【福島県】観光イベントを福島復興につなげたい~福島県喜多方市山都地区グリーン・ツーリズム推進協議会事務局 堀口一彦さん[平成17年度2次隊/ベネズエラ/養殖)[2012年12月17日掲載]


歴史を訪ねるツアーで講師を務める堀口さん(左)

福島の方言に「こでらんに(こたえられないほどおいしい、すばらしい)」という言葉がある。福島県北部の喜多方市に移住してから5年目になる堀口一彦さんは「出身の東京の言葉と大きく異なる会津弁は難しくて面白い」と言う。

「知らない方言を聞くと、その言葉を覚えるために地元の人に意味を尋ね、ノートに書き留める。ベネズエラ時代とやっていることは同じですよ」

土地の言葉を覚えながら、喜多方市の山都(やまと)地区グリーン・ツーリズム推進協議会事務局の職員として、地域の自然や文化を紹介する観光イベントを企画、開催している。

会社を辞め、福島に移住

日本百名山に数えられ、古くから山岳信仰の場として知られる飯豊山(いいでさん)。ふもとに広がる喜多方市は、近隣の町村と合併した2006年に「グリーン・ツーリズムのまち」を宣言し、農村地帯を訪れた人たちがその土地の自然や文化を楽しむ、「農家民宿」を中心としたグリーン・ツーリズムを推進している。この事業を実施する団体の一つが、堀口さんが所属する山都地区グリーン・ツーリズム推進協議会だ。


そば畑から飯豊山を望む

堀口さんは若いころから青年海外協力隊に参加したいと考えていたが、社会経験を積んでからと応募を先送りする中、37歳の時、最後のチャンスだとようやく応募した。同時に勤めていた会社を辞め、学生時代から登山等で訪れていた喜多方に築140年の古民家を購入して両親と共に移住。その後、協力隊員としてベネズエラに派遣され、養殖の仕事に携わった。


ベネズエラ隊員時代の堀口さん

安定した会社員生活を捨てての地方への移住は決断が必要だったが、その時期にさまざまなことが重なり、決断に至ったという。そして、協力隊から帰国後、いくつかの仕事をつなぎ、福島県の臨時職員を経て2012年4月に現職に就いた。

山都の「みどころ」

喜多方・山都地区が位置する会津地方北部には、美しい自然だけでなく、山岳信仰が残る飯豊山に関連する文化財が多く残る。自身が調べた古い道を歩く「街道探索ウォーク」や、トレッキングや稲作体験ツアーなどのほか、そばぶち(会津の言葉で「そば打ち」)や味噌づくりなど、地域の味を紹介するイベントまで、幅広く企画してきた。 


名勝、飯豊大滝を目指すトレッキングツアー


フクジュソウの群生地

観光の目玉が「そば」だ。山都にある宮古地区は会津の中でも特に良質のそばが育ち、つなぎを使わない「十割そば」で知られる。以前、地域にはそばの店がなく、農家に頼んで打ってもらわないと食べられなかったため「幻のそば」と呼ばれていたが、現在では、30戸ある集落の約半数の農家が自宅の座敷を開放して食堂を開き、そばを出している。

今年の紅葉シーズンは終わったが、寒い冬も会津には見どころがたくさんある。「1年の中でも、雪の季節は本当に景色がきれいです。冬になると動物は姿を隠しているように思えますが、実は活動していて、足跡を見つけたり、観察したりすることができますよ」と堀口さんは紹介する。2013年1月下旬には、スノーシュー(西洋式「かんじき」)をはいて、動物の足跡をみつけるイベントの開催を予定している。

イベントを被災地の現状を伝える場に

東京電力福島第一原発事故の影響で、震災後、福島県を訪れる観光客数は激減した。昨年は前年度比で4割近く減少し(※)、2012年は回復の兆しがあるものの、以前の数には戻っていない。
(※23年観光客入込状況調査〔福島県観光交流課〕による)

放射能については、さまざまな資料を読み、勉強した。喜多方は浜通りに比べて放射線量が低く、むしろ、関東地方の一部地域のほうが高いくらいだという。そんな経緯から、8月に1泊2日の「わんぱく子供合宿」を開催した。

「子どもを持つ親御さんに安全だと強調するつもりはないが、喜多方の現状を理解し、安全だと判断してくれた人に参加してほしいと思った」という。定員には達しなかったものの、参加者も集まった。

東日本大震災の発生直後から、堀口さんは南相馬市などの被災地や喜多方市や郡山市の避難所などでボランティアをしてきた。また、避難により、動物を飼えなくなった方々の犬や猫を預かったことがきっかけで知り合った、大熊町から会津若松へ避難してきている人たちを山都のイベントに招き、東京など福島県外からイベントのためにやってきた人たちと交流してもらうことも、企画のねらいだという。

「東京などでは以前に比べて震災の報道が半減していると聞きましたが、福島ではまだニュースの半分以上を占めています。震災はまだ終わっていないことを是非県外から来た人たちにも知ってほしい。20人の参加者が、それぞれ5人くらいに福島のことを伝えてくれれば、結果として100人に拡散する。地道に福島の置かれている今なお厳しい現状と会津の安全さを、口コミで多くの人に広めていきたいと思っています」。イベント開催を福島支援のボランティア活動ととらえ、実施しているという。
 

ベネズエラで再発見した日本文化

「会津地方は、脈々と伝統が受け継がれてきたすばらしい場所」と堀口さんは紹介する。日本の文化のすばらしさを認識したのは、ベネズエラでの協力隊員時代だった。

本来の任務に加え、週末は現地の人向けに「日本語教室」を開いていた。そこで生徒から神道や仏教、天皇制など日本の文化について質問を受けた時、しっかり答えられない自分を恥ずかしいと感じた。知識を得るために調べる中で、日本文化のすばらしさを知ったという。

現在、会津の魅力を掘り起こし、イベントとして紹介できるのも、当時の「気づき」があったからだ。今後は、グリーン・ツーリズムの仕事をしながら農業を学び、ゆくゆくは農泊(農家民宿)を開いてみたい、と抱負を語る。


12月に開催した、みそづくり体験イベントで(前列左から2人目が堀口さん)

「会津には、『さすけねぇ』(大丈夫、気にするなの意)という言葉があります。原発の風評被害で苦しむ今、この言葉を聞くと、ほっとするんですよね」。心をほぐす、会津の温かさ。平日は事務局の仕事、土日はイベントと働きづめの日々だが、会津を思う気持ちが支えになっている。「来年度は、地元の特産品を生かした料理教室、山都に伝わる民話の舞台へ実際に行ってそこで語り部さんに語ってもらう会、今は廃道になっているがかつては地元の集落間を行き来した道を活用したウォーキング大会などの開催を考えています」。会津をめぐるツアー開拓のアイデアは尽きない。

(写真はすべて堀口さん提供)

関連リンク

山都地区グリーン・ツーリズム推進協議会 ブログ
http://yamatogt.blog.fc2.com/

 

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