【静岡県伊豆の国市】 自ら派遣条例を仕掛けた伊豆の国市職員、佐藤健太さん(17-2/マラウイ/青少年活動)[2010年7月1日掲載]

静岡県伊豆の国市職員の佐藤健太さん(平成17年度2次隊/マラウイ/青少年活動)が協力隊に応募した当時、伊豆の国市の地域づくりに関するハード・ソフト両方の事業を担当していた。この経験を途上国で活かし、帰国後も仕事を続けたい希望から、現職参加での協力隊を志願した。

応募締切直前ではあったが上司に参加の意思を伝えたところ、即断即決で「頑張ってこい!」と応援してくれることになった。このとき町役場(当時合併前)にはいまだ派遣法の条例は制定されておらず、佐藤さんが自ら先駆的に派遣法を導入している自治体の事例を紹介し、条例制定に働きかけた。協力隊派遣前訓練中に条例制定が完了し、見事に現職参加としてマラウイへ発つことになった。

「もし制定されていなかったら現職参加では行けなかったですね。スピード制定は理解ある方々のおかげ。合格通知が届いたときには、当時の首長を初め、職場の皆さんが喜んでくださいました。」

※派遣法: 「外国の地方公共団体の機関等に派遣される一般職の地方公務員の処遇等に関する法律(昭和62年法律第78号)」のこと。各地方公共団体で条例が整備されている地方公共団体の地方公務員は、「派遣職員」としてJICAボランティア(青年海外協力隊など)に現職参加することができる。[JICAボランティアパンフレット資料より抜粋]

市民も気になるマラウイ

マラウイでは青少年を対象にした様々な活動を展開。高卒者への職業訓練ではパソコン指導、商売のノウハウを教えた。小学生にはそろばん授業、中高生には体育の授業と、活動範囲は広い。最も印象的なのは同じマラウイの隊員仲間との分科会活動で、国内各地の学校で運動会を行ったこと。単独で行う活動でないだけに企画も内容も充実し、各地で大盛況だった。

こうした活動の体験話に加え、普段の生活のことを面白おかしく綴った『ZIKOMO(ジコモ)通信』が市の広報紙(伊豆の国市リンク)で1年間連載され(H18.6~H19.4まで)話題になった。

この通信がきっかけで市民も次第にマラウイのことを知るようになり、帰国後、とある市民が「マラウイに行ってた職員さんよね?ナントカ通信読んでたよ! このあいだニュースでマラウイ見たよ、大変みたいだね~」と、遠いアフリカの国のことを気にするようになった。

市民が途上国に派遣され、途上国のことが市民に知られる。市民参加という協力隊事業の性質として素晴らしい一面が伊豆の国市でも垣間見られた一例だ。

「経験したことを人に話さないのは罪だと思う。多くの人と経験を共有しあえば素晴らしいまちづくり、ひとづくりになると思う」

この使命感から帰国後、市内外の学校など各地でマラウイ体験談を語り続けている。

税金も相互理解から

市の職員となって10年目。現在は税務課にて固定資産税を担当。新築された住宅、工場、店舗などを評価して税額を決定する業務。電卓を叩くデスクワークのイメージが濃いが、直接所有者を訪問し税金の説明や物件についてのヒアリングなど、実際は人と接する仕事が多い。

「税金というだけで敬遠する人は多い。訪問先では好意的な人ばかりでないのが現実です。そんなときは、マラウイに赴任したときのことを思い出します。『自分は何のためにここに来たのか!』自分の活動(仕事)を理解してもらうことが、ここでも大切なことだと感じています」 

所有者を訪問するときは、単に税金を取りに来たということではなく、税金がどう使われるのかという説明を丁寧に行うことで、対立的な人と次第に友好関係となり、「取られる税金」から「活かされる税金」という意識に変わっていく。税金を取りたてるための話術ではなく、相互理解のための対話だ。苦労して建てた家や工場に対する市民感情を知っているからこそじっくりお互いの話を聞き合うことが欠かせない。

マラウイへ行く前の部署ではコミュニティづくりを振興する業務に携わっていた。当時、行政に依存する地域振興ではなく、市民が主体的に行うものを形にしていこうと、佐藤さんは地域住民のみなさんと共に『土に親しむ会』という市民グループを立ち上げた。地元の農家さんと協力し、空き農地を利用して親子一緒に野菜栽培や米作りを行い、地産地消ならぬ『自産自消』を通して食育を学ぶ。現在20家族が参加。市民同士で活動を運営し、市民同士が楽しむことがまちづくりを自立化する基礎ではないかと、こうした土に親しむ活動を通して伊豆の国市の地域振興を盛り上げている。『みんなで楽しむ』はマラウイでの活動経験で得た大切なキーワード。

伊豆は日本有数の観光地の一つだが、その伊豆の中には、熱海や修善寺などいくつもの市町と温泉地があり、伊豆の国市もその一つ。これから伊豆の国市がどうやって他の市町と差別化してオリジナルを発揮していくか。

「都市部の人が伊豆に行こう、ではなく、伊豆の国市へ行こう!と思えるような独自のものをアピールしないといけない」

佐藤さんは市の職員として、また一市民としてよく考える事柄の一つだと言う。住んでいる人が街に関心を持つことも大きな課題だと捉え、本当の意味でのまちづくり=市民自ら行うまちづくりが進んでいくことを期待している。市は従来から政策的に都市部からの新規就農者を積極的に受入れており、移住者が次第に増えている傾向にある。温泉以外の魅力が知られ始めた表れでもあるが、一方では20代から30代のファミリー層が少なく少子高齢化が悩ましい。

「地域振興やまちづくりには金財も大切だけれども、いろんな経験や知恵をもっている人材はもっと大切だと思う。やはり受け皿の問題がネックですね」

帰国隊員もいろんな経験の持ち主がいる。個々がバラバラにいるのではなく、組織的に存在をアピールすることで色んな角度からアプローチすると、こうした受け皿問題に対処できる取組みもできるのではと、協力隊大好き人間の佐藤さんはひとりのOBとして考える。

佐藤さんが最近ハマっているのは「育児」。帰宅後は6か月になる子どもに話しかけたりお風呂に入ったり、できる限りコミュニケーションを取るよう心掛けている。

「『日本は物は豊かだけど心が貧しい』という人がいますが、心の豊かさはやはり親も含め人との関わりの中で芽生えていくものだと思います。アフリカの子供たちがたくさんの人の中で育っていたように、わが子もたくさんの人に関わりながら育っていってほしいと思います。そして、いつか協力隊に参加する日がきたらうれしいですね」

ちなみに奥様も協力隊OG。派遣前訓練時代の同期でラオスに看護師隊員として派遣。お互いの国の隊員仲間が全国から佐藤邸に泊る所謂の「協力隊ドミトリー(宿泊所)」と化しているそうだ。両親、友人とも協力隊一色の環境で可愛がられる子どもさん。血筋も家柄も協力隊まっしぐら? 初めて話す言葉がマラウイ語、ラオス語、だったり・・・。

関連リンク

伊豆の国市役所ホームページ

 

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