【群馬県】農地を守り、次の世代につなぐ~群馬で農業を営む、長谷川 元晴さん(平成15年度1次隊/セネガル/野菜栽培)[2012年8月15日掲載]


吉井町で農業を営む、長谷川さん

進路を模索する中で「目に見えるものを作る仕事に就きたい」と、たどり着いた農業。二度の受験で青年海外協力隊に合格し、セネガルに派遣されたが、現地での活動は、思うような成果を挙げられなかった。

そして帰国後、改めて農業の道を目指し、耕作放棄地(※)になりそうな土地1反(約991平方メートル)を借り受けて農業を始めた。農地は一度耕されなくなると、畑に戻すのは難しい。長谷川さんは耕作放棄地になりそうな土地を借り受けて農地を守り、農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てている。

※農林業センサスで「過去1年以上作付されておらず、今後も作付される見通しがない耕地」を指す。
 

大学を休学し、農業修行に

群馬県南西部の吉井町(※)。セネガルでの活動後、農業を始められる土地を探し求める中で、長谷川さんはこの町にたどり着いた。現在、約6反の野菜畑と、1反のキウイ畑を手入れしている。

※合併により、2009年に高崎市となった


青々と実る、畑のピーマン
 

出身は神奈川県藤沢市。農業とは縁のない環境に育ったが、社会学科に籍を置いていた大学時代に卒業後の進路を考える中で、「成果が目に見えるような仕事をしたい」と考えるようになった。どんな職業に就くか悩む中、たまたま相談をした大学院生の農村調査に同行することに。そして、石川県で有機農業を営む、故宮本重吾さんのもとを訪れた。

宮本さんは日本の農業の将来を考える中で、自給自足の社会を目指して農業に取り組んでいた。明確な目的を持ち農業をする姿に感銘を受け、長谷川さんは大学を休学して1年間宮本さんの下に住み込み、農業を学んだ。山村に広がる農地を守っていこうとする宮本さんの姿を見て、長谷川さんは「自分もこんなことをやっていきたい」と思ったという。

 

復学して卒業後、農業経験を生かそうと協力隊に応募したものの、残念ながら不合格に。そして、アジアや太平洋地域で農村開発などを行う公益財団法人オイスカでもう1年農業研修生として学び、二度目の応募で協力隊に合格、セネガルに派遣された。

野菜栽培指導隊員として着任したセネガル。1年目は活動準備に費やし、2年目にようやく地元の人と野菜の栽培を始めた。だが、日本で学んだ手法はセネガルの風土に合わず、せっかく出た芽には虫が付いて育たなかった。セネガルも基本的に年1作で、再挑戦はかなわなかった。

だが、帰国後も迷わず農業の道を選んだ。「セネガルの人たちに農業を続けていくことの大切さを説いたので、言うからには自分がやらなければ」。野菜栽培隊員として活動した意地があった。

実家がある神奈川県で農業を始めようと農地を探すも、情報が少なく、なかなか見つからなかった。長谷川さんは、どうやって「コネ」を見つけ、土地を借りたらよいのか、途方に暮れたという。

アフリカで培った力


農薬は使わない。秋野菜の種まきに備え、地中の害虫を殺すため、
表面にビニールを張った畑

 

 

それでも諦めず、いろいろな人に相談する中で、石川県で農業研修を受けていた時に世話になった人に相談したところ、その人のつながりから、ようやく群馬県で農地と家が借りられることになった。

初めの年は、高齢化により農地を減らしていた人から1反の畑を借り受けた。キュウリを育てたが、虫がついてしまい、収穫しても売れないものばかり。キュウリは成熟した実を枝につけたままにすると生育が悪くなるため、せっかく実ったキュウリを取っては捨てる日もあった。

うまくいかないことも少なくなかったが、経験を重ねてきたことで今ではようやく安定した収穫を得られるようになった。販路は直販に絞り、季節の野菜約10種を詰め合わせ、宅配便で送る「野菜セット」を定期購入者に送っている。

「化学肥料や農薬を使うことも一つの手法だが、最初に学んだのが有機農業ということもあり、農薬は使いたくない」と話す長谷川さん。安心して食べられる野菜は口コミで広まり、宣伝なしでも収益が上がるようになった。

これまでの苦労を挙げたらキリがない。しかしどんな状況でも音を上げず、問題の解決方法を模索してきた。「協力隊でアフリカに行ったことで、想像しなかったことが起こっても、柔軟に対応できる力が培われたと思う」。そして、平凡な生活に満足せず、さまざまな道に進む隊員仲間の活動が励みになるという。

近隣で耕されなくなった畑を借り受けていたところ、今では野菜畑は6反となり、キウイ畑1反も加わった。近年、全国の耕作放棄地は増加の一途にあり、その面積は約40万ヘクタールに及ぶ(農林水産省「農林業センサス」による)。一度耕されなくなった土地は雑草が伸びて荒れるだけでなく病害虫の発生源となるなど周辺の土地に害が及ぶ。さらに、元の農地に戻すのは容易ではない。農地を守ることは環境の保持になるだけでなく、日本の農業を守ることにもつながる。

7年目を迎え、農業がますます楽しくなってきたと話す長谷川さん。「農地を守り、次の世代につなげていきたい」。その言葉から、アフリカで鍛えた心の強さがにじみ出る。

関連リンク

長谷川さんの「てらんが農園」ウェブサイト
http://www.geocities.jp/teranga1010/

 

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