【Vol.9】実践事例紹介:京都市立百々小学校 松本清代先生/コラム:スーパーグローバルハイスクール(SGH)の取り組みを見てみよう!

今回の事例紹介は、京都市立百々小学校(派遣当時は京都市立春日野小学校)松本清代先生です。

松本先生は2013年度の教師海外研修でブラジルを訪れ、さまざまなルーツを持つ人々と出会い、それまで取り組んでおられた開発教育への思いをますます強くされたそうです。海外研修前も、またその後も、関西各地での開発教育指導者研修等に積極的に参加され、日々研鑽に努めると共に、ブラジルの経験を活かして作られた教材を2013年度JICAグローバル教育コンクールに出品し入選するなど、教師海外研修での学びを自分のものから他の先生方にも共有しようと機会があるごとに実践報告等を行っています。

今回ご紹介する授業実践は、小学4年生を対象に「地球にやさしいチョコレートを作ろう」(総合・道徳7時間)という単元で、「“ブラジル”を通して“日本”を見る」体験をしたり、「チョコレートを通じてアマゾンの森や持続可能な社会について考える」実践です。是非リンク先をご一読下さい。

国際理解教育に対する思い

何事においても「理解」することの前提は、「みんな違ってみんないい」ということと考えている。
どのような場面においても、相手を理解しようとするためには自分について知っておく必要があり、自分のことを知るためには、たくさんの人と関わることが大切となる。

たくさんの人と関わったり、知らない世界にめぐり合ったりする中で、それまでの自分との違いを見つけ、その違いを楽しみながら、「自分自身」について意識する体験を教室でもできればと考えている。

実践事例

1. 単元名: 地球にやさしいチョコレートを作ろう

2. 対象:小学校第4学年

3. 実践科目:総合・道徳7時間

4. 実践にあたって

2013年度JICA教師海外研修に参加し、ブラジルを訪れた。渡航前は異文化を垣間見ることができたらと考えていたが、初めて降り立ったブラジルには、たくさんの「日本」があふれていた。さまざまな思いを抱いて地球の反対側に移住した人々が築き上げた日系人社会、日系人のブラジル社会での活躍、「日本人は信頼できる(Japonês Garantido)」という言葉の浸透、そして遠くブラジルで守り続けられている日本人としての心、日本の文化、道徳心。この研修を通して気付いたことは、私達が知らず知らずのうちに受け継いでいるものこそが、かけがえのない、素晴らしいものであるということであった。日本はJICAを通じてさまざまな国で国際協力を行っている。その根底にも日本に受け継がれてきたこれらの「心」が息づいていると感じている。

ブラジルに住む日系人が苦労の末に見出したのが、森を作る農業「アグロフォレストリー」である。「アグロフォレストリー」は環境にやさしい農業としても注目を集めているが、それは日系人の数知れぬ苦労や経験、そして日本と世界と繋がろうという熱い思いが生み出した農法である。

本校は国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業「伝統文化教育」の指定を受け、子どもたちは様々な取組を通して、私達の文化の尊さ、それを守り続ける大切さを日頃から体感している。この取組と本校の4年生が年間を通じて学習する「環境」とを結びつけた授業を作ることで、自尊心を育みながら地球の将来について考える機会を設けたいと考えた。

私が研修を通じて得た「“ブラジル”を通して“日本”を見る」体験を、子どもたちも教室で体験してみることで、自分たちの文化の素晴らしさや尊さに気付くと同時に、身近にある問題を広い視野でとらえることができるようになればと考え単元を構成した。

5. 単元計画(全7時間)

時間 めあて・内容(▲学習内容 △学習成果)
1 ブラジルに興味・関心をもつ

▲ブラジルの位置・言語・国旗の意味等、ブラジルに関する基礎知識を得る。
▲「ブラジル?それとも日本?」に取り組む。

△クイズを通して、日本文化がブラジルに根付いていることや日本とブラジルの歴史的な繋がり、この2か国が今も協力して国の発展を支えあっていることを知ることができた。
*この時間の学習はワールドカップ開催中に行った。

2 アマゾンの森を守る大切さについて考える

▲「ものランゲージ」に取り組む。
「アサイーの実」「カカオ豆」「コーヒー豆」「ピラルクのうろこ」を実際手に取り、アマゾンの森には数知れない動植物が生息していること、最近注目を集めている「アサイー」もその一つであることを知る。

