ダラダラでの赤ちゃん(高木 史幸 H13年度2次隊/タンザニア/村落開発普及員)

「ダラダラ」という小型の乗り合いバスの話です。

今では中型30人乗りのバスが標準となっていますが、当時はハイエースなどのワンボックス車を改造したものが主流でした。
中古ですが、日本車は大人気です。
ダルエスサラーム市内のダラダラは、行き先ごとに色分けされた線が車体前面から側面に入れてあって、緑・紫・赤・水色など分かりやすくなっています。
さながらこれは山手線、これは半蔵門線などといった具合です。
そして今も以前も変わらないのは、運転が超乱暴、車の限界までスピードを出す、車内音楽がうるさい、車掌はいつも無愛想、に加えて、乗せられるだけお客を乗せるということです。
この乗せられるだけ、というのは、日本のラッシュアワーの混みように匹敵するものがあります。

そのぎゅうぎゅう詰めのダラダラに乗っていたところ、途中で赤ちゃんを連れたお母さんが乗ってきました。
カンガというおぶい布を使って、前に抱えています。
お母さんはなんとか車内に入ることができましたが、入口付近でかろうじて手すりにつかまっているという具合で、何とも不安定な状態です。
車内は二人に注目します。
全員がはらはらしているのですが、立っている人はもちろん、座っている人も自分の上に立っている人がかぶさってくるので、身動きができません。
皆、自分が倒れないようにするだけで精いっぱいです。
その時、一人の座っていたおばさんが、自分の上にかぶさっている人を押しのけ、大声で「ちょっと、赤ちゃん渡しなさいよ!」と呼びかけました。
びゅんびゅん飛ばしている車内でお母さんは何とかおぶい布をはずし、隣の人へ赤ちゃんを渡し、隣の人はまたその隣の人へ渡し、そしておばさんの手元に届きました。
そしておばさんはしっかりと赤ちゃんを抱えました。お母さんも、車内のほかの乗客も一様にほっとしていました。

みんな全くの見ず知らずの関係でありながら、何か車内に一体感が漂っていました。
私は、この一体感がアフリカなんだな、これがアフリカの優しさであり、強さなんだなと思いました。
私がアフリカに求めていたものの一つが、まさにこの出来事にあるような気がしまし
た。

後日、親しいタンザニア人の友人に、こんなことに感動したと、この話をしたところ、彼はこう言っていました。
「タンザニアでは子どもは両親だけの子どもではなく、地域の子どもとして育てられる。だからよその子どもでも、自分の子どもと同じようにかわいがるし、心配もするし、本気で怒る。子どもこそ、タンザニアの宝だ」

私は、そんなタンザニアの人々が大好きです。

 

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