『タブー~パキスタンの買春街で生きる女性たち』(2010年10月25日掲載)

2002年にパキスタンで出版された“Taboo! The Hidden Culture of a RedLight Area”の邦訳版が、『タブー ~パキスタンの買春街で生きる女性たち~』として、コモンズ社から出版されました。邦語には小林花OG(平成6年度3次隊/ネパール/村落開発普及員)と、小野道子OG(平成10年度1次隊/バングラデシュ/社会学)が携わっています。

本書の原著は、イスラーム教を国教とするパキスタンにおける買春街いわゆる赤線地帯を取り上げたことと衝撃的なタイトルによって、大きな評判となりました。発売以来、8年連続トップセラーで、3カ国語に翻訳され、欧米の大学では文化人類学の教材としても使われています。

パキスタンでは婚姻外の性的関係はいっさい認められていませんが、買春街があります。その存在を国内で知らない人はほとんどいないにもかかわらず、社会的にはまさに「タブー」とされ、口にすることはありません。

そのなかでもっとも有名なのが、本書の舞台であるパンジャーブ州ラホール市のシャーヒー地区です。著者のフォージア・サイード氏は、女性が単独で外出することも好まれないパキスタン社会で、周囲の人たちの反対にあいながら8年間現地調査を行い、
本書をまとめました。

パキスタンといえば、タリバンの隠れ家、テロリストの養成所、自爆テロなど負のイメージばかりが先行してしまいますが、歴史と豊かな文化があります。

著者は、芸能と売春のつながりについて歴史的な起源を理解し、なぜ売買春が始められ、存続し、タブー視されるようになったのか、理由を突き止めようとします。当初は、シャーヒー地区の人たちに受け入れてもらえないなどの苦労があったものの、信頼関係を築くことに成功し、それまで知られていなかった状況を少しずつ紐解いていくのです。

調査を行うに際しての世間の反応、代々芸能にたずさわる人びとの生活や考え、売買春に関する歴史的な背景、伝統的な売春制度が現代の買春へと変容していく様が、本書には浮き彫りにされています。多くの踊り子とその家族、音楽家などとの会話や事件をまじえ、臨場感をもって構成されており、パキスタン社会や南アジアの古典芸能についても理解できるうえ、ジェンダーの視点からも非常に興味深い洞察が得られるでしょう。

最終章のクライマックスは、著者、著者の従妹、踊り子が話し合う場面です。一般社会の女性とシャーヒー地区で売春にかかわっている女性を「硬貨の表と裏」と著者は表現し、パキスタン社会のからくりをジェンダー関係から鋭く分析していきます。

ジェンダー、パキスタン、古典芸能、エスノグラフィーに興味がある方だけでなく、一般書としても広く読んでいただける一冊です。

【著者】
フォージア・サイード
ミネソタ大学で社会学博士号を取得し、国立民俗伝統遺産研究所、国連開発計画パキスタン事務所、アクションエイドなど勤務し、現在はNGOメヘルガルの代表。パキスタン初の性的暴行や暴力によって精神的な危機状態に陥った女性を支援するシェルターを設立。反タリバン化運動にも参画し、パキスタンの社会運動家の間でもっともよく知られている活動家の一人。

書籍情報

フォージア・サイード著
太田まさこ監訳/小野道子・小出拓己・小林花 訳
A5判/376ページ
本体3900円+税
出版社:コモンズ 

▼コモンズ
http://www.commonsonline.co.jp/taboo.html

 

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