10月 暴走?するかんがい水路!?

「暴走?するかんがい水路!?」

写真:研修で修得した技術を実践するS氏(トマトのトンネル栽培とサツマイモのつる育苗)

豊富な取水量に満足げなグループメンバー。
 一番右がゾンベ村長

 このプロジェクトのコンセプトの一つは、「地域にある資源を有効利用する」ことです。低コスト、低投入の技術によって農民の生活改善につなげていくためです。そんな技術の中に「小規模かんがい」があります。木やアシなど、周辺で手軽に入手できる材料のみを使って堰(せき)を作り、水路によって目的の場所まで水を引きます。これまでにも水路を掘って水を引くことはしていたようですが、堰を作る技術はなかったようです。この技術によって、利用できる水量が格段に増え、栽培時期が長くなり、耕作可能な農地も拡大しました。
 その技術を完全にものにしたグループがあります。ゾンベ村、ゾンベグループ。代表は別にいますが、村長が「伝達農家」として活動しています。かんがいによってこのグループから周辺グループに与えたインパクトは大きく、村長はこれまでに依頼に応じていくつかのグループに対して研修に出向いています。


 

写真:野菜栽培の収益から 雑貨屋を始めたP氏

メンバー自慢の堰(せき)

 そのゾンベ村を歩いていると、一番高度の低いところからかなり上がった丘の斜面に水路が掘ってありました。その周りの木々は切り倒されています。「もしかしてここまで水を引く気なのだろうか?」よく見てみると既に水を引いた跡があります。村長に聞くと斜面一帯を開墾して畑にするとのこと。水路を伝ってその水源に行きました。距離は400 ~ 500 メー
トルあったでしょうか。そこでこの村長とグループメンバーがものにした技術の高さに驚きました。堰の幅は5 ~ 6 メートルはあるでしょうか。せき止められた川の水位差は約2 メートル。これを、周辺の木々とアシ、粘土のみで作っています。これだけの技術があれば村中至る所に水を流すことができると思えそうです。聞くと、かんがいによって新たに16 ヘクタールの畑を拓く計画とのこと。ちなみに、今現在かんがいを利用できている耕地面積は約3 ヘクタール。5 倍以上の面積
に水を引こうとしているのです。このグループはJOCA の活動がきっかけとなって、ある方向に走りだしているのです。こちらとしては当然いろんな不安が頭をよぎります。水量はそれだけの面積をカバーするに十分であるか?ほかの耕作地に影響は出ないか?水利をめぐって何らかの対立が生まれないか?耕地面積の拡大によってグループメンバーにとって必要以上の負担にならないか?・・・
 外部からの働きかけによってゾンベ村に起こっている変化。その変化は地域に良いことばかりでなく、場合によっては新たな問題を誘起することにもなるでしょう。大事なのは、その問題に直面したときにどのように対処するか。考えるセンスがあるか。現在グループメンバーがたどっているプロセスによって、メンバーや村長の「考えるセンス」もきっと磨かれているのではないでしょうか。

(文責:小嶋英嗣)

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