【愛媛県】さまざまな人が集う、地域の相談場所でありたい-松本光司さん(平成6年度1次隊/理数科教師/ガーナ)[2011年10月3日掲載]

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デイサービスを利用する子どもを抱く
松本さん(左)

教師という漠然とした目標を持って参加した青年海外協力隊。しかし、派遣先のガーナで知的障がいのある子どもに出会ったことで、ベクトルは大きく変わった。松本光司さん(平成6年1次隊/理数科教師/ガーナ)は任期を終えて帰国後に福祉の世界に入り、現在は故郷の愛媛県で障がい児のための児童デイサービス事業所「フレンドリー」を運営。子どもの個性を大切にした療育を実践している。

協力隊として派遣されたのは、ガーナの工業高校だった。しかし受け持ったクラスには授業についていけない生徒も多かった。そこで、だれでも理解できるよう、簡単な計算式の問題を併用するなど工夫を凝らして、生徒が理解できるよう授業を行っていた。

ガーナで見た、障がい児を取り巻く環境

隊員活動を通じてカウンターパートやガーナの人々と交流を深めていく中で、一人の子どもに出会った。親しい友人の娘さんだ。その子は知的障がいを持っていた。「障がい者と身近に接したのは、それが初めてだった」と、松本さんは当時を振り返る。

「アフリカのコミュニティーには混沌とした中にも陽気さがあり、その子も、街でその日を暮している人たちに混じって、ある意味おおらかな地域社会に、『受け入れられて』いたように感じた」と松本さんは話す。そんな面がある一方で、やはり、社会福祉制度が行き届いていない途上国で障がい者が置かれている環境は厳しく、成人した障がい者の多くは路上で物乞いをしていた。その子が成人したら、こんな現実が待ち受けているのだろうか――。ガーナの状況を目の当たりにした松本さんは、障がい者支援に漠然とした関心を持って帰国した。そして、現場に飛び込んだ。

イギリスで児童福祉学を学ぶ

帰国後は、神奈川県にある知的障がい児入所施設で児童指導員として働いた。入所施設は24時間対応なので、休む間もない忙しさだった。

4年間その施設で働いた後、イギリスの大学に留学。国際児童福祉学の修士課程で学んだ。イギリスを選んだのは、地理的にアフリカに近い国だったから、そして、福祉制度の在り方が日本と似ていたというのも理由の一つだった。約1年半の留学を終えて帰国し、松本さんは再び、東京都にある知的障がい児の入所施設で働き始めた。働きながら、社会福祉士と介護支援専門員の資格を取得。その後千葉県の施設に移り、対人支援の基本を学びなおすとともにと法人経営に携わる。

青年海外協力隊から福祉の世界に入った松本さん。大きな方向転換だったが、イギリスから帰国した後、国際協力の道に進もうと考えていた時期があった。国際協力機構(JICA)の開発援助に携わる若手人材の育成制度「ジュニア専門員」に挑戦した。しかし、最初のチャレンジは失敗に終わり、2度目もやはり不合格になってしまった。NGOの道に進むことも考えたが、心機一転、NPO法人の立ち上げを目指した。

長く暮らした東京都でNPO法人を立ち上げることも考えたが、そこで始める理由が見つからなかった。そこで、故郷の愛媛に帰る決心をする。

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絵本を読み聞かせをする松本さん

NPO法人の設立を念頭に置き、愛媛に帰ってから約1年半、高齢者介護施設で働いた。そして2011年3月、NPO法人Community Lifeを立ち上げ、特別なサポートが必要な障がいのある子どものためのデイサービス事業所「フレンドリー」を開所した。一人ひとりの子どもに愛情を持って接しながら、集団行動を通じて子どもたちが社会生活の「ルール」を学ぶ機会をつくるなど、障がいのある子どもたちの自立を支援する療育の場だ。

現在、3歳から小学校4年生までの子ども計15人がフレンドリーを利用している。学校に行っている子どもは放課後、土日は10時から夕方5時くらいまでの間をフレンドリーで過ごす。フレンドリーの周辺には、遊具を備えた公園や、プールや図書館を備えたコミュニティーセンターがあり、また電車・バスの便もよく、子どもたちが楽しく時間を過ごせる環境が整っている。

子どももお年寄りでも集える場をつくりたい

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NGOを通じて支援する
カンボジアの子どもたちとに

児童デイサービス事業所を運営するかたわら、松本さんは、大阪のNGOを通じてカンボジアの子ども支援にも参加している。東南アジアで独立を考えていた時期にいろいろと調べる中で、行き着いたのがカンボジアだった。

将来はそこにストリートチルドレンのためのシェルターを設立したいと考えている。そ してこれまで培ってきた自立支援を、物質的なものではなく、与えられるばかりではなく、一人ひとりに合った方法で、自分の足で歩んでいける人生に少しでも 寄与していきたい。障がい者や高齢者、そして国際協力と複合的な取り組みを進めながら、サポートが必要な人ならだれでも利用できる場所とその価値を創造していきたい。松本さんは夢を語る。

そしてもう一つ、福祉に携わる側としての思いがある。「福祉の仕事に就く人は、恵まれていないと感じることが多い。福祉も国際協力も対人支援ということでは同じなのに、国際協力の道に進む人に比べ、福祉の世界で働く人のステイタスは下に見られがち」と松本さんは指摘する。「人に対する支援については、福祉に従事する人のほうが国際協力に携わる人よりも詳しいと思う。彼らがなぜ海外で活動できないのか。日本で現場を積んだ人が、海外で活躍する場があれば、彼らの地位向上に貢献できるのではないか」。それを実現するためにも、カンボジアでの事業にもいずれは挑戦していきたい。

インタビューの最後に、高齢者福祉に携わってきた経験から、松本さんは一つの思いを吐露した。「グループホームで働いていたころ、自発的に食事をとれなくなるなどで、チューブでつながれた高齢者の姿を何度も目にした。無用な延命治療の回避は家族の判断でのみできるが、身内の死を早めることになる後ろめたさで、その決断はとても難しい。日本の高齢者介護の現場は、本人も望まないであろう痛々しい最期に立ち会うことが多い。だから、年をとっていく自分の両親には『最期はどう介護してほしいか』という意思の確認はしなければ、と考えている」。世界で最も高齢化が進む日本に暮らす私たちにとって、家族の介護は切実な問題だ。本人が望まないケアは要らない――そこに、福祉のプロとして歩んできた矜持がにじむ。

 

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