【宮城県】漁師さんたちが笑顔を取り戻せるお手伝いを-国際NGOスタッフとして復興支援にあたる阿高麦穂さん(平成20年度2次隊/ナミビア/養殖)[2012年3月1日掲載]

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東日本大震災の発生前、東北地方は豊かな漁場として知られ、サケやサンマ、カキやワカメなど、多くの海産物を産出していた。だが、沿岸部に集中していた水産業の冷蔵・加工施設のほとんどが津波で損壊し、多くの漁船が流され、水産業は再開が難しいほどの壊滅的な打撃を受けた。一日も早い復興には、水産業が復活して雇用を生み出し、人々が生活の基盤を取り戻すことが求められている。

国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンは、水産業が再び震災前の勢いを取り戻せるよう、宮城県の気仙沼市と南三陸町の漁業協同組合を通じ、復興支援事業に取り組んでいる。この事業に一人の青年海外協力隊経験者がスタッフとして加わっている。

砂漠の国での隊員時代

阿高麦穂(あたか・むぎほ)さんは、協力隊員として、南部アフリカのナミビアに派遣され、地域に雇用を創出する淡水魚の養殖プロジェクト立ち上げに携わった。

派遣された中部の町ウサコスは以前、スズ鉱山の景気で潤っていた。だが、スズを堀り進める中で水脈に当たり、水の排出にコストがかさみ、収益が上がらなくなったため閉山に。その後、町の失業率は40パーセント近くまで上昇した。その対策として、若者の雇用対策を担当する機関は、鉱山から湧き出る地下水を活用し、淡水魚養殖プロジェクトを立ち上げ、雇用を創出する案を打ち出した。

町でも会う人にもプロジェクトについて話した。次第に、町ではいつもどこからか「アタカ!」と声をかけられる存在になった。
国連開発計画(UNDP)や、フランス、スウェーデン、ドイツの援助機関の資金などに応募し続け、ようやく日本政府の草の根無償資金協力を得られた。そして、プロジェクトが動き始め、それまで無職だった16歳から40代までの10人が雇用された。「彼らから、アタカのおかげで仕事が見つかった、と言われたことがうれしかった」。2010年秋に任期を終えて帰国の途に就いた。プロジェクトが収益を上げるところまでは立ち会えなかったものの、与えられた任務は全うすることができた。

阿高さんが育ったのは内陸部の群馬県。海はめったに見られない「特別な存在」だった。海への憧れの気持ちから、大学では水産学を学んだ。

大学2年次、キャンパスは都内から岩手県大船渡市に移った。海を見渡す校舎で学び、ダイビングで東北の海に棲む魚を探す日々は本当に楽しかった。そして、漁師さんの手伝いをしたり、おいしい海の幸を囲み、酒を酌み交すことも楽しみの一つだった。
 

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学校を回り、魚についての授業をしたことも

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配属先の同僚が担当するプロジェクトの供与式で、青少年スポーツ文化省大臣、州知事と。隊員時代、積極的に人に会いにいき、プロジェクトへの資金協力を訴えた

思い出残る東北の海に恩返し

協力隊を終えて帰国後、再び海外で活動できる仕事に就きたいと、開発コンサルタント企業を中心に就職活動をしていた時、東日本大震災が発生した。

東北地方の被害の大きさが報道される中、学生時代にお世話になった漁師さんたちのことが気がかりだった。震災発生から1週間後、周囲の猛反対を押し切り、阿高さんは友人と2人で物資を積み込んだレンタカーに乗り、新潟経由で岩手に向かった。

大船渡には何もなくなっていた。学生時代お世話になった漁師さんたちの中には残念ながら犠牲になった人がいたものの、多くは無事だった。当時、大船渡にはまだ支援物資が行き届いておらず、持ってきた物資はとてもありがたく受け取ってもらえた。その後も毎月1回物資を現地に運び、港に沈んだがれきを撤去する海底清掃ボランティアを立ち上げた。

 

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岩手での震災復興支援を経て、NGOスタッフとして再び東北に戻ってきた阿高さん ©World Vision

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ワカメを収穫する漁師さんたち ©World Vision

「漁師さんたちが笑顔になってもらえる日がくるよう、活動を続けていきたい」。阿高さんの言葉には、海や漁業への思いが言葉の端々から伝わってくる。ワールド・ビジョン・ジャパンは気仙沼漁協の冷蔵施設が再開できるよう、総事業費5億8000万円のうち、1億7000万円を負担した。2月には冷蔵保管室が復旧し、3月中旬には施設が完成予定で、水産業復興の後押しとなることが期待されている。「水産業や加工業双方に、冷蔵・冷凍庫はなくてはならないもの。陸揚げした水産物を貯蔵できるほか、出荷調整が可能となる」と阿高さんは説明する。

「先進国でこれだけの災害が起こるとは予想していなかった。けれども、復興が成された時、この経験は途上国支援に大いに生かされるものだと思う。この活動での経験を自分の中に落とし込み、将来、もしどこかの国が支援を必要としているとき、自分がその力になりたい」

実際に、東日本大震災の復興には、国際NGOがこれまで途上国で復興支援に当たってきた経験が大いに生かされている。ワールド・ビジョン・ジャパンも、岩手県一関市に現地事務所を構え、復興支援に取り組んでいる。そして、阿高さんと同じように、多くの帰国隊員が協力隊経験を生かし、NGOや援助機関に所属し、復興事業に加わっている。

奇しくも、ナミビアでのプロジェクトと同様に「雇用創出」という目標を掲げた事業に携わっている阿高さん。ナミビアで発揮した行動力で、一日も早く、漁業に携わる人やそのご家族に笑顔が戻ることを期待したい。

リンク

ワールド・ビジョン・ジャパン
http://www.worldvision.jp/

ワールド・ビジョン・ジャパン 東日本大震災緊急復興支援部のブログ
http://worldvision.cms.drecom.jp/hopejapan-005

 

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