▲アマゾンの森が減少し続けていることを知った上で、なぜアマゾンの森を守る必要があるのかについて考える。

△テレビ番組の一部を視聴することで、アマゾンの現状についての理解を深めることができた。

△アマゾンの森は失われつつあるが、その森が生み出す酸素は地球が存続する上で必要なものであることに気付くことができた。

3

森を作る農業「アグロフォレストリー」について知る

▲株式会社明治「チョコレート効果」「アグロフォレストリーチョコレート」のパッケージを見比べて、どちらにも「アグロフォレストリー」という言葉が使われていることに気付く。

▲「アグロ」は農業という言葉から、「フォレストリー」は森という言葉からくる造語であることを知り、「森」と「農業」がどのように組み合わさっているのかを考え発表する。
▲国際協力機構〔JICA〕制作の動画「アグロフォレストリー 森をつくる農業~アマゾン熱帯林との共存~」を見て、実際の取組を知る。
▲アグロフォレストリーの発案者、小長野道則さんやその農法に取り組んでいる稲田洋一さんのインタビューを見て、生産者の思いを知る。

△実際に取り組んでいる方の声に耳を傾けることで、「日本とブラジルとの繋がりを作りたい」、「世界規模で地球のことを考えていきたい」という生産者の思いに気付くことができた。

4・5 アグロフォレストリー農法で作られたカカオ豆を使った「地球にやさしいチョコレート」商品を考え、ポスターやパッケージをデザインする 

▲生産者の思いを振り返り、商品を開発した人々の願いについて考える。
▲それを踏まえたうえで、グループごとにチョコレート商品を作る。
▲できるだけたくさんの人に買ってもらえるよう工夫し、ポスターと商品のパッケージをデザインする。

6 それぞれの商品についてPRし、魅力ある商品に投票する
▲生産者のどのような思いや願いが商品に詰まっていると考えるのか、どのような思いや願いを込めて商品名を決めたのか等をPRする。
▲消費者として、買ってみようと思う商品に理由を添えて投票する。
7 今の自分,これからの自分にできることを考える
▲「持続可能な社会」「持続可能な開発」という言葉に触れ、地球環境問題は世界の人々と一緒になって考え、一緒になって取組んでいかなければならないことを知る。
▲今の自分にできる取組や、これからも続けていける取組について考え、意見交流する。
△環境問題は自分たちだけの問題ではなく、地球に住む全ての人々と共に考え、解決に向けて取組んでいかなければならないことに気付くことができた。
△地球環境を守るために自分たちにもできることがたくさんあることを知ることができた。

6. 使用教材
・「ブラジル? それとも日本?」(2013年度グローバル教育コンクール入賞作品)
・アサイーの実、カカオ豆、コーヒー豆,ピラルクの鱗
・ブラジルにて研修中に集めた日系人へのインタビュー
・株式会社明治「チョコレート効果」「アグロフォレストリーチョコレート」
・国際協力機構「アグロフォレストリー 森をつくる農業~アマゾン熱帯林との共存~」
・ブラジルに関するテレビ番組など

7. 学習成果

ワールドカップ開催国として子どもたちにとっても身近になった「ブラジル」。そこには約150万人もの日本にルーツをもつ人々(日系人)が住んでいる。地球の反対側に位置するブラジルで、自分たちと同じ文化を大切にしながら生活している人々がいることを知った子どもたちは大変驚くと同時に、私達が受け継いでいる文化や道徳心の尊さに気付くことができた。また、実際のインタビューを見たことで、日系人の方々の思いや願いも汲み取ることができ、日本人としての誇りや責任感、「人のため」を第一に考えた行動,みんなで「協力」して何かを成し遂げようとする大切さ、また「日本との繋がり」を求める人々の心の存在にも気付くことができた。

