協力隊で成長した青年の姿を伝えたい~『クロスロード』完成披露試写会リポート(2015年11月16日開催)

11月16日、映画『クロスロード』の完成披露試写会(主催=東京新聞シネマ夢倶楽部)が都内で開催されました。会場となった740人収容のニッショーホールは満席。すずきじゅんいち監督と、フィリピンに派遣される青年海外協力隊員、沢田樹役を演じた黒木啓司さん、羽村和也役を演じた渡辺大さんが舞台挨拶に立ち、撮影時のエピソードや作品への思いを語りました。

中盤に、青年海外協力隊OGであり、『告白』『絶唱』などの作品で知られるベストセラー作家、湊かなえさんが登場し、自身の協力隊員時代の活動や経験を紹介されました。後半には小池百合子衆議院議員が駆け付け、応援のメッセージを寄せてくださいました。そして明かされた、小池議員と青年海外協力隊の意外な接点とは――。

この日の模様は多くのメディアで紹介されましたが、当協会サイトでは、舞台挨拶「ほぼ完全再録」をお伝えします。

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(左より)湊かなえさん、渡辺大さん、黒木啓司さん、小池百合子議員、すずきじゅんいち監督

舞台挨拶Q&A

―今回演じた役はどのような役でしたか。また、ご自身と重なる点はありましたか。

黒木さん:ボランティアに対してあまりよく思っておらず、渡辺大さんと対立する役で。映画を見ていただければ分かりますが、沢田樹の成長物語です。

渡辺さん:沢田と羽村は協力隊員同士ですが、参加した目的や志が違うベクトルに向いているので、ボランティアに尽力する羽村に対して、乗り気じゃない沢田が、温度差の違いで小競り合いをして。任地のフィリピンでもいろいろあって、という役です。

―すずき監督、二人を演出していかがでしたか。

すずき監督:二人は二枚目ですが、非常にまじめで信頼がおけました。渡辺さんは昔からの俳優さんで、黒木さんは演技を始められたのは最近ですが、日々良くなっていきました。映画をご覧いただくと、良くなっていくのが分かり、後半になると、黒木さんの魅力が目に焼き付けられ、最後に「良かった」と思っていただけるのではないかと思います。

―渡辺さん、ご自身と羽村が似ているところはありますか。

渡辺さん:(青年海外協力隊員として、羽村は)フィリピンに派遣され活動するものの、現地の人に心でとけ込めず、悩みます。僕は現地になじみ過ぎてしまって、芝居の時に、そういうそぶりをしなければいけない、という点が違いました。ただ、羽村の「派遣された場所できっちり仕事をしていきたい」という思いを尊重したい、僕自身もそうありたいという気持ちで羽村を演じました。

―黒木さんはいかがでしょうか。

黒木さん:沢田は、自分にも似ている部分があります。若い時には母親や父親への反抗期がありますが、年を重ねるにつれ、親のありがたみなどが分かってくるようになります。誰しもがそういった経験があるという気持ちで、沢田樹を演じました。沢田は人なつこい部分もあり、そういうところは似ているかなと思いました。

(ここで、湊かなえさんが登場)

湊さん:こんばんは、湊かなえです。青年海外協力隊風に自己紹介しますと、平成8年2次隊トンガ・家政で協力隊に行かせていただきました。

―湊さんは1996年から1998年まで2年間トンガ王国に赴任されていたそうですね。

黒木さん:今回は僕が熱烈なオファーを送り、来ていただくことができました。この作品を撮り終わった後に、あるテレビ番組で湊さんがトンガに行かれた様子を見て、「湊さんも協力隊に行かれていたんだ」と知り、一緒に映画を盛り上げていただけたらと。『告白』のファンだったので、うれしく思います。

渡辺さん:僕もその番組で湊さんのバックグラウンドを拝見し、『絶唱』も読ませていただきました。映像を先に見ていたからか、さわやかな感じがする作品に思えて、すごくいい本を読ませていただいたと思いました。

すずき監督:湊さんは協力隊に本を寄贈してくださっていると聞いています。本名で寄付されているので、湊さんだと知らない協力隊員も多いそうです。いろんなことを尽くされていらっしゃる点に、大変感謝しています。

