「バングラデシュ」のイメージを劇的に変えた観光PR―間島ゆかりさん(平成22年度1次隊/バングラデシュ/観光業)[2012年8月1日掲載]

 

「正直、まだ日本に慣れていないような気がします。逆カルチャーショック、というやつかもしれません。もしかしたら」間島ゆかりさん(平成22年度1次隊/バングラデシュ/観光業)は笑う。

インタビュー時は帰国してまだ1か月。道を歩いていても誰も話しかけてこないことに寂しさを感じたり、バスや電車のなかがとても静かであることに違和感を覚えたりと、まだバングラデシュでの生活感がからだの中に残る。しかし間島さんは既に、協力隊としての活動経験を日本でも生かす「実践者」でもある。

PRムービーやインターネットを活用し、バングラデシュの魅力を伝える効果的なPRを成功させ、帰国直後の現在、既に日本で講演やイベントを多く開催している、元「観光業」隊員である間島ゆかりさんにお話をうかがった。

派遣国「バングラデシュ」、派遣職種「観光業」

協力隊の活動は「種をまき続ける」ものだ、という例え方をされることがある。すぐに花は咲かないかもしれない、芽が出ないものも多いかもしれない、けれどどこかでいつか美しい花が咲いて実を結び、そしてまた種が広がっていく。それを繰り返す。

間島さんの活動は、早い段階で花を咲かせ、実をつけ始めている。ツイッターやフェイスブックなどを通じて、世界中にその種は広がり、それぞれの場所で育ち、新しい種が既に広がっているところもある。間島さんが育てた「バングラデシュの魅力」という名の花は、いま多くの注目を集めている――。

あのバングラデシュで「観光業」? 昔からこの国を知る人ほど、意外な印象を受けるかもしれない。アジア最貧国、洪水、サイクロン、電力など生活インフラの不足、高い人口密度。ネガティブなイメージがどうしても先行してしまう。しかしこの数年でバングラデシュを取り巻く状況は劇的に変化した。援助ではなく自国のNGOによるマイクロ・クレジットなどの社会改革、潜在的なポテンシャルに期待される経済的な投資の劇的な増加、映像作家や写真家が熱い視線を送る、美しい人々と景観……。

語られるキーワードが急激に増えてきたこのタイミングに、間島さんはバングラデシュへと赴任した。

「そこにある素晴らしさ」をPRするという協力活動

大学時代に英語とコミュニケーション学を学んだ間島さんは、アメリカでの交換留学時代に、「広報」という分野に出合う。情報発信を適切に行うことにより、地域振興のきっかけとなったり、病気を予防する啓発となったり等、広く社会に貢献できる広報、「PR」という行為。その面白さ、魅力に夢中になった。大学卒業後、外資系のPR会社に就職し、広報の経験を積んでいった。

そして入社して3年半、かねてから興味があった「国際協力」に、自身の広報スキルを生かしたいという思いが強くなった間島さんは、協力隊への参加を決意する。

職種は観光業、配属先は首都にあるバングラデシュ政府観光局。


配属先の同僚たちと

まずは配属先の観光局ウェブサイトの日本語版を制作することに。そのためにはもちろん、バングラデシュについて知ることが必要だ。そこで、間島さんの活動は自分自身が国内の色々なスポットに赴くところから始まった。

間島さんは訪れた観光スポットやレストラン、ホテル情報などを、自身が開設したブログに少しずつ掲載していった。折しもバングラデシュにはビジネスや国際協力関係での日本からの来訪者が激増していた時期、しかし日本人向けのバングラデシュ情報はまだほとんどない。観光スポットや土産物屋、レストランなどの詳細な情報が掲載されている間島さんのブログは、瞬く間にアクセスが伸び、「バングラデシュに行く人はまずこのブログを見る」という存在になっていった。

他にも配属先への様々な提案書の作成、ツイッターやフェイスブックなどのSNSを通じたリアルタイムな情報発信、各種媒体への情報提供など、活動期間は慌ただしく過ぎていった。


バングラデシュでの観光イベントにて撮影

間島さんの元には、ブログやツイッターを通して「バングラデシュにもこんなきれいなところがあるんですね」「もっと汚いところかと思っていました」という感想が続々と来ていたという。自身の活動を通してバングラデシュの素晴らしさを経験として知り、「貧しくてかわいそう」という日本におけるバングラデシュのイメージを変えたいと思っていた間島さんは、2年間の協力隊活動の集大成として、映像作品「日本人向け観光PRムービー」の制作を計画した。

