【Vol.5】実践事例紹介:北海道江別市立大麻東小学校 堀幸美先生/コラム:持続可能な開発のための教育の10年(ESD)のこれから

今回の事例紹介は、北海道江別市立大麻東小学校 堀幸美先生です。
堀先生は平成19年度教師海外研修にて、タンザニアを訪れました。現地で撮ってきた写真や書籍等を活用して、児童が自分たちで「カルタ」を作ってみるという堀先生の取り組みをご紹介します。「違い」だけでなく「共通点」を発見することで、子どもたちの中に明るい未来への希望が生まれ、国際人としての資質を養うことにつながるのではないかと考えられた教材です。

国際理解教育に対する思い

国際理解教育の魅力は、教材の生みの苦しみと、実践した時の子どもたちの驚きや感動にある。海外へ出かけて行っては、教材の卵たちをお土産に仲間とともにブラッシュアップし、一つの教材に作り上げる。それらを通して、世界と子どもたちをつなげる。私のライフワークである。仲間との出会いも大切な宝物だ。

実践事例

単元名

ジャンボ!タンザニア!on the カルタ

授業

総合的な学習の時間(9時間)

対象者

対象:小学校、6年生、27人

実践の目的

研修前、私自身のタンザニアのイメージは、テレビなどで紹介されている「野生動物」「貧困」というものであった。しかし、実際に訪問してみて驚いた。飛行場からダルエスサラームのホテルへ向かう車窓から見える景色の中に、見事に「格差」が映し出されていたのだ。野生動物こそいないが、今にもつぶれそうな建物、屋根がかたむき、ゴミに囲まれた店、しかもその隣にはTOYOTAの立派な看板。頭に水瓶をのせて粗末な服を着た人もいれば、上品なスーツを着た人も。ホテルのあるダルエスサラームでおいしい中華料理をいただいた翌日、地方への車中、いくつも点在している不衛生な村を通過した。

このように、私が一番驚いたのは「都市部」と「農村部」の格差であった。このことをぜひ日本の子どもたちに伝えたいと思った。しかしそれだけではなく、私たちとの共通点もたくさんあった。夢を持つ気持ち、家族を思う心、仕事や勉強を頑張る様子、青々とした田んぼや米、自然、等々。

そこで、研修の中で出会った方々(専門家・協力隊員・現地の方々)の活躍の紹介、タンザニアの子どもたちの生き生きと学ぶ様子、日本と似ているところなど、子どもたちにとって明るく感じ取れるものをフォトランゲージを通して積極的に伝えた。タンザニアの各国からの資金援助の重要性も紹介した。文章や映像資料だけでは感じ取れないことを、私自身の五感を使って感じ取ってきた。それら、私の見たタンザニアをできるだけそのまま子どもたちに伝えた。

自分たちとの違いや珍しいものに目が行きがちであるが、「違い」だけでなく「共通点」を発見することで、子どもたちの中に明るい未来への希望が生まれ、国際人としての資質を養うことにつながるのではないかと考えた。違いや共通点を感じ取った後で、その思いを日本の文化である「カルタ」にして表現し、作品として仕上げた。このことで、改めて自分たちの文化を見直すことができ、タンザニアの文化を大切に思う気持ちも芽生えたようだ。

これらの作品をタンザニアの小学生に贈り、交流を図りたい。

授業の構成案

時限 テーマ・ねらい 方法・内容 使用教材
1 アフリカ・タンザニアについて興味・関心を持つ
  1. 事前調査用アンケート(※)に答える
  2. アフリカ・タンザニアについて知っていることやイメージを交流する
  1. アンケート用紙
  2. 地球儀
  3. 世界地図
  4. タンザニアで購入した民族衣装と楽器
  5. タンザニアの国旗
  6. タンザニア国内地図
2・3 タンザニアについての理解を深める
  1. タンザニアで撮った写真で、フォトランゲージをする
  2. 主に、自分のイメージとのギャップを通して理解を深める
  3. 自分たちとの相違点や共通点を考え、交流する
  4. 協力隊など現地で活躍している方々の思いを知る
1. タンザニアで撮影した写真
2. 地球儀
3. 世界地図
4. 民族音楽CD
5. 協力隊などの映像
4・5 タンザニアカルタを作る
  1. 前時に得た知識を活用し、「タンザニア紹介カルタ」を作る
  2. 絵札と読み札を対応させるように考える
  1. タンザニアで撮影した写真
  2. タンザニアについての書籍
    (写真が多いもの)
6・7 ふるさと(千歳・日本)紹介カルタを作る
  1. 自分たちの周りを見直し自慢できることをカルタに表す
  2. タンザニアとの共通点を探し、カルタにする
  1. 千歳紹介のパンフレッなど
  2. タンザニアで撮影した写真
  3. 日本の景色の写真
  4. 日本についての書籍(写真が多いもの)
8 作ったカルタで遊びながら友だちの思いを知る
  1. グループでカルタ遊びをする
  2. 遊びを通して、様々な気付きや思いを交流し合う
  1. 手作りカルタ
9 授業を通して得たことを感想文に表現する
  1. 感想文を書く
  2. 発表を通して友だちの思いを共有する
  3. 日本とタンザニアとの相違点や共通点を交流し合う
  4. 自分たちの思いのこもったカルタをタンザニアの小学生に贈り、交流のきっかけにする
  1. 感想文用紙
  2. タンザニアの小学生からの手紙

