宇宙人のカマド普及大作戦(中西 葉子 H19年度3次隊/マダガスカル/村落開発普及員)

2013年5月。
「君の顔!あ~カマドの人ですね!!」と私の職場に研修で来ていたマダガスカル人と出会った時のこと。初対面なのに、マダガスカル人は私の顔をすでに知っていたのです。そしてこの時私は、村人とともに開発したあのカマドがマダガスカルで広く普及していることを知ったのです。

2008 年 1 月。マダガスカル アンドラマシナ市 アンタネティベ村。
「ギャー怖い~!」「かみつかれる~!!」と泣き叫ぶ声が村中から響いてきます。私が初めて村に足を踏み入れた日、私に向けられたのはこの悲鳴でした。

外国人を見るのが初めてだった村人は、肌の色、髪の毛が違い、洋服も体型も村の人とは異なる私を人間とは認識せず「人肉を食らい、心臓を取り出す恐怖の宇宙人」と判断したのでした。

この日から、私はまず人間として見てもらうための「ヨウコ=人間アピール大作戦」を実行します。毎日毎日、たとえ泣き叫ばれても誰もいなくても、村へ行き、大声で歌いながら、子どもの時から大好きだった盆踊りやピンクレディを踊り続けました。そうすると恐る恐る子どもたちが私を取り囲みはじめます。時には30人あまりの観客が集まることもありました。そうしているうちに、「ヨウコは人肉を食べない。血も飲まないようだ」と村人の中で話されるようになりました。

リサイタルをしながら、村の様子を観察していた私は、深刻な森林破壊の現状を目のあたりにし、自分の活動を環境保全の一助となる何かにしたいと考えるようになります。往復2時間かけて拾ってきた小枝の山が一瞬にしてなくなってしまう熱効率の低い三つ石かまどを見た時、派遣前研修で紹介されていた日本各地で普及した改良カマドを思い出しました。私は改良カマドの普及を自分の活動にすることを決意します。

当時、他の村にはアメリカ人ボランティアが普及していた改良カマドがありましたが、作成には費用がかかりました。村人は余計な出費などできる状態ではありません。お金をかけずに、熱効率の高いかまどを作れないものか…。村人とともに試作と失敗を繰り返し、赴任から1年が過ぎた頃、薪の量が三分の一、調理時間は三分の二になる、作成に費用も特別な技術も材料も必要ない「いつでも、どこでも、誰にでも」作れる改良カマド、その名もカマドヨーコが出来上がったのです。カマドヨーコは、村人から村人へ次々に広まり、村の8割の家庭に設置されました。

帰国後、一本のDVDが自宅に届きました。

「ヨウコはこの村にカマドを残した。たとえヨウコがいなくてももう自分たちにはカマドを作る技術がある。カマドのおかげで浮いた時間に野菜を作ることができる。そしたらお金を得ることができるかもしれない。これまでは外国人に頼っていたけれど、自分たちでも努力していかなければならない」。そう話す村人が、カマドヨーコ普及DVDのなかで語っていました。
 

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