【仙台市】障がいを持った子どもたちの『放課後ケア支援』事業を行なう、谷津尚美さん(H7-1/ドミニカ共和国/養護)[2011年4月15日掲載]


谷津尚美 さん(仙台市在住)

障がいをもつ小学生などが放課後の時間を友だちや仲間と過ごす「アフタースクール ぱるけ(HPリンク)」。スペイン語で公園という意味のとおり、ぱるけを利用する子どもたちにとっては大切な遊び場であり、親御さんたちにとっては育児や仕事への安心感と子育て支援を受けられる場となる。

谷津尚美さん(H7-1/ドミニカ共和国/養護)が理事長を務めるこのNPOは、放課後ケア、児童デイサービス、ヘルプサービスを主な事業として仙台市青葉区と太白区にある計4つの事業所(施設)を運営。障がいをもつ未就学児童から成人まで、約130人が利用し、36名のスタッフとボランティアが対応する。

2011年3月11日震災発生時は、放課後の時間帯。各事業所ではスタッフが子どもを迎えに行っていたり、利用者の自宅でケアの最中であったり、あるいは子どもたちが事業所で過ごしていたりと様々であった。

地震発生~事業再開 「元の状態に戻す」大切さ


子どもたちの活動 ピンポン玉を渡すゲーム

幸い全員怪我なし――。日頃から職員と子どもたちは大地震を想定した訓練を行っていたため、冷静に落ち着いて行動できた。耐震構造の事業所も被害はなかったが、ライフラインは全て止まった。

障がい児が体育館で避難生活する困難さ、子どもから離れられず物資調達にいけない、仕事にいけない、預ける場所がないなど、多くの利用者が困っている状況に陥った。

利用者ニーズに早く応えるため谷津さんやスタッフは各事業所の安全確認やサービス再開のための準備を急ピッチで進めていく。


小学校の裏のがけ崩れ

「何かありましたら遠慮せずに各事業所までご連絡ください。お互い顔を見るまで信じて必ず元気で会いましょう! 」

通信状態が悪い地震発生後4日目。谷津さんから発信されたブログでは、少しでも利用者さんの不安を和らげるメッセージが綴られた。

3月22日、送迎車のガソリンが不足しているなど通常どおりにいかない状況ながらも事業を再開。

普段よりも少ないが、事業所に子どもたちが来ていつもの元気な声と笑顔がぱるけに戻ってきた。掲示板の貼り替えや窓ふきなど、子どもたちも協力してぱるけの完全再開に向けて頑張る姿が見られた。4月半ばには小学校の始業に合わせて県外の親戚などに避難していた子どもたちが仙台に戻り、ぱるけに来る子どもたちも通常並みの人数となり、活気が戻ってきた。

一見元気に見える子どもたちのなかには、時折「こわいよ、こわかったね」とつぶやく子や、トイレの回数が多かったり独り言が増えていたりと、避難生活の疲労やストレスがある様子が伺える。


隆起したバス停。子どもたちとよく来る
ショッピングモールがあるところ

「障がいを持った子どもたちは毎日決まった生活リズムというのもあります。火曜と木曜は『ぱるけの日』というように。何故、ぱるけに行けないのか、いつもと違う状況を理解できず、決まったことができない状態が続くと不安になったりします。親御さんはそんな子どもの変化に戸惑いながら仕事にいかねばならない。子どもたちも親御さんたちも地震前の状態に戻ることで安心感を得られることになると思います。この状況下、ぱるけの役目は早く利用者さんたちを 『元の状態に戻す』ことだと考えています」

 自分探しを経て ぱるけを設立


ドミニカ共和国の養護学校での授業
(中央:谷津さん)

福祉系の大学を卒業後、谷津さんは宮城県内の養護学校などで講師として勤務。途上国の障がい児たちのために技術を活かしたい思いで協力隊に参加し、ドミニカ共和国へ派遣された。

小さな街の養護学校に配属したものの学校自体の整備ができていない状態からスタート。教えるだけという役割しかなかった現地の職員たちの意識を変えていくため、子どもたちの問題や学校の課題を話し合う場を設けた。最初の1年は学校運営に汗を流したが、2年目からはカウンターパートと一緒に授業を組み立てる活動ができ、自立運営の基盤を築くことができた。

帰国後、再び小学校の特殊学級の講師と児童養護施設での現場仕事を続けた。前者は障がい児と関わる仕事だが「学校」という枠組みのなか。後者は子どもの「生活」に関わる仕事。職場と子どもの対象を変え、障がい児に携わりたい強い意志を再確認しながらも、どこか違和感が抜けず自分探しの日々が続いた。そんななか着眼点を変えてみた。 

