21年度<シンポジウム>アフリカ・食の旅

 ~アフリカの台所から支援を考える~

JICA地球ひろば講堂において 11月 3日(祝)、JOCAオープンカレッジが開催されました。
今回のJOCAオープンカレッジは協力隊 OBで現在アフリカの食文化や食用作物分野に精通している研究者にお集りいただき、「アフリカ・食の旅 ~アフリカの台所から支援を考える~」と題してシンポジウムを行いました。当日は学生さんの参加も多く、約 80名が先生方の発表や討論に聞き入りました。


 【コーディネーター】    東京大学   木 村 秀 雄  教授
  【 パ ネ リ ス ト 】     東京農業大学 高 根   務  教授
               東京農業大学 志和地 弘 信  教授
               日本大学   倉 内 伸 幸 准  教授

 

 

◆アフリカのイモと食文化    講師:志和地 弘信(昭和60年度3次隊/ネパール/野菜) 

講師情報:東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科教授。専門は熱帯作物学、作物生理学、農業開発。アフリカにおけるイモ類の生産性向上に関する研究やイネの生態生理についても研究を行っている。ネパールの農業開発プロジェクトおよび村落開発プロジェクトに JICA専門家として長期派遣された。

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 アジアやラテンアメリカの主食はトウモロコシ、イネ、小麦、大麦、モロコシなどの穀類だが、アフリカのサハラ以南ではトウモロコシ、モロコシ、ミレット、イネが主流。また、世界平均では食用作物のうち穀類がイモ類の 2.5倍も消費されているのに対し、アフリカではイモ類が穀類の消費を上回っている。
 イモ類の世界の全生産量のうち、ヤムイモの 98%、キャッサバの51%、タロイモの 60%がアフリカで生産されていることも特徴のひとつ。このような作物生産と消費の特徴を背景にして、広大なアフリカにはアジアとはまた異なった独自の食文化と農業の多様性がみられる。
 西アフリカから中央アフリカにかけての地域は根栽農耕文化圏と呼ばれ、ヤムイモなどのイモ類は日常の祭事にまで用いるなど多様なイモ食文化が見られる。アフリカでは1つの作物だけを作っているのではなく、4~5つの作物を組み合わせて作っている。アフリカのイモ類の消費量をみると、一番多いベナンやトーゴで年間一人当り 150-180kg消費されている。ちなみに日本人のジャガイモの年間消費量は一人当り 15kgくらい。
 芋類を搗いて臼と杵を使って餅状にしたものをフフという。形状は国によって違うが、餅状にしてシチューなどと合わせて定食で食べる。フフは指先で丸めてシチューを付けて口の奥に入れ込む。このときに噛んではいけない。噛むと行儀が悪い。重要なのはのどごし、甘みにこだわっている。
 シチューなどの煮込み料理の基本はトマト、ニンニク、タマネギ、塩。伝統的な調味料は干し魚や豆を発酵させた臭いもの(納豆と味噌の中間のようなもの)でシチューのベースにするが、最近はマギーブイヨンや味の素なども広く出回っている。また、ヤムイモを乾燥させて粉にしたインスタントものが開発されていて、アフリカの食文化にも進化がみられる。


ヤムイモ産地の卸売り(ガーナ)

 

 

◆イネ科の穀物について   講師:倉内 伸幸(平成1年2次隊/チュニジア/食用作物・稲作)

講師情報:日本大学生物資源科学部准教授。農学博士。専門は熱帯資源作物学。遺伝育種学。アジアでは熱帯野菜、アフリカではイネと雑穀類の調査・研究を行っている。また、技術協力専門家として ODA関連の仕事にも関わっている。

 