“SONAR BANGLA” 「黄金のベンガル」という名の映画

 


観光PRムービー「SONAR BANGLA ~夢のような5日間の物語~」

日本の都会であくせく働く女性が主人公。単調な日常から抜け出したいと思っていた彼女は、NGOのインターンをしている知人を訪ね、バングラデシュへとやってくる。

オープニング、主人公は首都ダッカの空港に到着する。「バングラデシュの空港がこんなにキレイなのか?」初めて映像を見る人は冒頭から驚くことになる。シーンが変わり、主人公を迎えに空港へと向かう男性。現地の乗り物に乗り込むが渋滞に巻き込まれる。彼は乗り物を降り、熱気と喧騒うずまくダッカの道路を走りだす……。

一般的な、発展途上国という「イメージ」、「らしさ」をいい意味で裏切りながら、そして時には「らしさ」が見えるシーンにウンウンとうなずいてしまうだろう。食生活、服装、買い物のシーンや、など生活情報や観光の要素が自然に組み込まれ、ストーリーが展開していく。

この映像はドラマという形をとりつつ、それでいてバングラデシュという国が非常にリアルに、よそ行きでない素直な表情で、はじめてバングラデシュに触れる人に染み込んでいく。それは日本人的な感覚「だけ」で撮影されたものではないからだ。企画、ストーリー構成などは、間島さんを中心に現地の文化・感覚を体で理解している協力隊員が考え、現地に長年在住し現地への支援を続けている日本人からのアドバイスもあった。そして監督、撮影は自国を愛するバングラデシュ人のプロフェッショナルたちに依頼した。
 


撮影クルーたちと

制作時には撮影クルーや監督との衝突も少なからずあったという。自国についての誇りと問題意識を常に高く持っているバングラデシュ人の彼らとは常に激しく議論することになった。「すんなりと進まなかった制作だからこそ、いいものができた」と、今でこそ笑いながら語ることができる。

完成した作品は、在バングラデシュ日本人会を対象とした上映会を皮切りに、ツイッターでの呼びかけに応じてくれた人たちや帰国した隊員などを通じ、バングラデシュと日本双方で瞬く間に多くの場所で公開に至った。そして、任期終了間際の間島さんの元には、帰国を待っての日本での上映依頼、講演依頼が相次いで舞い込んだ。
 


帰国後の上映会&講演会の様子

帰国して1か月。からだを休める間もなく、間島さんはPRムービーの上映会や講演会などで忙しい日々を送っている。

上映会のスケジュールやレポートも、逐一フェイスブックで公開している。「バングラデシュのイメージが変わりました」というのが、もっとも多く寄せられる感想だ。
例えば大学で国際協力について学ぶ学生は、これまでバングラデシュといえば援助が必要なアジアの最貧国というイメージだけがあった。しかしこのムービーを見て、『かわいそうな国』という印象は消えていったと言う。かわいそうだから援助、ではなく、好きになったバングラデシュのことをよく知りたい、その上でこの国のことをきちんと考えていきたい。そう思えるようになった、と言う。

きれいなものだけを押し出したり、問題だけを露わにするのがPRじゃない 

バングラデシュでの間島さんの活動の大きなテーマは、「バングラデシュを新しくブランディングする」というものだった。「貧しいだけ」のイメージを払拭する。

「もちろんまだまだ深刻な問題は多くあります。それは真剣に考えていかなければならない。でも問題だけじゃなく、それ以上に多くの素晴らしいものもいっぱいあることも同時に伝えたい。まずはバングラデシュを好きになってもらいたいんです」


バングラデシュの農村で子どもたちと

「今後も広報の仕事に関わっていきたい」と話す間島さん。「そしてバングラデシュの魅力を皆さんに知ってもらう取り組みを続けていきたいと思っています」
間島さんは最後に、こう言葉をつなげた。「ライフワークとして、続けていきたいですね」

帰国後の逆カルチャーショックはまだ抜けそうにない。それでも今日も講演活動に向かう。バングラデシュの魅力を伝えに。

関連リンク

バングラデシュ政府観光局のウェブサイト(日本語版)

http://www.parjatan.gov.bd/jp/

 

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