緊急アピール 青年海外協力隊事業を国家戦略とする(2009年12月発出)

2009年12月12日土曜日午後、全国の都道府県を始めとしたOB会長等が一堂に会し、「青年海外協力隊事業を国家戦略とする」と題した緊急の三つの提言を行うことを採択した。

これは、今までの青年海外協力隊事業を単に継続させるためではなく、国民参加型の国際ボランティア事業として、求められる内外の役割と期待を明確にし、日本の青年が勇気と誇りを持ってチャレンジできる目標を提言としている。

  1.  派遣規模を少なくとも倍増する
  2.  帰国隊員による我が国の地域社会再生のための国内協力隊を創設する
  3.  任国における協力隊創設を支援する事業に取り組む

私たちはこの提言を以て、当日集まった全国のOB会長等とともに、地域からの一つ一つの声として訴え、草の根レベルの国民運動として展開していくこととした。

緊急アピール 青年海外協力隊事業を国家戦略とする

1.協力隊を21世紀日本のサバイバル戦略の中で捉えなおす

米国オバマ大統領は現在約7,600名の平和部隊の派遣規模を倍増する計画を発表し、OECDのDACに加盟し本格的な援助国入りを果たした韓国もボランティアの派遣数倍増計画を明らかにしている。さらに中国もいよいよ本格的な海外ボランティア派遣に乗り出すなど、世界各国が海外ボランティアの派遣を通じた自国のソフトパワーの発揮に力を入れてきている。

このような背景のもと、我が国では、昭和40年の事業発足以来この45年間に3万人の帰国隊員が協力隊活動を通じ途上国で作り上げ、引き継いできたヒューマン・ネットワークは、隊員1人当たり少なく見積もっても100人の友人知人として80カ国300万人に上る。国際社会の中での真の日本理解と日本の対外的なイメージアップという観点からも、我が国の大きな外交的資産であり、我が国の予防外交の一翼を担っている。

2.帰国後に社会還元される参加体験

草の根での協力は、現地の人々の心情を理解し、現地社会の一員として受け入れられなければ、人々の真のニーズに合致した活動はできない。隊員は必死で現地の社会・文化に適応するための努力をすることになる。こうした異文化理解への努力の過程で、外から日本を見ることによって、隊員たちは世界を見る眼、日本を見直す眼という新しい視点を獲得し、大きく成長して帰国する。

帰国後、開発途上国での経験を生かし、国際機関や外務省、JICA, NGOのスタッフ等国際協力分野で活躍する人材も多数に上り、現在最も厳しい環境のアフリカで活躍する技術協力専門家の約半数は協力隊経験者が占めている。

また、国内においても多くの帰国隊員がそれぞれの職域や地域において日本社会の課題である国際化・多文化共生の実現や、新しい発想で、社会貢献活動、地域活性化などに積極的に取り組んでいる。このことを、一昨年来1年半をかけて1800余の全自治体を訪問した協力隊事業啓発のための全国キャラバン事業を通じ確認したところである。

協力隊事業は単なる開発途上国支援にとどまらず、わが国社会の活性化にも資する貴重な人材をはぐくむ青年育成事業なのである。

協力隊の帰国隊員は、たとえば中山間地の国土保全を担っていた小規模集落の解体等少子高齢化の急速な進行による地域社会の変質や混迷する教育などに対し、就業環境を整備すれば新しい発想で活力をもたらす可能性を持つ人材群なのである。

3.三つの提言

我が国とは気候風土も社会・歴史も全く違う異文化の中の2年間の活動は、生易しいものではない。高い志を掲げてこの事業に参加し、不慮の事故や風土病等によって帰国の日を待たずして早世した仲間は、この45年間に64名に上る。現在も約2500名が75ヶ国で活動中であり、志半ばで倒れた仲間の遺志を受け継ぐ現役隊員の地道な活動ぶりは受け入れ国から極めて高い評価を得ており、さらに多くの国が協力隊員の受け入れ希望を表明している。

こうした実情を踏まえ、今この事業が必要とするのは、事業縮減ではなく、事業の更なる拡充であり、そのための環境整備であり、ここに以下の3つの分野を拡充し強化することを提言する。

(1)  派遣規模を少なくとも倍増
前述の米国平和部隊、中国、韓国の動向に注目しつつ、青年が参加しやすい環境整備と帰国後の社会還元の場の拡充を進め、隊員の派遣規模を大胆に拡大する。

(2) 帰国隊員による我が国の地域社会再生のための国内協力隊創設
帰国隊員が中心となってボランティアを募り、崩壊しつつある中山間地において国土環境保全事業を実施し地域社会の活性化を図る。

(3) 任国における協力隊創設を支援する事業に取り組む
任国の青年との協働を通じて、自助努力への意欲を喚起し、究極的にはそれぞれの受け入れ国における国造りのための協力隊の創設を目指し、それを支援する。中核となる人材を研修員として本邦に受け入れ、②項の国内協力隊事業に参画させる。 
(上記事項の実施に当たっては既存のNGOとの連携を図り、積極的に人事交流を行い、相互の活動に寄与することとする。)

4.結び

青年海外協力隊の45年間の歴史を多面的に検証し、また現に、帰国隊員が全国各地であるいは世界を舞台に展開している社会還元活動を俯瞰した時、青年による海外協力活動の促進が、これからの我が国社会にさらに大きく貢献することを確信し、ここに決意を新たに力強い国民運動を展開することを宣言する。

平成21年12月12日

青年海外協力隊帰国隊員一同(60団体)代表  金子洋三
(社団法人青年海外協力協会会長)

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