「食べたら森が増える」という魔法のようなチョコレートの仕組みを解明するために、子どもたちはあれこれ考えをめぐらしていた。子どもたちの想像力や発想に、地球の将来を真剣に考える姿を見ることができたと同時に、教育の大切さについて改めて考えさせられる時間であった。森を作る農法、「アグロフォレストリー」に子どもたちは感銘を受け、その取組をしているのが自分たちと同じ日本にルーツを持つ人々と知り、誇らしく思ったようである。また、日頃から学習している「環境」「eco」の問題が、世界の人々と一緒に考え、これから先も継続して取組んでいかなければならないものであることにも気付くことができた。4年生のうちにこの「持続可能な社会」「持続可能な開発」について意識させることができたのは、一つの成果と言える。

日本にあふれる食料の多くは世界の国々と繋がっている。また、JICAを通じて行う国際協力でも日本の高い技術は大きな成果を上げ、様々な国の発展に寄与している。世界の人々と私達が繋がっていること、そして世界中で日本にルーツを持つ人々が活躍していることを知った子どもたちが、自分たちの未来の可能性も無限に広がっていると感じていることを願っている。

8. 今後の課題

日々の生活では当たり前すぎるものこそ、守るべき必要があるということに気付かせるためにも、今回は一度外に目を向け、そして自分たちを見るという活動を取り入れた。

ブラジルに日本の文化や日本の心が息づいていることからもわかるように、私達の身の回りで受け継がれてきたものは世界からも注目を集めている。その中には「ふろしき」「扇子」にみられるように、環境保全の観点からも注目されるものが多い。このように、引き続き「環境」について学習を進める過程においても、最終的な着眼点が「日本」となる学習活動を今後も取り入れていきたいと考えている。

私達が受け継いでいる文化がかけがえのないものであることに気付く。その気付きが自分を大切にすることに繋がり、自分を大切に思う気持ちは相手を理解しようとする気持ちへ、それが互いを尊重し合い共に生きる多文化共生社会構築への一助となることを願っている。

子どもたちの学習成果物については、実際にアグロフォレストリー農法でカカオ豆を生産されている方にも画像で送付した。今後も交流を続けることができればと考えている。

日伯チョコレートカカオ豆を作っている人の住んでいる「ブラジル」と,チョコレートが売られている「日本」をつなげるチョコレートだから「日伯チョコレート」にしたよ。
【日伯チョコレート】
カカオ豆を作っている人の住んでいる「ブラジル」と,チョコレートが売られている「日本」をつなげるチョコレートだから「日伯チョコレート」にしたよ


【エコレート】
環境にやさしいチョコレートだから「エコチョコレート」にしよう。
それなら「エコレート」はどう? それいいね!
「あたり」がでたらブラジル旅行がもらえるよ。そしたらもっと買ってもらえるかな

JICAほか、支援組織の活用例

2013年8月の教師海外研修(JICA関西主催)に参加し、ブラジルから持ち帰ったものや写真等を使って授業を展開している。研修終了後も、受け持つ子どもの発達段階に合わせて持ち帰った教材を使えること、参加年度の異なる他校種や他の自治体の先生方と交流し、実践のヒントを得ながら授業を展開できることもこの研修の大きな魅力と感じている。また、JICA主催のセミナーには引き続き参加している。「国際理解」や「開発教育」に興味をもつ様々な立場の方との交流も授業づくりのヒントとなっている。

JICA発行のパンフレット(「学校に行きたい!」「ぼくら地球調査隊」等)は子どもたちが理解しやすい教材なので、授業でも活用している。

今後、チャレンジしたいこと

国際理解教育・開発教育は、道徳や総合的な学習の時間で取り組みがちだが、今後はこれら以外の教科等でも、単元の発展教材として使用できるような教材を作っていきたいと考えている。

子どもたちが一つの問題についてより広い視野でとらえること、また地球で起こっていることが少なからず自分たちにも関わりのある問題だと感じることができる学習活動を取り入れ、子ども達の自由で豊かな発想を具現化するきっかけをつくることができたら嬉しいです。

参考情報
JICAグローバル教育コンクール2013年度優秀作品/佳作:松本清代先生(JICA地球ひろばサイト)

ショートコラム スーパーグローバルハイスクール(SGH)の取り組みを見てみよう!

