【野球特集】白球の力を信じて~野球を通した人づくり~ (香川県、愛媛県、スリランカ)[2010年9月1日掲載]

【野球特集】白球の力を信じて ~野球を通した人づくり~

協力隊スポーツ分野での派遣数(累計)は約2,700名、なかでも野球では143名が25カ国に派遣されている。他の職種で派遣された隊員のなかにも、学生時代での野球経験を活かし、地域活動や日本文化紹介として野球をとりいれた隊員も多い。現地での経験を帰国後に様々な場所で野球に携わる帰国隊員もいる。

今回は国内外で野球に関わる協力隊のエピソードを3本立てでご紹介。キーワードは“甲子園” “地域活性化” “国造りの担い手”、これらに共通するのは「野球を通した人づくり」。

それぞれの現場において見られる野球のちから、スポーツがもつ教育的要素や地域社会への貢献を知る三つのエピソードです。

Part 1 キャラバンで出会った名将と球児たち~甲子園出場 英明高校 (香川県高松市)~

昨年度までJOCAは協力隊応募促進活動として約1年半かけて全国キャラバンを行った。2009年1月キャラバン隊一行は、鎌田都志夫OB(昭和58年2次隊/理数科教師/ネパール)が勤務する英明高校を訪問。野球部員たちに協力隊の話をしたところ「20歳になったら行ってみたい」と意欲を示す球児たちもいた。

写真
英明高校野球部員とキャラバンカー

未来の協力隊予備軍は今夏、甲子園出場を果たした。

監督の香川智彦さんも部長の柳生健太さんも、1995年に観音寺中央高校が、春の選抜大会で初出場・初優勝の偉業を成し遂げた当時の野球部長であった長谷川進OB(平成2年度1次隊/中国/経済)とは元同僚であり、協力隊に関する理解もある。(ちなみに、香川県大会の決勝戦で英明高校と対戦した観音寺中央高校の監督はその優勝チームのキャプテンであった。)

英明高校野球部は創部6年目にして甲子園出場の快挙。強豪校と違い後援会は無く、広いグランドがあるわけでもない、ゼロからのチーム作りと選手育成であったそうだ。その流儀を香川監督に尋ねてみると謙虚にも、「普通のことを教えてきただけです。どこの国にいってもきちんと挨拶ができる、当たり前のことができる常識人になるよう指導しています・・・」

県大会優勝の瞬間、球児たちは派手に歓喜することなく謙虚な態度で相手を称えたという。勝ち組・負け組と勝利至上の風潮が漂う世の中。本当に強い人間とはやさしさと思いやりを持っていることを球児たちが示してくれた。野球を通して人づくりに徹する名将の『教え』に学ぶ出会いであった。

Part 2.県民球団で地域活性化~愛媛マンダリンパイレーツ 球団マネージャー 小澤直義OB~

プロ野球を目指す若手選手達の育成と共に、愛媛の県民球団として地域社会の活性化を目指す愛媛マンダリンパイレーツ。四国・九州アイランドリーグに属するチームのマネージャーとして小澤直義さん(平成14年度1次隊/ジンバブエ/野球)が活躍している。

小澤さんは新潟県出身。ジンバブエから帰国後、野球に携わる仕事を求め愛媛に来た。球団職員になって5年目。選手・チーム管理、試合運営、広報、企画など業務は多岐に渡る。職員4名のほかに自治体職員の出向やボランティアスタッフも運営に携わる、まさに県民総出体制の球団経営だ。

この地域密着型球団の特徴は、年間約180回にもおよぶ地域活動やイベントの開催を行っていること。地域活動の企画・営業は協力隊経験をフルに活かす小澤さんの得意分野でもある。

子どもの野球教室はもちろんのこと、下校指導、文化祭参加、特産品イベントなどなど、シーズンオン・オフ関わらず選手が県民と一緒に活動する。なかでもユニークなのは企業朝礼の参加。選手が企業社員の前で自己紹介をする。若手選手の多くは社会経験がないため、こうした活動を通じて社会人として“人と接する訓練” を行う。

いずれはセカンドキャリアを歩むことになる選手のために、球団は“社会人育成” を大切な取組みとしている。球場の外で選手が地域社会の一員として認めてもらうことは、県民に必要とされ地域社会に貢献するチームの実現に繋がる。

「生きた地域社会に選手ひとり一人が直接関わることで、地域の方々が身近に感じるチームとなり、イメージアップとなり、ファンが増え、球団も地域も活性化していく。このサイクル作りはジンバブエでの経験を活かしていると思います」

四国・九州アイランドリーグの知名度が上がり、発足6年目を迎えるチームも地域に根付きはじめている。しかしながら観客はまだ多いとは言えず、球団経営も厳しい状況が続いている。本拠地は松山市の坊っちゃんスタジアムだが、多くの県民の方々に足を運んでもらうため県内各地の球場を試合会場にする工夫を凝らす。開催球場のスタッフには地元の方々や自治体職員も協力し、球団は地域活動という形で還元する。

愛媛マンダリンパイレーツは現在リーグ2位。県民球団の優勝争いに注目したい。

リンク

愛媛マンダリンパイレーツ公式HP: http://www.m-pirates.jp/
四国・九州アイランドリーグ公式HP:http://www.iblj.co.jp/

Part 3.世界大学野球 in Japan スリランカ初出場~国づくりの担い手を育てる野球  渡辺泰眞 隊員~

スリランカ代表(神宮球場にて) 去る7月に東京・横浜で開催された世界大学野球選手権にスリランカが初出場。学生代表チームの監督を務めたのは今年3月に赴任した渡辺隊員。選手たちは米国、台湾、キューバなど野球先進国の強豪と初めて対戦することとなった。結果は全敗。勝つつもりで挑んだ選手たちは現実の厳しさを思い知らされた大会であったが、決して選手たちの気持ちは打ちのめされることはなかったという。

「みんな前向きな気持ちで帰国したことが何よりの成果。世界のレベルに自分たちはかなわないと諦めた選手は誰もいなかった」               

スリランカでは大学に進学できる人は少なく、その価値は極めて高く、将来の国家を支えるエリート。なかでも野球を嗜む学生となればさらに希少な存在。彼らの行く末を願う気持ちは渡辺さんの指導方針に表れている。

「仲間にとってうけ易いボールを投げること、ゲームの展開や場面で適切な判断をする思考、野球はどんなときでも『自分さえ良ければ』という行動では成り立たない。仲間を気遣い、助け合い、ときには自分を犠牲にする。彼らが国の発展に役立つ人材になることを見据え、野球をとおして思考力や人間力を身につけられることを常に意識している」

4代目として普及から競技レベルの向上まで総合的な野球アドバイザーとして活動を続けている渡辺隊員。先輩隊員たちの積み重ねは今や5,000人とも言われるスリランカの野球人口に示されるほどその功績は大きく、学校チーム、クラブチームそれぞれ点在し、国内大会も定期的に行われ、定着基盤はできあがりつつある。

だが野球専用グランドはひとつも無い。旧英国領であったスリランカはクリケットが国民的スポーツ。代表チームもクリケット場を使って練習している現状。渡辺隊員は選手の指導をしながら、野球専用グランドの設置を関係者に働きかけ、競技インフラの改善のために努力を続けている。

スリランカで使われている野球用具はほぼ日本から送られたもの。スリランカ野球と日本人との交流の歴史は長く、日本野球連盟をはじめ先輩隊員たちも帰国後に関係者とのネットワークを築き、現在も交流が続いている。

 

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