【沖縄県】環境を守る「意識」を育む-西畠知洋さん(平成16年2次隊/コスタリカ/環境教育、熊本県出身)[2011年12月1日掲載]

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イルカと泳ぐ西畠さん

海に囲まれた日本の中でも、最も海を身近に感じられるのが沖縄県だ。訪れる観光客は年々増加 しており、2010年度の観光客の数は約571万人に上る(注1)。それに対して、沖縄県の人口は約140万人と、人口の約4倍の観光客が島を訪れていることになる(注2)。多くの観光客の目的は、豊かな自然や美しい海。観光が主要産業となっている沖縄では、自然は守られるべき大切な資源だ。

コスタリカで環境教育隊員として活動した西畠知洋さんは、現在、沖縄県でイルカのト レーナーとして活動し、観光客がイルカとふれ合ったり、海を観察したりするプログラムの実施や、小学生を対象とした環境教室の実施に携わる。そこには、青年海外協力隊での経験が大きく役立っている。

(注1)沖縄県観光政策課による統計。 (注2)沖縄県による2011年10月1日時点の推計。

ウミガメの村での活動

西畠さんは大学院で自然科学を学んだ後、青年海外協力隊に応募。コスタリカ南西部の太平洋に面した村、オスティオナルに派遣された。そこは、数万から数十万のウミガメが上陸して産卵する「アリバダ」という現象が月1回発生する村として知られる場所だ。そのため、海岸や周辺の地域は国によって自然保護区に指定されている。

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アリバダの光景。日が沈む前から続々とウミガメが上陸する

村の人々は、ウミガメのタマゴを採取して売ることで生計を立てているが、20年ほど前から法律やNGOによって採取のルールが細かく定められ、ウミガメの生態を守る仕組みがつくられていた。

西畠さんに与えられた役割は、村と周辺の小学校11校を回っての環境教育授業だった。周辺の小学校といっても、広い地域に学校が散在しているだけでなく、公共の交通手段がほとんどないため、自転車に乗り、ジャングルや川を渡って学校を回った。「炎天下の中、時には往復8時間かけてたどり着く学校もあり、体力的にきつかった」と、当時を振り返る西畠さん。しかし、「環境教育に携わりたい」という確固とした目的をもって参加した協力隊の活動で、それを苦労とは感じなかった。

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授業の様子。教室はいつも大きな木の下

子どもたちとのふれあいをきっかけに村にとけ込み、活動の基盤を徐々に築きながら、西畠さんはコスタリカに根を広げていった。小学校での授業では、なぜ環境を大切にしなければならないかを子どもたちに伝えた。

例えば、紙を使いすぎるとウミガメが元気に暮らせなくなる。それはなぜか。紙は木材から作られ、大量の木を伐採すると森が消失する。木々は根元や周辺の土に水を蓄えているが、森が消失するとその機能が失われ、雨が降ると海に土砂やゴミが流れ込んでしまう。すると、海が汚れ、結果としてウミガメの生態にも影響を及ぼす。すると、ウミガメが産卵に来なくなるかもしれない――。

「それぞれの『つながり』を中心に、環境問題を身近な問題として受け止められるよう、時には実験を織り込むなどして工夫し、授業を進めた」と、西畠さんは当時の取り組みを振り返る。

最初は村人になかなか受け入れてもらえなかったり、協働相手との人間関係で苦労したりすることはあったが、1年が過ぎたころには活動は順調に軌道に乗っていた。だが、任期を終えた時、一つの疑問が生じた。「オスティオナルでの活動は自分の力ではなく、周りに支えられたおかげかもしれない」。自分の力を試してみたいと、短期ボランティアに参加、再びコスタリカでイルカとクジラの生態調査に携わった。また、それまでの経験を買われ、海のそばにあるジャングルの村で暮らす人々に環境の大切さを伝える役割も担うことになった。

環境に興味を持ったのは高校生のころ。ある日見たテレビコマーシャルで、インド洋に浮かぶ島国モルディブは、地球温暖化による海面上昇の影響で今後数十年の間に沈没する可能性があると知る。それに大きな衝撃を受け、「モルディブの沈没を止める!」と野望にも似た使命感を抱き、環境研究の道に進むことを決意する。

一方、研究の対象に「海」を選んだのは、小さな頃に沖縄の海を初めて見た時の経験からだ。「沖縄の青く澄んだ海を見たとき、あまりにきれいで、とても驚いた」と西畠さんはそのときの印象を語る。そして大学時代は、沖縄・石垣島のサンゴ礁について研究した。

ウミガメからイルカへ、その大きな変化

任期を終えて帰国した時に自らが進む道について考える中、環境破壊の最も大きな要因となっているのは、やはり先進国だと再認識し、コスタリカでの経験を糧に、日本での環境教育に携わりたいという思いが強まった。そんな中、環境への理念に基づき、観光客向けに沖縄の豊かな自然の中でイルカとふれ合うプログラムを提供する企業の求人を見つけた。

環境教育に興味がある教育現場で環境教室を開けば、環境に興味を持つ人々が自然と集まるのは当然だ。一方で、観光に訪れる人々は、必ずしも環境保護の意識を持っているとは限らない。「観光客に環境の大切さを理解してもらえたら、大きな成果といえるのではないか」と考えたのが応募の動機だった。

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「協働相手」のイルカと

そして入社時、コスタリカでイルカの生態調査をしていた経験からか、イルカの担当となった。そんななりゆきで、西畠さんの「協働相手」はウミガメからイルカになった。

だが、協力隊を経験した西畠さんは、「なりゆき」も受け入れられるようになっ ていた。大学時代に研究していたのはサンゴ礁だったが、協力隊時代に環境教育に携わる中、環境はさまざまなものとつながりがあり、何を媒体としても、その道のプロであれば環境の大切さを人々に伝えられると考えられるようになっていた。「協力隊に参加する前だったら、自分はこれじゃないとできない、というわがままがあったが、今では『どうにでもなる』と考えられるようになった」

現在は、県内の小学生を対象にした子どもたちの環境教室も担当している。その担当になったとき、プログラムを楽しみつつ環境について学べる要素を盛り込んでいった。コスタリカでの経験はそこにも大いに生かされている。
近年の日本は、「エコ」をキーワードに、省エネルギーの大切さが広く知られている。だが、西畠さんは「省エネ=環境保護」には成長していないと感じている。「環境配慮といえばエコカーなどの『ハード面』が取りざたされ、教育など人の意識に働きかける『ソフト面』が取り上げられる機会が減ったように感じる」と言う。

「コスタリカ人は目の前にあるものを使ってアイデアを練るが、日本人はモノに走りがちだと感じる。人の意識というソフト面が大きく成長するよう、注力し、活動していきたい」

地球温暖化による気候変動により、この数年は、過去に経験したことがないほどの異常降雨や洪水が各国で多発している。環境を破壊から守り、次の世代に豊かな自然環境を残すことは、私たち世代の課題だ。エコカーに乗り、節電仕様の家電を使うことは二酸化炭素の排出削減には効果的だが、環境保全に直結するわけではない。日々の生活を見直し、一人ひとりが環境に配慮した行動をとること、それが、持続可能な生活につながるということ――。その大切さを、西畠さんはイルカを通じて発信している。

 

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