湊さん:私が人生で一番たくさん本を読んだのは、協力隊で派遣されていた2年間だと思います。すごく日本語が恋しくて、日本語で書かれていたものは片っ端から読んで。日本にいたら好きな作家か好きなジャンルしか読まないのですが、向こうでは、昔の隊員が置いて帰った本など限られたものしかなく、とにかく片っ端から読んで、日本語の良さに気付くことができました。今、協力隊に行かれている方にも日本語の本をたくさん読んでほしいと思い、贈らせていただきました。

―ところで、トンガ王国ではどんな活動をされていたのですか。

湊さん:トンガは南太平洋の真ん中にある平らなサンゴ礁の島で山がなく、国の中で一番高い場所が海抜20メートルの丘で、サイクロンが来たら畑などがすべて海水に浸かってしまうんです。そういった時に、近隣の国、特にニュージーランドから救援物資が届くのですが、それが羊の脂身の部分で、そういうものを食べているせいで生活習慣病にかかる人が多く、問題になっていました。国民の4人に1人が生活習慣病で苦しんでいる状態だったので、学校教育の中から栄養指導をしていこうと、現地の女子高校に家庭科の教師として派遣されました。

―今回、協力隊をテーマとした映画ですが、当時、お二人のような隊員はいましたか。

湊さん:すてきな方もたくさんいらしたのですが、(訓練期間の)3か月間()、二人のような方がいたら毎日もっと楽しかったんじゃないかなと。トンガに一緒に行けていたら、(協力隊任期の)楽しい2年間が、もっと楽しい2年間になったんじゃないかと思います。一緒に訓練して、一緒に行きたかったです(笑)。

黒木さん:僕もです(笑)

※現在の派遣前訓練期間は70日に変更になっている。

―すずき監督は、隊員時代どういうお仕事で行かれていたのですか。

すずき監督:モロッコに映画監督で行っていました。最初は避妊の仕方を教える映画を作れと言われていたのですが、現地に行ったら、要請が、「母乳保育啓発」に変わりました。映画監督をやっていたので、(協力隊でも)同じような仕事をしていました。

―もうお一人、スペシャルゲストが応援に駆け付けてくださいました。衆議院議員の小池百合子さんです。映画の感想をおうかがいできますか。

小池議員:ここだけの話ですが、私、EXILEのファンなんです。東京ドームでのパフォーマンスを拝見し、「血湧き肉躍る」という感じで。

(この作品は)黒木さんが俳優で協力隊員の役割で出ていらして、自然な演技でとてもよかったと思います。私も協力隊出身の方を何人も存じ上げており、湊さんもそうですが、みなさんとても人生を豊かに過ごしておられますよね。協力隊の皆さんをもっと企業で雇ってあげればいいのに。こんな経験を重ねてきた人材は探してもいないと思うんですね。そういう意味でも、映画を拝見して、一人ひとりの協力隊員の苦労とか達成感とか、そんなことが伝わってきて、最後まであっという間でした。

すずき監督:ありがとうございます。協力隊事業はぜひ発展してほしいと思っているのですが、若い人が海外に行きたがらないようになってしまっていて。この映画を見ると、この二人が演じてくれた役柄としては、やっぱり海外に行くことで自分をもう一度見つめるという、青春の成長物語なんですね。ぜひ日本の若者がこの映画を一つの参考にして、どんどん海外に出るようになってくれるといいなと思います。

―ところで、協力隊創設者の一人である末次一郎さんは、小池さんのお父様の親友だったとうかがっています。お話をお伺いできますか。

小池議員:末次一郎さんという方は、古い言葉かもしれませんが、国士のような方で。この方が、日本健青会という組織を作られ、それが現在の協力隊の、ある種前身になっているわけです。末次さんという方は、私の別の父親のような存在で、世界を鳥の目で見て全体を掴む力、歴史から学ぶ力、いろいろなことを教えてくださいました。

末次さんという協力隊のファウンダーのお一人が、父(小池勇二郎氏)と同年齢、大正11年生まれで、父と末次さんがアラブとアフリカの旅に出るんですね。そして帰ってきて末次さんが「これこそ日本の若者たちが汗を流す場所じゃないか」と、海外への協力隊が始まったというふうに聞いております(注)。

最近は内向きになって、日本から外に出ないという若者が多いと聞いていますが、海外では、答えのないことを自分で答えを探さなくてはいけない。そういう経験を重ねるということは、相手の国にとっても結果としてプラスをもたらすし、協力隊員の方にとって、得難い経験、知識につながっていって、そのことがその方の人生を有意義なものにしていくと、堅く信じています。