急速にグローバル化が進む中、グローバル・リーダーの育成が注目を集めています。

そんな中、今、ホットな話題は、「スーパーグローバルハイスクール」(略して、SGH)です。平成26年度より、文部科学省が、高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を目的とし、開始しました。

この事業のポイントは、ただ単に英語力を育成している高校をSGHとして指定したのではないということです。通常「グローバル人材の育成」と聞くと、真っ先に「英語を使いこなせる人材」が取りざたされますが、SGHにおいて英語力は一つのキーワードにすぎません。そして最終的にグローバルに活躍できる人材育成をめざす高校が選定されました。初めての試みということではありましたが、全科国から246校の応募があり、56校が指定されました。競争倍率はなんと約4倍にもなりました。

いろいろな課題研究テーマがありますが、注目すべきポイントは、「地域と学校の特性を生かすこと」、「高校・大学と企業の連携を図ること」です。後者の連携先として、JICAの各国内拠点等が関わっているところもあります。

その中でも今回は、「富山県立高岡高等学校」の取り組みを紹介します。同校の齊藤先生は、SGH校として指定されたことを生かし、外部との連携としてJICAの出前講座、青年研修教育分野コースの視察受け入れ、生徒との交流プログラムを実施しているそうです。そうした取り組みが、全体の活動の中でどのように活用されているのか聞いてみました。


研究開発構想名:「ふるさとに誇りと愛着を持ったグローバル・リーダーの育成」

Q1:なぜSGHに応募したのですか。

これまで本校では、探究科学科において課題研究と体験的・探究的な学習プログラムなどを実施してきました。これらをベースに、さらに海外へ視野を広げた充実した探究的な学習活動を行うため、国際機関やグローバル企業と連携した課題研究などを行い、幅広い教養と問題解決能力を備え、ふるさとに誇りと愛着を持ったグローバル・リーダーを育成したいと考えSGHに応募しました。

Q2:外部との連携でJICAの開発教育プログラムを多く活用されていますが、その良さを教えてください。

さまざまな業種の職業人を招き、仕事への理解を深める職業理解講座に、JICAの国際協力出前講座を活用しました。途上国の安定が世界の平和につながっていることなど、JICA職員から直接に話を聞くことで国際協力の意義を実感しました。
また、海外のグローバル人材と直接会話する機会をもちたいと考え、JICA北陸に協力を依頼したところ、理数科教育研修プログラムで富山県を訪問していたカリブ海地域の教育関係者11名との交流が実現しました。互いの国の文化紹介を通して自己発信力、実践的な英語力を高めました。

さらに夏休みの課題として、JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテストに応募しました。今年度は独立行政法人国際協力機構北陸支部長賞と青年海外協力隊富山県OB会会長賞を受賞しました。受賞者は、今後も自分のできる国際協力を続けたいと話しています。

Q3:初年度の取り組みはいかがでしたか。

これまでの学習プログラムをベースに、国連機関北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)と連携した講演会やグローバル企業で活躍する外国人とエネルギー問題などについて討論するインターネット交流体験プログラムなどを実施しました。また、課題研究の成果をアメリカのハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などで発表する海外研修を新規に実施しました。

SGH指定1年目ということで、まだまだ手探りの状態ですが、課題研究や体験的プログラム、海外研修などによって、生徒自身が課題発見し、解決していこうとする姿や、積極的に交流しようとする姿が見られました。次年度以降も「ふるさとに誇りと愛着を持ったグローバル・リーダーの育成」を目指し、日々の教育活動の改善に取り組み、生徒が高い志を持つような事業のあり方を研究開発していきたいと思います。

Q4:来年度はどのような形でJICAとの連携をお考えですか。

国際協力出前講座を活用した職業理解講座や中学生・高校生エッセイコンテストの応募はもちろん、北陸で研修するグローバル人材との交流も継続したいと考えています。

また、国際協力や国際貢献をテーマにした課題研究をすすめるために、JICA北陸や富山JICAデスクより、国際協力の現状や課題を教えてもらう機会をつくりたいと思います。


今後は高校だけでなく、小学校や中学校にもグローバル人材育成の波が押し寄せることは間違いないでしょう。今後もSGHの取り組みに注目していきたいですね。

参考資料:

スーパーグローバルハイスクールについて(文部科学省サイト)

スーパーグローバルハイスクール(SGH専用サイト)

スーパーグローバルハイスクールの取り組み(富山県立高岡高等学校サイト)

 

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