【Vol.7】実践事例紹介:愛知県海部郡蟹江町立新蟹江小学校 佐古亜希子先生/コラム:外国人からみた日本 ~異なる視点で、新たな気づき~

今回の事例紹介は、愛知県海部郡蟹江町立新蟹江小学校 佐古亜希子先生です。

佐古先生は平成25年度にJICA中部にて開発教育指導者研修を受講され、また教師海外研修にて、ガーナを訪れました。それらの研修をもとに、今年度は、6年生の総合的な学習の時間で、国際理解教育とキャリア教育に関する授業を年間を通じて展開。開発教育協会(DEAR)作成ワークショップ「もし世界が100人の村だったら」やJICA中部への訪問等に加え、企業の出前授業「届けよう、服のチカラ」プロジェクトを活用。今回は、この「届けよう、服のチカラ」を活用した佐古先生の授業をご紹介いたします。授業を通して、力を合わせる大切さや、知恵を出し合う楽しさなどを生み出し、最終的に自分の考えを伝える力や生きる力を身につけていくことをねらいとした授業実践です。

国際理解教育に対する思い

世界の国々と比べると日本はとても小さな国で、世界との交流なしでは今の豊かな生活水準を維持することができない。しかし、普段の生活で世界との繋がりを意識することなく、今の生活を当たり前として毎日過ごしている。そこで、将来を担うこどもたちにとって、同じ時代に生きる他の国のことも知ろうとする心をはぐくむ国際理解教育が必要だと考える。この新しい世界を知ることで、今の自分にどんなことができるのかを考え、行動に移す力を育てていきたい。

実践事例

実践にあたって

平成26年度の6年生79名は総合的な学習の時間に「国際理解教育」と「キャリア教育」の2本立てで学んできている。学年テーマは「繋がる~未来へ~」。

国際理解教育の年間行ってきたことは以下のようなものである。

4月  ワークショップ版「世界がもし100人の村だったら」など
5月 「ハンガーバンケット」(世界の食の格差を疑似体験するワークショップ)、 
JICA中部へ行く名古屋分散に向けて事前学習
6月 キヤノン出前授業「海外の子どもたちへ フォトグラファーズ」 
アフリカ 「ガーナ マラウイ」を知ろう(海外研修を終えた先生方の授業)
7月 ユニクロ出前授業「届けよう、服のチカラ」プロジェクト(難民の子どもたちに服を送るプロジェクト)
JICA中部訪問
8月 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトに向けての活動
9月 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトの活動
10月 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトまとめ
キヤノン「ベトナム写真交流」
11月 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトまとめ(服を送る準備)
12月 今の僕私たちにできることを考えよう(ワークショップ型授業)
1月 キヤノン「ベトナム写真交流」の返事を受けて
2月 今の僕・私たちにできることをまとめる(ワークショップ型授業)
3月 卒業式に自分の考えを発表する(一人一人の想いを一言で表せるようにする)

単元:届けよう服のチカラ 

本学年の児童は全体的に明るく比較的男女の仲が良く、一緒に諸活動を進めることができる。また、活動的で与えられた課題に取り組む児童が多いものの、中には何をどうしていいのか分からずついていくだけの活動になってしまう児童が数名いる。自分に自信をもっている児童は少ない。自分の意見をどう伝えたら、相手が動いてくれるのかということに慎重になる児童が多い。
そこで本単元では、ユニクロとのコラボ企画で「届けよう服のチカラ」の出前授業から始まる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が行っている難民問題の解決活動の一つとして、ユニクロが協力して行う、着なくなった子ども服を難民の子どもたちに送ろうという取り組みの、服を集める部分を6年生が行うことになる。

難民についての学習や服を集めることを行い、行ったことを発表するという単純な学習ではなく、自分たちの働きかけで世界の状況を少しでも動かそうという学年全体で向かっていくものにする。そのプロセスで子どもたちは力を合わせる大切さや、知恵を出し合う楽しさなどを生み出していくと考える。そこで、最終的に自分の考えを伝える力や生きる力を身につけていくことに繋げていきたい。そのために、どのように服を集めていったらいいのかを具体的に考え、実行に移す。そして体験活動後に活動内容を共有することで、自分の考えを深め、自発的に国際協力をしたいという気持ちをもつように導いていく。そして伝える方法として、ワークショップ型授業を取り入れ、自信をもって学年で取り組んだことを共有できるような手立てを考えていきたい。このような単元をとおして、企画したことを実践する場を計画的に仕組んでいき、学年全体で振り返ったり、発表しあったりする場を設定していきたい。これこそが生きる力に繋がると考える。 

