HIV検査施設改善アプローチ「ビフォー/アフター」 建築家の視点からエイズ対策に取り組む、都市計画・建築関連OVの会[2012年1月16日掲載]

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エチオピア人参加者に
活動を説明する小泉さん

2011年12月4日~8日まで、エチオピアの首都、アディスアベバで第16回アフリカ地域エイズ・性感染症対策会議(The International Conference on AIDS and Sexually Transmitted Infections in Africa: ICASA)が開かれた。この会議に、松崎志津子さん(平成12年度3次隊/チリ/建築)、笠井いづみさん(平成2年度3次隊/モロッコ/建築)、小泉新一さん(平成5年度2次隊/エチオピア/建築設計)3人の協力隊経験者が参加した。

3人は、アフリカのケニア、ガーナ、セネガル、マラウイの4か国で実施した「建築家の視点によるエイズ対策」の調査報告と提案を会議出席者に広めるとともに、アフリカでエイズ対策に関わる青年海外協力隊員やJICAの技術協力プロジェクト専門家らと意見を交わした。

シニア海外ボランティアとしてアフリカで調査

ICASAは2~3年おきにアフリカ地域で開かれ、世界103か国から1万人以上の科学者、ヘルスワーカー、HIV陽性者、政府やNGOなどエイズおよび性感染症に関わる人々が参加する国際会議だ。第16回となる今回は、220以上のセッションが開かれ、HIVおよび性感染症の予防や治療・抑制の成功例の発表から、その予防対策への取り組み事例などが発表された。

近年の医学の発達により、エイズによる死亡率は以前よりも低下しているものの、医療施設が十分でなく、薬品も高価な開発途上国においては、感染すれば死につながる可能性が高い。そのため、2015年までに国際社会が達成すべき八つの課題「ミレニアム開発目標(MDGs)」には、マラリアなどの疾病とともに、HIV/エイズの予防が目標の一つに掲げられている。

松崎さんら3人は、建築分野の協力隊経験者により構成されたNPO、都市計画・建築関連OV会(EVAA)のメンバーだ。同会はこれまで、HIV/エイズ対策を建築家の視点により、HIV/エイズの簡易検査やカウンセリングを行うVCT(Voluntary Counseling and Testing:カウンセリングを受け自発的にHIVの抗体検査を受ける)センターの間取りなどの内部構造を、検査を受ける側の立場に立って改善するという独自の活動に取り組んできた。

2006年の3月からは、5人の会員がシニア海外ボランティアとして1か月間ケニアに派遣され、活動した。

1980年代後半から急激にエイズの発症が拡大したアフリカの中でも特に感染率が高かったケニアは、国家事業としてエイズ撲滅に取り組んでおり、全土に700のVCTセンターが設置されている。

 

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ナイジェリア人のポスターセッション参加者に
活動を紹介する松崎さんと笠井さん

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ケニア・ナクル市そばにあるカプクルスVCT
センター。建物は米国政府から、内部の家具は
日本政府から供与されている

 

安価で手軽にできる施設の改善をアドバイス

VCT施設でカウンセリングとHIV検査を行い、自身が自発的検査行為によってHIV感染の有無を知ることで、さらなる感染者を防ぐことができるばかりでなく、その行為の広がりが社会的差別の軽減につながる。一方、施設内でプライバシーが保たれ、気軽に検査を受けられる環境が整えられることが、HIV検査を受ける人の増加を促す。EVAAは、建築家としての視点から、家具の配置や身近にあるもので手軽にできる施設の改善方法を提案している。

ケニアではVCTセンター31か所を調査。自発的に検査を受けようとする人(クライアント)のプライバシーが守られる快適な施設づくりへの提案を、建築的な観点からまとめた。これらは、青年海外協力隊のエイズ対策隊員やVCTセンターのスタッフに共有されることを目的としている。その後2008年までに、さらに、ガーナ、セネガル、マラウイでもEVAA会員がシニア海外ボランティアとして調査に当たった。

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ガーナのVCTセンターの改善例。家具の配置を変え、検査を受ける人がドアから丸見えにならないようにした

 

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作業風景写真:調査団が見本を示し(左)、現地スタッフと共に作成し(中)、設置する(右)
 

さらに、先述のICASAでは、EVAA会員の3人が、毎日開催されるセッションを聴講する人々に資料を配布し、この取り組みを多くの人に知ってもらおうと努めた。「多くのセッションでいろいろな団体の取り組みを聞いたが、建築の分野でHIV/エイズ予防へのアプローチをしている例はなかった」とは、EVAAからのICASA参加者全員の感想だ。

会議前にはアフリカ各国でHIV/エイズ予防に携わる青年海外協力隊員や、JICAの技術協力プロジェクト専門家らがJICAエチオピア事務所に集まり、東京の本部をつないでのテレビ会議にて意見交換を行った。隊員から病院に新築するトイレについてのアドバイスを求められる場面もあったという。また、かつてEVAAのメンバーがシニア海外ボランティアとして調査にあたった地域で活動するケニア隊員も参加していたため、EVAAメンバーから隊員に対し、VCTセンター改修改善のフォローアップの可能性と検討が提案された。

EVAA会員はまた、青年海外協力隊の駒ヶ根、二本松両訓練所において、派遣前の訓練生に、自らの活動経験の披露や、技術的なアドバイスなどの後方支援も行っているが、訓練中に出会った何人かの隊員とエチオピアで再会し、「派遣前訓練で教わったことがとても役に立っている」とコメントをもらい、これまでの活動の意義を再確認することもできたという。

このほか都市計画・建築関連に関する活動は、会員が国際協力に携わった経験を起点として、それぞれの視点から、建築や設備の改善アドバイスを報告書としてまとめ、ウェブサイト上で公開している。その中には、「青年海外協力隊がかかわった世界遺産」(2005年)、「バングラデシュのサイクロン」といったものから、愛・地球博(2005年)で展示した「世界のトイレ事情」まで、多岐にわたる。

また、東日本大震災への復興支援では、JOCA災害救援専門ボランティアとして宮城県岩沼市の仮設住宅の住環境調査にも携わった。建築という技術が解決し得る問題は、私たちが想像するよりはるかに多いことに驚く。松崎さんは、「建築といっても、建てることだけが仕事ではなく、建築面から改善できることは多岐にわたる。これからも実現可能で効果のある支援を通して、人々の安全と生活の質の向上を目指していきたい」と今後の抱負を語る。

(写真はすべてEVAA提供)


▽NPO 都市計画・建築関連OVの会 ウェブサイト
http://evaa-japan.com/

 

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