【神奈川県】エイズ予防啓発活動に込めた思い~横浜AIDS市民活動センター長として活動する、白井美穂さん(平成20年度3次隊/ガーナ/エイズ対策)[2012年12月3日掲載]

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若者向けHIV・エイズ勉強会の講師を務める白井さん
(2012年8月)
 

12月1日は「世界エイズデー」。世界保健機関(WHO)により設けられたこの日に合わせ、HIV/エイズの蔓延防止を呼びかけ、HIV感染者やエイズ発症者への理解を促すためのイベントが世界各地で開かれた。

エイズが知られ始めた1980年代は、「エイズ=死」と考えられていたが、研究が進んだ今日では、適切な手段を講じれば感染を防ぐことは難しくないように見える。

だが、「正しい知識だけでHIV感染を防げる、とは言えないんです」と、横浜AIDS市民活動センター長を務める白井美穂さん(平成20年度3次隊/ガーナ/エイズ対策)は訴える。

「女性の立場が弱くて言い出せない、あるいは、宗教的な背景のために、コンドームを使ってほしいと要求できない人たちがいることをガーナで見てきた。だから、知識だけではなく、自分がどういう人生を歩みたいか、相手とどんな関係を築きたいかをパートナーに伝えられる意識や力も必要だと思う」。ガーナでの活動を経たからこそ、こう考えられるようになったという。

協力隊経験が現在の仕事につながった

横浜AIDS市民活動センターは、1995年7月に設立された横浜市の施設。同市で1994年にアジアの都市では初めて「国際エイズ会議」が開かれ、市民のエイズ予防啓発活動が盛り上がったことから、その流れを受けて開設された。

また同時に、国際エイズ会議の開催年以来、横浜市では市民版エイズ会議「AIDS文化フォーラム in 横浜」が開かれるようになった。毎年8月の3日間、医療・教育関係者やNGO、HIV陽性者もスピーカーとして登壇する約30のプログラムが催され、全国から3,000人前後の参加者が集まる。こういった動きは全国でも珍しく、今年は京都でも同様のフォーラムが開かれた。

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2012年8月開催のAIDS文化フォーラムin横浜で、レッドリボンづくりコーナーを出展(2012年8月)

白井さんは一般企業に就職した後、かねてから興味を持っていた国際協力の分野に踏み出し、横浜YMCAが支援するタイのバンコクYMCAが運営するエイズ孤児施設で約半年間、ボランティア活動に従事した。それがきっかけで横浜YMCAに勤務し、「AIDS文化フォーラム in 横浜」の事務局を担当。その後、青年海外協力隊に参加し、ガーナで活動した。 

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ピアエデュケーター育成トレーニングの様子(ガーナ、2010年5月)

YMCAでの職を辞した上で協力隊に参加したが、現地からメールやブログを通じて活動を発信していたことが以前の職場の人たちにも評価され、協力隊から帰国後、横浜YMCAが市から運営を受託する同センターを任されることになった。

センターは、ニューズレターやメールマガジンを通じてHIV・エイズを含む性感染症についての情報を提供するほか、イベントや街頭キャンペーンを通じたエイズの予防啓発活動、学校や市民団体(NGO・NPO)の予防啓発活動を支援している。

新たなエイズ発症者数が増え続ける日本

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の年次報告書によると、2011年末の時点で、世界の新規HIV感染者とエイズによる死者数は減少傾向にあるという。一方で日本は世界の傾向とは異なり、「エイズ発症者は毎年過去最高数を塗り換え、新規のHIV感染者数も横ばい状態」と白井さんは説明する。「新規のHIV感染者は20代~30代の人に多く、エイズ発症は30代から40代の人に多い。しかし、他の年齢層にも感染・発症者は見られるので、決して若者だけの病気ではないということを強調したい」。

いったんエイズを発症したら、その後の人生が大きく変わってしまう。そうならないためにも、早い段階で検査を受け、自分の健康状態を知っておくことが大切だと白井さんは言う。「万が一リスクがある行動をとったとしても、現実と向き合いたくないこともありますよね。怖いなと感じたり、まさか自分は感染しないだろうと考えたり」。しかし、早期に感染を知り、適切な治療を受けることで、HIVをコントロールしながら、長く生きられることが可能になってきたという。「検査にハードルを感じることもあるかもしれないけれど、これから長い人生を歩む若い人たちには、ぜひ検査を受けてほしいと思う。でも、早期受診の大切さをどうアピールするかが難しいのですが」。

エイズを防ごうという姿勢は、自分がどんな人生を歩みたいかという意思表示でもある――エイズが知られるようになってから約30年が過ぎ、人々の関心が薄れているように感じられる昨今。しかし、医療の進歩により病気の発症を遅らせることができても、HIVを体内からなくし完治する方法はみつかっていないという点は今も変わらない。この病について改めて考える時、白井さんの言葉が胸に重く響く。

(写真はすべて白井さん提供)

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横浜AIDS市民活動センターウェブサイト

 

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