事業実践を通しての反省など

《実践を振り返って》
この単元を学習する前の子どもたちは、研修へ出かける前の私と同じように「アフリカ」といえば野生動物、貧しい、暑いなど、ステレオタイプでありそれで知っていると思っていた。アンケートの結果からもそのことがわかる。しかし、私の見てきたタンザニアの写真を中心に紹介していくと「行ってみたい」「会ってみたい」「話してみたい」と、もっと知りたいという反応が非常に多くみられるようになった。休み時間などにも写真を見たいと言う。放課後、「もっと話を聞きたい」と来る子どももいた。自分の中に新しい価値観が生まれたのだろう。

タンザニアのことを紹介した後で、子どもたち自身が理解したタンザニアのことと、自分たちの周りの様子をタンザニアの子どもたちへ伝えるという活動を取り入れた。その方法として「カルタ」を選んでみた。カルタは日本の伝統的な文化であり、子どもたちも小さい頃から親しんできた遊びである。きっとタンザニアの子どもたちにも楽しいゲームとして受け入れられ、日本の文化を紹介することができる。遊びながらお互いの文化や生活について知ることができる。

また、カルタという形は、短い言葉でわかりやすく伝えなければならない。短い言葉でまとめるという作業は「よく考えること」をしなければならない。子どもたちが自分たちの周りを見直し、まったくの異国のタンザニアのことを考えることを通して、世界に目を向けるきっかけとする教材となった。

自分の作ったカルタが、遠いタンザニアで読まれ楽しく遊んでもらえることを、子どもたちは楽しみにしている。

JICAほか、教育支援機関の活用例

2008年、JICA北海道より教師海外研修へ参加させていただいた。訪問国は「タンザニア」。あちらの職員の方がよく考えて下さり、タンザニア国内の都市部・農村部・海辺の町・山の中にある集落・小学校から高等学校・・・。タンザニアの魅力を満喫すると同時に、教材に使えそうなものが山と集まった。帰国後の教材の生みの苦しみはとても楽しく、子どもたちが夢中になるような教材が二つ生まれた。

今後、チャレンジしたいこと

今後は、自分自身でスタデイツアーをコーディネートし、多様な視点で様々な国を見て、教材を開発・作成していきたい。また、訪問する際に自分の学級の子どもたちの紹介ビデオレターや作品を持ち込み、その国の同年代の子どもたちと交流の橋渡しをしたいと考えている。

ショートコラム 持続可能な開発のための教育の10年(ESD)のこれから

2002年に南アフリカで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグサミット)において、日本政府・NGO共同で提案した「持続可能な開発のための教育」が満場一致で採択され、2005年より「国連・持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development : ESD)の10年」が開始。今年で10年目を迎えます。

当時の小泉純一郎首相は、「日本は、天然資源に恵まれない中、人的資源を礎として今日の日本を築いて参りました。日本は、発展の礎として教育を最重要視してきました。なればこそ、『持続可能な開発のための教育の十年』を国連が宣言するように、日本のNGOとともに提案しました。また5年間で2500億円以上の教育援助を提供することとしています」と演説しています。(首相官邸ホームページ)

日本国内におけるESDの10年を振り返ると、教育振興基本計画や学習指導要領などへESDが記述されるとともに、様々な形で学校教育にも取り入れられました。ESDの推進を担う機関であるユネスコの理念を普及・実現することを目的とするユネスコスクールには705校が参加(2014年4月現在)。世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合っています。なかでも、宮城県気仙沼市は市内の殆どの学校・園がユネスコスクールに参加し、学校、地域、行政が連携を深めてきました。そしてこの連携は、東日本大震災時の地域のスムーズな連携にもつながり、ESDが地域に役立った顕著な例として知られるようになりました。

ESD最終年の今年、ESDの10年の成果を確認し、今後の推進方策につなげる「ESDに関するユネスコ世界会議」が岡山市と名古屋市で開催されます。

この世界各国のESDの取り組みと成果が紹介される世界会議の場で、これまでESDを推進してきた日本の市民団体等が互いの成果と課題を学びあった結果を提言としてまとめた「地域と市民社会からのESD提言」を発表する予定です。この提言は、「地域全体でESDを進める」「教育改革を進める」「ユースの参画をすすめる」「ESD推進の仕組みを作る」という項目が示されており、教育改革では、新しい教育の方向性としての学習指導要領へのESDの明記、教員養成課程や教員研修でのESDの導入、ESDの内容として持続可能な経済教育の開発などの必要性が挙げられています。

さらに、ユネスコが今後のESD推進のための指針として発表した「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」にも、5つの優先行動分野の一つとして、「ESDを実践する教育者の育成」が掲げられています。

未来を担う次世代の教育。学校教育とのかかわりも注視していきたいですね。

持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)(文科省ウェブサイト)

持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム(文科省ウェブサイト)

地域と市民社会からのESD提言(持続可能な開発のための教育の10年推進会議ウェブサイト:PDF403KB)

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