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 西アフリカのサハラ砂漠周辺では降水量が非常に少ないため、トウモロコシやイネは育たずトウジンビエが主食になる。トウジンビエは世界で一番乾燥に強い作物といわれている。乾燥地ではモロコシ、トウモロコシ、ソルガムが主食。トウモロコシを粉にしてこねて作る団子を西アフリカではトーと呼び、東アフリカではウガリやシマと呼んでいる。また、東アフリカにはシコクビエという穀物があり、これもウガリをつくるのによく利用されている。 アフリカでは穀物をつかって酒をつくることも多い。ブルキナファソではソルガムを使って一週間で作れるアルコール度の低いビールがある。ウガンダではシコクビエを使った酒があり、あまり濾過せず長いストローで吸って飲む。 セネガルの沿岸部では白いご飯にシチューを掛けて食べる料理や、魚のだしをベースに一緒に煮込む料理がある。アフリカのイネ栽培は、灌漑設備が不十分なため雨期に雨が降った場所でイネを栽培する天水田という方法をとっている。そのためイネの生育もまばらで生産量も低い。
 ところが最近、アフリカで米の消費量が急上昇。全消費量の 1/3はパキスタンなどから輸入している。理由は味がいいことと、穀物のように粉にしなくても食べられる手軽さ。東アフリカで Nネ リ カERICA( New Ricefor Africaの頭文字をとった造語)米が生産量を上げている。これはアフリカ原産のイネとアジア原産のイネを掛け合わせて作った新しい品種。
今後、国内生産量を増やしアフリカで自給できれば好ましい。

 

ヤッサ
セネガルのコメ料理①           ヤッサ (Yassa)

チェブジェン
セネガルのコメ料理②           チェブジェン(Chebu jen)

ブルキナファソ
ブルキナファソのモロコシビール

  

◆ガーナのカカオ生産農民   講師:高根 務(昭和61年度1次隊/ガーナ/村落開発普及員) 

講師情報:東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科教授。農学博士。研究テーマはアフリカ地域における小農の生計戦略。ガーナ、マラウイ、ザンビア等で、経済・流通の視点からアフリカの経済問題に取り組む。著書に「ガーナのココア生産農民」。

 

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 ガーナのカカオ生産量は世界第2位。高品質の豆でチョコレートやココアドリンクに最適と言われ、日本のカカオ輸入の79%がガーナ産(2007年)である。
 カカオ生産に関する間違った情報がマスコミなどから発信されて、誤解されていることが多い。たとえば、大規模プランテーションで貧しい人達が強制的にカカオを作っているというのは誤解で、実際のカカオ農家は家族単位の小規模経営が多い。また、森林破壊や焼き畑的な開墾というのも誤解。森林の中の小さな木だけを切り、大きな森林が残った状態でその下のほうにカカオ畑を作る。料理用のバナナ、タロイモなど食用作物を先に植えて、そのあと根本にカカオの苗木を植えている。 輸出用の作物を作っていると自分たちの食べる作物を作れなくなり、食料不足で困るというのも誤解。

 


■ 10~ 20年目のカカオ畑

 カカオと食用作物は同じ畑に植える。2年目になると下に植えられたカカオが小さな木に成長、3年目では食用作物の収穫が終わりカカオの木だけが残り、実がつく。 カカオは早い物で5年、多くは10年目くらいから実をたくさん付け始める。そして手入れがよければ40年間くらい収穫がある。農民が若いうちはカカオからの現金収入はないが、畑を広げていって、当時若者だった農民が30代、40代で子どもの教育費がかかるようになると、このカカオの収穫によってまかなうことができる。
輸出作物と食用作物は排他的な関係にあるとよく言われているが、そうではなくて、相互補完的な関係である。アフリカ支援をやる人は、メディアに惑わされずにきちんと正しい実態を知ることから始めてほしい。

 

 

◆ディスカッション    ディスカッション:木村 秀雄(昭和53年度1次隊/ボリビア/文化人類学)

コーディネーター情報:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部副研究科長・副学部長、ラテンアメリカ人類学専攻。(社 )青年海外協力協会理事。中央アンデス山岳地帯とアマゾニア熱帯林地域を対象に先住民共同体と地域社会や国家との相互関係について研究を続ける傍ら、「国際協力におけるボランティア事業の有効性の検証」(ガーナ)等国際協力の在り方について研究を進める。

