#03 スポーツドラマと文化遺産~すずき監督の新作映画(2015年3月24日掲載)

映画『クロスロード』のすずきじゅんいち監督の最新作を見た。監督は昨年、立て続けに二本のドキュメンタリー映画を撮っている。『宮古島トライアスロン』(90分)と『和食ドリーム』(107分)。どちらも、東京ではテアトル新宿で4月11日から公開。その後、順次地方公開となる。 

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映画『宮古島トライアスロン』より © film voice inc. 

 

『宮古島~』は、昨年4月20日に行われたトライアスロンとそれに参加する人たちの人間ドラマをとらえている。トライアスロンについては漠然とした知識しかなかったが、映画を見て、こんなに過酷なレースであったかと驚いた。

同大会は3キロの水泳を皮切りに、自転車155キロの後、42.195キロを走り抜ける。制限時間は13時間と30分なのだが、間に合わない人も、途中で挫折する人も多い。そんな苦しいレースによく参加するものだと思うが、出場できるのは1700人程度のところ3000人を超える応募者がいるという。もっと驚くのは、そんな大会が日本国内で年間280もが催され、宮古島では30年も続いているというのだ。人間とはなんと不思議な動物なのかと思ってしまった。

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映画『和食ドリーム』より © film voice inc.

 

『和食~』は、打って変わって落ち着いた世界。『宮古島~』が体育会系映画だとすれば、こちらは文化系だ。ご存じの通り、和食はユネスコ無形文化遺産に登録されたが、映画を見れば、その背景に和食の普及に人生を賭けた人たちがいたのだと分かる。

その代表が、米国ロサンゼルスに住む金井紀年さん(91歳)。金井さんは、生魚を食べる習慣のなかった米国に「にぎり寿司」を持ち込み、寿司ブームを作った立役者。いいネタが全米に流通しなければ和食文化は育たないという信念で共同貿易という会社を立ち上げ、日本食レストランや食品店に材料を卸したり、普及活動に努めたりしている。その他、ビバリーヒルズの名店「Matsuhisa」のオーナーシェフ松久信幸さん、日本の「銀座久兵衛」三代目の今田景久さんなど名だたる日本食の料理人や日本食の研究者など、次々と登場し、インタビューに応える。この映画を観れば、あなたも“日本食評論家”になれるかもしれない。中身が濃い映画だ。

監督は「約200時間の取材映像を2時間弱の映画にまとめるのは、どれも貴重な話だけに頭を悩ませた。一人でも多くの方に見ていただき、和食のすばらしさ、奥深さを知って欲しい」と語っている。

それにしても、すずき監督は守備範囲が広い。ドキュメンタリーを撮ったと思ったら、今度は劇映画『クロスロード』。監督は東大を卒業し日活に就職。男女の愛憎も撮れば堅い作品も手がける。ヒット作の中に『マリリンに逢いたい』という、犬が主人公の作品もある。一昨年は、日系アメリカ人の歴史を綴った日米合作三部作映画『東洋宮武が覗いた時代』『442 日系部隊』『二つの祖国で』で山路ふみ子賞文化賞、日本映画批評家大賞などを受賞している。愛憎ドラマからペット、日系人の歴史とキャパは広い。『クロスロード』で協力隊をどのように描くか楽しみだ。

エグゼクティブ・プロデューサー  吉岡逸夫(昭和47年1次隊/エチオピア/映像)

(・・・次回に続く)

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関連リンク

映画『宮古島トライアストン』 

映画『和食ドリーム』

 

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