物乞い(加藤 亮 H9年度1次隊/エチオピア/植林)

朝からイライラしていた。首都に上がってから毎日、人のいるところに行けば「チャイナ」口撃にあい、精神的にぐったりしていた。今日のはひどく、つばをかけてきた人がいた。私のイライラは頂点に達していた。

その時、脇から垢だらけの手を出して「お腹がすいた」と物乞いが寄ってきた。10歳くらいあるいはもう少し小さかったかもしれない。しばらく無視すると今度は服を引っ張ってきた。「チャイナ」、「エチオピア人のつば攻撃」、「垢だらけの手」この時なにかがブチっと切れてしまった。「うるさい!俺だってお腹がすいてるんだ。どっかいけ」と嫌悪感たっぷりに現地語で言った。すると物乞いはすごすごと引き下がった。「せいせいした、うるさいんだよまったく」と。まだ憤慨し、道路を渡るためにしばらく車の流れを見ていると、また、垢だらけの手が私の腰のあたりを触った。一気に頭に血が上り、にらみつけると、垢だらけの手にはパンが握られており、それを差し出してきた。

私は、びっくりして、パンを受け取り、それから、猛烈に後悔をした。なにもあの子は好きで物乞いをしているわけでもないのに。いろいろなイライラをあの子にぶつけてしまった自分が恥ずかしく、惨めだった。

物乞いの少年は貧乏で、汚いけど、穏やかで、やさしかった。無愛想で攻撃的な東洋人がお腹がすいていると知って自分のなけなしのパンを分けてくれたのだ。

 

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