「自分は学校と生活の間の第三の場所、『放課後』というところで何かお手伝いできないかと…」

宮城県で個人の研修に助成金を出す事業があり、1年間放課後ケアの事業を学ぶ研修を受け、「自分がやりたいのはこれだ!」と確信した。研修のなかで知的障がい児が通う養護学校に実態調査を行う機会があった。8割近くの子どもたちが学校から帰ると独りもしくは家族だけで過ごし、本当は友だちや仲間と楽しく一緒に過ごしたい希望が強くあるという実態がわかった。

ならばひとつ放課後ケア施設を作ろうと、谷津さんは自らぱるけを立ち上げた。

ドミニカ共和国でゼロからスタートし、仲間と一緒に作り上げていく楽しさを経験したことは、ぱるけの立ち上げにおいて不安なく挑むことができたという。

2002年、公共施設の一室を借りてスタートしたぱるけは、谷津さんと元職場の同僚の二人で始めた。2005年にはNPO法人格を取得し、今や四つの事業所で障がい児の放課後ケア活動や自宅でのケアサービスのほか、家族支援事業や学生・社会人のボランティア育成事業など幅広く行っている。運営は資金的に厳しい面があるが、公的な事業収入や利用料金収入を収入源として施設の維持とサービスの提供を継続している。

「隊員時代、課題を解決するということを日常的にやってきて、それに対する喜びとやり甲斐を感じていました。その経験がぱるけの立ち上げにすごく繋がっていると思います。ぱるけには沢山のスタッフがいますが、現地でやっていたのと同じように、自分がいなくても信頼したスタッフや仲間に任せるということを今も毎日やっています。運営の仕方ひとつにしても、人と一緒に何かをするということも隊員時代に経験したことがそのまま繋がっています」

復興のはじまり これからのぱるけ

 障がい児・者の放課後ケアは行政や学校の手が行き届かない分野として第三セクターが補完的役割を果たしている。仙台市内には障がい児向けの放課後ケア事業所が34箇所(小学生対象は24、中高生対象は10)あり、12団体が支援を行っている。市の福祉サービスとして放課後ケア事業がはじまったのは1999年。年々共働き世帯の増加など家庭経済状況の変化に伴うニーズが増え続け、現在ではキャンセル待ちの利用者も多くいるという。制度上、公平・平等の観点から利用者1名につき週2回の利用までとされ、なかには学童保育や児童館に通う障がい児童もいる。しかし、障がい児童のケアは専門的な対応が必要とされるなど、受け皿となる放課後ケア施設の数とニーズのギャップは、平常時でも埋まらない状態が続いていた。そんななかでの震災は更なるニーズへの対応が求められることになる。

4月7日夜、マグニチュード7.4の大きな余震で青葉区では震度5強の揺れに再び恐怖に襲われる。

「大きな余震が過ぎて、ぱるけに来た子どもたちのなかにはケアの途中で寝てしまったりして、いつもと違う毎日に子どもたちも疲れているんだなと感じました。でも、自分から『きのうこわかったね~』と話しかける子もいて、いつものようにぱるけのスタッフや友だちに会えるという彼らの日常リズムが戻ることが、直接心のケアとなっていることを実感します。そしてそれが、今のぱるけの使命だと思います」

3月11日からの1か月、谷津さん自身に心の動きがあった。当初は家族やスタッフや利用者など自分が守るべき人たちの安全を守ることで精一杯。同時に支援が必要な子どもたちとその家族のために早く事業を再開せねばならず、苦難が続いた。しかし落ち着き始めると周りの状況と「これからのぱるけ」のことを考えられるようになった。   


ぱるけ柏木の職員会議
地震後の子どもたちや保護者の様子を共有したり
地震対応マニュアルの見直しなどを行ってい

地震直後の休業や余震の影響などで経営に対する不安もあるが、復興への長い道のりは始まったばかり。これまで以上に障がい児・者とその家族たちのサポートが益々必要とされることは間違いない。

谷津さんはぱるけの理事長を務める傍ら、同業者団体で結ぶ「放課後ケアネットワーク仙台」の代表も担い、震災後の定例会などではこうした今後の支援ニーズの掘り起こしと対応の検討を進めている。県外から来たNGO団体との情報共有やグループ結成もはじまり、専門性を活かしたニーズ調査も開始されている。

「この震災で私たちはたくさんの経験をしました。子どもたちも一緒で『いつもと違う毎日』を経験しています。大変だけれど、今回の経験が私たちに新たな力をつけてくれている。そう考えています」

関連リンク

ぱるけのブログ http://blog.canpan.info/npoparukeblog  
特定非営利活動法人 アフタースクールぱるけ http://homepage2.nifty.com/paruke/  
CANPAN 団体詳細 https://canpan.info/open/dantai/00002505/dantai_detail.html

 

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