単元構想

時間 活動名 活動内容(交流学年・出前授業・講師等)
1 ユニクロ出前授業

ユニクロの「届けよう、服のチカラ」プロジェクトについての説明を聞く。UNHCRが行っている難民問題について説明を聞き、自分たちができることをイメージする。
〈講師:ユニクロ社員〉

2・3 自分たちにできる「届けよう、服のチカラ」プロジェクトへの取り組み 新蟹江小学校でできるプロジェクトをどう立ち上げるのか意見をだす。自分がやりたいことを考える。
4・5 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトに向けて 個人で考えたプロジェクトを出し、仲間を探しグループを作る。個人の児童もいる。
6・7・8 「届けよう、服のチカラ」プロジェクト実践 自分たちの考えたことを実践に移し、全校・地域・家庭に広める。服を集める。
9 「届けよう、服のチカラ」プロジェクトの振り返り 活動を振り返り、何ができるようになったのか実感し、自他で認め合うことができる。
10 まとめ 9時間目に出た意見をもとにまとめをする。

 授業内容

1.出前授業

国際理解教育を進めていく中で、世界と繋がっていくことや世界へ発信していくことなど、自分達に何ができるのかということを考えられるようになってきたのが、6月頃だった。世界の貧困問題や環境問題をワークショップ型の授業で知ることから、世界の問題を自分ごととして考えていけたらいいなと思い進めていった。そして直接世界の問題と繋がる方法はないかと考え、このユニクロの「届けよう、服のチカラ」プロジェクトと出会った。これは難民の子どもたちに服を送る企画である。集めたものに関しては確実にユニクロが難民の子どもたちに届けてくれるという最終的に難しいと考えていた部分が解決される。これなら子どもたちは取り組みやすいのではないかと思い、ユニクロの出前授業を受けることになった。


予想を超えるたくさんの意見。

2.自分達にできることを考える

学年で話し合った授業の中で、「服をたくさん集めるためにはどうしたら良いのか」「難民の問題を知ってもらうためにはどうしたら良いのか」などの問題に次のような意見がどんどんでてきた。「校内放送を使って、全校児童に知ってもらおう」「地域を歩いて宣伝してこよう」「チラシを作ろう」「今まで関わった出前授業の講師に連絡をとったらどうか(新聞社さんやテレビ局)」「町内の放送を借りることができないかなあ」など教師側が予想していたものを超える意見がでた。その後、出た意見を実行するためにはどのようなことをしていったらいいのかを考えた。「チラシを作ったらそれをマンションの管理人さんを通して配ってもらおう」「子どもがいそうな家にチラシを配りたい」「直接学区のスーパーに頼んでくる」「手紙を書く」などの意見がでた。また、意見の中には出前授業でお世話になった方に話してみてはどうかというものも多く、自分達で世界を広げていきたい気持ちが伝わった。

3.想いを行動にうつす

似た意見をもったもの同士で自然とまとまっていき、実際に動き出したのは夏休みを目前にした7月中旬。夏休みこそ服をためてもらわないといけないので、チラシを配ることは早急にしたいという子どもたちからの意見に対し、チラシを作るチームは分担してチラシ作りを行った。全校に配ることで夏休みにいらなくなった子ども服を9月からすぐに持ってきてもらおうということが目的だ。しかしチームごとにまとまっていく中で、「服を集める期間は統一したいよね」「ユニクロさんが出した注意事項は統一した言い方で相手に伝えたいね」と教師側に相談にくるグループが増えていった。そこで作業途中だったが、学年集会を設け、疑問点を話し合った。期間を考える中で、「長すぎては忘れられるが短すぎても集まらない」「保護者が学校に出入りするときが合ってもいい」などの意見が出た。その話し合いの中、期間を9月1日から10月31日とした。配る広告はすべて広告グループに任せて統一した動きをしていく方向にきまり、注意事項も広告に書いていくことになった。これまでの話し合いを聞いて、何をどう動いていいのか分からなかった児童も焦りを感じていった様子だった。その中で「段ボールを目立たせるための絵を描いてもいいか」と自分でできることを出してきた。手紙グループは何度も下書きをして出前授業でお世話になったテレビ局や地元のモスバーガーに、自分達が今取り組んでいることや困っていることなどを書いた。

