Vol.5:久保貴史
協力隊時代 任地の様子~シリアの空~

溶接講習会にて
赴任時期は乾季であった為、「雲など全く無い鮮やかな快晴の空」がシリアの第一印象であり、空好きな自分としては今でも色濃く「あの空色」が心に残っている。また「中東の火薬庫」と呼ばれるなど、非常に危険なイメージを抱きつつ赴任したが、実際は「とても平和である」という印象である。真夜中に出歩く事も可能なくらい治安は良く、シリア人も人なつっこく親切でかなり親日的であった。
物価は日本の約10分の1と安く、食料に不自由することも無く、イスラムの国とはいえ豚肉や酒類も入手可能であった。特に野菜や果物については、見かけはあまり良くないものの、豊富な種類と旬の味が楽しめる生命感溢れた力強いものであった。
隊員活動~自己採点 合格点!~

溶接講習会(実技)の様子
私の配属先はシリアの首都ダマスカスにある工業省工業試験所であり、要請内容は、「シリア溶接士育成計画」の立ち上げであった。赴任当初から、「この計画は全て君に任せる」という事であり、非常にやりがいのあるものであった。溶接機器以外の必要品が全く何もないところからのスタートであったが、内部向け2回、外部向け3回の計5回の溶接講習会を実施する事が出来たので、要請に対して言えば100点である。
しかし、活動が終わり冷静に振り返ってみると、溶接講習会5回と言わず、もっと出来たのではないかとも思う。最終的な自己採点としては、今後への挑戦の意味も込め100点とは言わず合格点としたい。
帰国後の進路~学問の道~

鳥取大学生と共にシリアの
国際乾燥地域研究センターにて
協力隊活動終了後の燃え尽き症候群にならないように、任期中から既に次の目標を考えていた。それは、帰国後は大学に入り勉強してみようという事である。こう考えられるようになったのも、協力隊に参加して、非常に多くの仲間と出会うことが出来たからである。
彼らはみな専門技術を持ち、優秀で情熱に溢れ、幅広い知識も備えていた。大学で学ぶということがどれほどのものなのか、それを知るためにも、そして彼らと対等に語り合えるように大学で学んでみたく思った。進路の選択肢として興味のあるものは3つあった。1つめは、溶接に関して更に専門的に勉強すること。2つめは、シリアで覚えたアラビア語をより深く勉強すること。3つめは、乾燥地農学を学ぶことである。溶接に携わっていて思ったのは、溶接技術は直接的に人の生き死にには影響しない。直接的に影響するの食料である。そこで、シリアで肌で感じた広大な乾燥地の有効利用の可能性に興味を持ったのである。そして社会人入試を経て、アラビア語と農学の道が開かれた。アラビア語は2年、農学は4年だったので、まずは時間のかかる農学を学ぶ事を選択した。
活動について~専門性を高める~
以前より関心があったが、大学で学ぶ中で更にマネージメントに強く魅かれ、当初の乾燥地農学との選択を熟考した結果、食料経済学を専攻することと決めた。協力隊時代には、「熱意で人を動かす事」を体験できたので、次は「お金・数字で人を動かす事」を学びたく思った。
現在は伊東研究室(伊東 正一教授)にお世話になり、やる気のある学生や留学生も多いので日々刺激を受ける良い場所となっている。これからは「世界の穀物食料」について学び研究していく。
嬉しかったこと~新しい出会い~
大学に入り、「多くの仲間と多くの人に出会うことが出来た」これが1番嬉しかったことである。当初は、年齢差もあるので、現役で来ている学生の仲間が誰一人出来なくても、4年間一人であろうとも卒業する覚悟で入学した。実際は、とても有難いことに彼らに非常に仲良くしてもらっている。鳥取大学は乾燥地研究センターとも提携しており、日本では乾燥地農学で有名である。農学部に来る学生も世界を視野に入れた者が多い。それ故、協力隊経験に興味を持ってくれる学生も多く、ここでも協力隊経験が大きく役立っている。
そこで得られたこと~シリアで学んだことから~
授業や単位など特に問題なく、あとは卒論に取り組むだけというように、部活、学業、大学生活を楽しむ事が出来ている。これはひとえに、多くの友人、先生、仲間に支えられての事であり、ここでも人とのつながりの大切さを実感出来た。
「異文化理解は心の豊かさにつながる」、これは大学の授業でも学び再確認出来たことである。日本であっても、地域、世代、職種などにより異文化は存在すると日頃思っているので、シリアでの経験を活かし実践する事で、ここ鳥取でも良きネットワ-ク構築が出来ていると思う。シリアで学んだことの1つである「異文化理解」の実践は異なるものを認める事で、国や文化、世代を越え効果的であり、私に更なる心の豊かさをもたらしている。
これから・・・これが私の生きる道
協力隊参加を目指したころから、物事に対しては「不言実行」で取り組むことに決めてきた。そして、この事が今まで功を奏している。それゆえ、今後の目標なども同様にここに書くことは遠慮させてもらいたい。
ただ、人生への取り組み方としては、一度しかないものなので、自分が納得出来る生き方をしたく思う。多くの仲間や諸先輩の話によく耳をかたむけ、その上で何事にも目標を持って挑戦していきたい。そして、その目標に向かい一歩とは言わないが、半歩でも1/4歩であろうとも進むよう意識し取り組んでいきたく思っている。これから目指すものは、「揺ぎ無き自分への信頼感」の構築である。これが協力隊経験から培われた、現在考える「これが私の生きる道」である。
皆さんにひとこと!・・・
私にとって協力隊参加は、非常に多くの事を得る本当に良い機会となりました。それは、価値観や幸福論、多くの経験、自分への自信、人とのつながり、知る事の喜び、感謝されること、必要とされる事、居場所のある事の意味、など多々あります。これらは、今後の自分の人生において、大いなる財産となると確信しています。世の中には多くの自分を磨く又は確認する場所や方法はありますが、協力隊参加もその1つの良い選択肢であるという事を伝えたく思います。
「協力隊時代にみつけてきたもの」を素直に受けいれて、大切に今の場所で活かす。そして自分にきびしく、何事にも目標をもって進む。久保さん、お忙しい中でのご協力どうもありがとうございました。今後の活動も応援しております!





