん。インドネシア時代は、圃場で芽生えた野菜の芽が一晩でヤギに食べられるなどトラブルにも見舞われたが、前向きに活動に取り組んできた。そのヒントは「失敗にとらわれず、何を実現させたいかをいつも考えること」と話す。一方で、協力隊OB会長として、JICAボランティア応募促進や広報活動、派遣隊員の壮行会など多忙な日々が続くが、楽しみながら活動しているという。

桶田さんを通じて、組合とJOCA事業との連携も生まれた。2013年4月には、「JOCA-アフリカ連合委員会 国際ボランティア連携事業」に参加するアフリカ青年ボランティアらが組合を訪れ、事業や取り組み、遠野市の農業事情などを学んだ。聴講者の中には、アフリカで農業や食品加工に携わるボランティアもいた。ケニアからのボランティアは「とても多くのことを学べた。共働で農地を耕すことで農業を持続させられるだけでなく、地域の文化を守っていけることが印象に残った」と感想を話していた。
 


アフリカ青年ボランティアに、事業や遠野の農業を説明

「地域に誇りを持ってほしい」。そんな思いを抱き、農業が地域経済の基盤になるよう取り組んできた。遠野に移住して7年。北海道、インドネシアでの活動成果が宮守川の地で大きく根を広げている。

 

「帰国隊員の活動紹介」一覧に戻る

自治体・地域の方

  • 熊本地震 被災地への支援
  • おきなわ世界塾
  • マラウイ農民自立支援プロジェクト
  • 外務省主催 NGO インターン・プログラム制度
  • 協力隊ナビ~協力隊経験者と語ろう~
  • 青年海外協力隊講座
  • 協力隊OB・OG会情報
  • 青年海外協力隊事業創設50周年記念 映画製作『クロスロード』
  • 協力隊ボイス フェイスブック

ページの先頭に戻る