8月の出校日には「先生、スーパー○○の店長さんが『段ボールを好きに置いていいよ』って言っていました。また挨拶にいってきます」と張り切って教えてくれた。挨拶の仕方や話す内容を考えレポート用紙に書いて自分達だけで成立したこの企画に自信を持つことができた瞬間だった。2回目に店長さんに挨拶にいったときに、「スーパーだから古着が適当に置かれている状態にならないように」と注意を受けたので、スーパーに毎日古着をチェックする担当表を作ってグループで話し合った。

9月に入り、毎日のようにスーパーに見に行き、自転車では運びきれない物は家族の協力も得て車で服を学校まで運んだ。9月の初旬、自分達が夏休み中にマンション内で配った広告を見て持ってきてくれた服をまとめて学校に運んできた児童もいた。マンションの管理人さんに直接交渉し、子どもがいそうな家庭をそれぞれまわったようだ。「直接持ってきてくれる人が多くて驚いた」と人との繋がりを感じたようだ。9月の中旬、運動会を前にして服がたくさん集まり始めたところにこの活動を知った中日新聞の記者が授業を取材に来た。これはチャンスと思ったメディア班は新聞にこの活動を宣伝してもらい、服を集めることを呼びかけてほしいことを直接交渉した。9月21日に活動内容が中日新聞に載り、宣伝効果は抜群だった。22日に隣町に住む方がわざわざ新聞を読んで孫のいらなくなった服を持ってきてくれた。 


話し合って、行動に移す。


心を込めてダンボールに。


たくさんの服が集まりました。

4.まとめ
11月下旬服は3,000枚を超えた。自分達のチカラでこれだけのことができたことは、子どもたちの自信に繋がった。今まで協力してくださった方へ何ができるのかを考えていく授業を行い、自分達がどんなことをしてきたのかを振り返っていき、服を送りこのプロジェクトは終わった。 出前授業や体験的な学習を通して本物に出会うことで、自己の可能性や能力に気付き、そこから自分が社会の中で担う役割を模索しながら伝え合う活動とともに実践力を養う力をつけてきたと確信している。

JICAほか、教育支援機関の活用例

開発教育指導者研修、教師海外研修 

平成25年度JICA中部の開発教育指導者研修、教師海外研修に参加させていただいた。訪問先は「ガーナ」。これらの研修で新しい世界を知ることができた。自分にはできないだろうと考えていたことがどんどん可能になるのがこの研修の醍醐味である。「持続可能な開発」をテーマに進められている研修なだけあって、受講から1年以上たった今でも児童や生徒に国際理解教育を広めようと出前授業に出かけたり、学校でワークショップ型研修をしたりする力をつけてもらったと感謝している。

出前講座

JICA中部の方の出前講座は青年海外協力隊員だった方から直接お話を聞くことができ、児童に新しい世界を見せることができる。また、JICA中部への施設見学は私たちの学校では「名古屋分散」と題し、学校から電車で班ごとに現地に向かう。昼もJICA中部のレストランで海外のメニューを注文した。ワークショップ型の授業も行っていただき、施設見学もでき、様々な視点から物事をとらえることができた。

国際理解教育の実践に有益だと思うもの 

  • JICA中部国際センター「教室から地球へ」
  • 愛知県国際交流協会「わたしたちの地球と未来」
  • 名古屋国際センター「マンガジア」
  • JICA地球ひろば「国際理解教育実践資料集」
  • 開発教育協会「世界がもし100人の村だったら」
  • 日本国際飢餓対策機構「世界と地球の困った現実」
  • JICA「ぼくら地球調査隊」
  • 国際理解教育センター(NIED),国際理解教育センターの研修