協力隊の皆さんは、(派遣先で)一人の場合が多いですよね。そうすると、自分で結論を出さなければならないわけです。今回の映画でもそんなシーンがたくさんあったと思いますが、もっと多くの若い人たちが青年海外協力隊として外に出ていい経験をされ、「日本はいい国だね」と世界に知らしめていくことにつながればと思っています。

(注)日本政府は昭和39年に協力隊創設にかかる調査団を派遣したが、末次氏と小池氏はその前にアフリカを訪れ、調査を行なった。

―最後に代表して黒木さんから一言皆さんにメッセージをお願いします。

黒木さん:今回は青年海外協力隊50周年事業の映画で主演をやらせていただきました。初主演ということで、スタッフや出演者の方々に見守っていただきました。これを機に、たくさんの方々に青年海外協力隊を知っていただき、ボランティアの素晴らしさを伝えていきたいと思うので、これからも応援よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

映画上映開始後、メディア向け囲み取材

―舞台挨拶前に、(青年海外協力隊のOB組織である)青年海外協力協会から感謝状を受け取られたと聞きました。

黒木さん:青年海外協力隊というと、ポスターくらいしか知らなかったのですが、実際にフィリピンに行ってみて、協力隊OBの方と話して、こんな素晴らしいことをやっていたのだと気づかせてもらいました。こういうことができるのは、日本人の優しさや繊細さがあるからだと、もっと若い人に伝えていきたいと思いました。今日感謝状をいただき、もっと協力できればという気持ちです。

渡辺さん:ああやって賞状をいただいたのは、中学校の卒業式以来で緊張しました。いろいろな映画がある中、この映画が持つ意味はすごく大きくて、今年協力隊が50周年ということもあり、今までに歴史をつくってきた隊員の方々がいたからこそできた映画という重みが、感謝状の中にあります。僕自身もこれで終わりということではなく、これからも(協力隊を)広めていくようにがんばっていきたいと思います。 

―映画をご覧になる方に向けてメッセージをお願いします。

渡辺さん:青年海外協力隊の映画でもありますが、それだけではなく、そこに携わる人間模様が交錯するという意味で、「クロスロード」というタイトルが付けられていますので、人間ドラマとして見ていただきたい。日本は島国で海外とは距離があり、触れ合う機会も少ないと思いますが、これを機に映像でフィリピンを見て、青年海外協力隊や、海外に行くきっかけになったらと思います。ぜひご覧ください。

黒木さん:初主演ということで余裕がなかったのですが、一生懸命演技しました。協力隊やボランティアの素晴らしさが伝わり、僕らEXILEも日本を元気にというテーマで支援している東日本大震災の早い復興につながれば、という思いでやらせていただきました。演技はまだまだかもしれませんが、温かく見守っていただければと思います。

すずき監督:この映画を見た人に感想を聞くと、俳優さんが本当にリアルでよかった、協力隊員のリアリティが出ていてよかった、と言われました。フィリピンの俳優さんがとてもいいんですね。実にリアルにいい芝居をなさって、それが日本の俳優さんにも伝わってよかったのではないかと。フィリピンの俳優さんの演技に注目して見るのも面白いのではないかと思います。

黒木さん:フィリピンに行ったとき、マニラで協力隊の連絡所を見せていただいたり、協力隊OBの人に話を聞いたり。時間があったので、スラムを自分の足で見に行きました。格差社会というか、マニラは東京でいうと銀座のような場所なのですが、10分くらい離れると、裸足で歩いている人がいたり、子どもがお金を無心してきたり、道路で親子が寝ていたり。その中で一番ショックを受けたのが、お母さんが真っ黒い服を着て寝ていて、その隣に、真っ黒な裸の赤ちゃんが寝ていて。実際に目で見ると本当に違うなと。役者さんってリアルに役づくりをすることは、こういうことなんだと気づいたこともあったし、フィリピンの事情を僕ら日本人で少しでも改善できたらという気にもなりました。いろいろなことをリアルに感じられた2週間でした。

すずき:追加したいことがあります。フィリピンでのコーディネーターを務めた反町眞理子さんがいなかったら、(撮影は)うまくいかなかったかもしれません。彼女がフィリピンの俳優さんやスタッフを手配してくれました。影の功労者として挙げたいと思います。

青年海外協力隊創設50周年記念事業 映画『クロスロード-Crossroads』

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