 

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木村:アフリカ原産の在来品種と外国から入ってきた作物を現地の人々はどのように選んで栽培するようになったのか。

高根:明日飢える地域か否かで大きく違う。今期の農業生産でどのくらい収量があるかがわからないという中で、雨や気候が変動したときにどれくらい収穫できるか、できるだけリスクが少ないものを農民は選びたい。我々の感覚で、できるだけ収量の高い品種がいいと押しつけるのではなく、それもひとつの選択肢として勧めてみる。彼らが試してみようと思えば少しやってみるという形で栽培がはじまった。

倉内:品種の導入や選択というのは、アフリカの中では気象条件によって違う。雨の多い地域ならいろいろな可能性があるが、サヘル地域ではリスクは負えない。 条件のいい場所に住み導入に意欲的な農家は情報を得るのが早い。講習会に出たりして新しい品種をいち早く取り入れ、より付加価値の高いうちに売る。ネリカ米を導入する手法のひとつとして、全部で17品種あるうち、畑で栽培する7品種を見せて農家の人に選んでもらう。支援する側からこれがいいと押しつけても現地の人は受け付けない。

志和地:どういう作物がアフリカに適していて成功してきたかという歴史を考えて援助の実行に移さなければいけない。南米原産のキャッサバはもともと青酸の毒をもつ。傷が付くと酵素が働いて青酸をつくる。これは動物に食べられないようにするための自己防衛本能なのだが、人間にとってはリスクがある。東南アジアでもキャッサバは作られているが、タピオカデンプンをとるためだけで、主食用にはなっていない。アフリカには野生のイモ類などを毒消しする技術がかなりあると考えられている。中央アジアからサバンナにかけて、イモ食文化圏には毒消しの技術がある。そういうのと合致して導入できる。また、例えばナイジェリアではお米は籾のまま一度ゆでてから乾燥させて食べるという習慣がある。適合できる米の品種を導入しないとその地域ではうまくいかない。現場の状況を知ることが一番大切。

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木村:現地の農民たちはリスクを分散して全滅させないようにしているため、現場で見てみると非常に効率が悪いことがたくさんある。外部からくる開発計画と現場の状況をどう考えていくか。

高根:単年度で結果を求めようとしないこと。農業なんて1年で1回のサイクル、2年のプロジェクトで結果を出すのはだめ。5-10年のスパンで、長期的な視点でゆっくりじっくり確実に。

志和地:相手の国の食文化を大切にしてほしい。欧米ではイモ類といえばジャガイモであり、ジャガイモの研究者はたくさんいるがヤムイモの研究者はいない。キャッサバの研究者は旧統治国にはたくさんいる。タロイモ、ヤムイモの研究、栽培のノウハウを持っているのは日本や中国、台湾、フィリピンにたくさんいる。私たちアジア人の方がアフリカの根菜の食文化にアイディアを提供することができるのでは?

倉内:結果を出すには長い時間がかかると思う。ネリカを利用してアフリカの生産量を10年間で 2倍にするという目標を掲げているが、現地の専門家に伺うとそんなに焦らない方がいいと言われる。日本人研究者は、現地の人と一緒になって協働でやることが欧米の研究者たちとの大きな違い。ただし不得意分野は進めないほうがいい。フランスやイギリスのようにアフリカとのかかわりが 300年以上あるわけではないので、知識や蓄積が少ない。それほど焦らずやる。アフリカ起源の作物のように日本で経験のないものに手をだすことは非常に危険。それなら南南協力のように、中間国の人達に協力してもらうという技術協力もある。

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木村:現在、大学で研究している協力隊のOB・OGは100人、また日本の大学院にいるのは500人くらい。そのほかの研究機関にもたくさんおり、研究職の協力隊OBたちの力を社会に発信していきたいと思っているので、今後ともご協力をよろしくお願いします。

 

 

 

 

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