今後、チャレンジしたいこと

自分が担当している学年だけで終わるのではなく、勤務している学校を出発点に国際理解教育の重要性や楽しさを感じてもらう活動を広げていきたいと思っている。そのために、出前授業を行ったり、研修などに積極的に取り組んだり、実践できる先生方を増やしていきたいと考えている。また、児童や生徒達には新しい世界を知ってもらい、今の自分にできることを考え、行動できるようになってほしいと願う。

ショートコラム 外国人から見た日本 ~異なる視点で、新たな気づき~

2014年の外国人訪日者数は、1,300万人を超えました。2012年は約835万人、2013年に1,000万人を超え(注1)、2014年も大幅増加となりました。 東京オリンピックが行われる2020年には、2,000万人突破を目標としています。

注1:日本政府観光局(JNTO)12月22日発表による
日本政府観光局トップページ

さらなる外国人訪日者の増加を図るとともに、クール・ジャパンを含めた日本ブランド、日本的な「価値」への国際理解を増進するため、外務省は青少年交流事業「JENESYS2.0」を実施しています。アジア太平洋諸国及び北米地域より中学・高校・大学生等、2年間で約35,000人の招へいを行っています。約8泊9日の日程で日本を訪問し、日本企業視察、地方自治体訪問、歴史的建築物・世界遺産、最先端技術の展示施設等の訪問や、学校交流、ホームステイを行います。招へい者は、日本滞在を通して "What is your concept of cool-Japan?" という問いの答えを見つけ、そして帰国後には、日本で見つけたクール・ジャパンを発信していきます。

招へい者は、日本滞在中、多くのクール・ジャパンを発見しようと奮起しています。そんな中で招へい者がプログラムの中で特に印象深かったこととしてよく挙げられるのがホームステイと学校訪問です。学校訪問とは、小・中・高等学校・大学・専門学校等にて、授業(主に英語、体育、数学)に参加し、ディスカションプログラム等を行います。お互いの国をプレゼンテーションしたり、将来の夢を語り合ったり、時には、貿易ゲームを一緒に行うといったプログラムを組むこともあります。

言葉が通じないこともあるようですが、日本人学生、招へい者の両者ともに、身振り手振りでコミュニケーションを取ります。お互いの文化の共通点を見つけては喜び合い、相違点を見つけては驚き、学校交流終了時には、連絡先を交換します。互いに距離は離れていても、メールやFacebookなどで簡単にコミュニケーションをとれるようになった今、日本での学校交流がきっかけとなり、長期的な友好関係へと発展していく様子が見受けられます。

こうしたプログラムを通じ、招へい者の帰国時の感想を見ると、興味深いクール・ジャパンを知ることができます。

  • 日本人は伝統を大事にしている。最先端技術も素晴らしいが、さらに素晴らしいのは伝統を上手く先端技術に取り入れていること。
  • 日本人の人柄。フレンドリーで優しい。自分たちの為に何でもしてくれた。いつも「お腹は空いていないか」と心配してくれ、食べきれないほど沢山のご飯を出してくれた。日本人こそが、クール・ジャパン!

なかには、こんな意見もあります。

  • トイレ! 個室に入ったら、便座カバーが自動的にあがってびっくりした!清潔できれいで、こんなトイレは自国にはない。
  • 居間の電気。電気からヒモが下がっていて、そのヒモを引けば電気をつけたり消したりが出来る。とても便利!日本人の気遣い、技術の高さを感じた。

日本で生まれ育った私たちにとっては当たり前となっていることを、招へい者は興味深いと発見します。そんな彼らの見解は、私たちに新しい気付きを与えてくれることがしばしばあります。実際に外国人と交流することで、彼らの視点で世界を知り、さらには日本を知ることにもつながります。これこそまさに、人と人とのつながりから生まれる国際理解教育や開発教育の足掛かりであり、さらには国をまたいだ友好関係は、世界規模の平和に貢献していくのではないでしょうか。

世界経済とのさらなる統合 ~Welcome to Japan!~(首相官邸サイト)
青少年交流事業「JENESYS2.0」(外務省サイト)

 
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