途上国で抱いた復興への思いを福島に~復興支援員として活動した協力隊経験者(2016年3月18日掲載)

東日本大震災から5年。かつてない規模の被害を受けた地域の早期復旧・復興を支援しようと、当協会は、震災発生直後には災害救援専門ボランティアを、その後の中長期的な支援段階では国内協力隊員など、その時のニーズに見合った派遣形態で青年海外協力隊経験者を被災地に派遣してきました。2013年1月からは、復興庁・JOCA・JICAの三者連携を通じ、被災自治体のニーズに合ったスキルを持った青年海外協力隊経験者を「復興支援員」として派遣する取り組みを開始。これまでに、100名を超える協力隊経験者が復興支援員として岩手、宮城、福島の3県に派遣され、被災自治体の「市町村応援職員」や、復興局や出先機関に勤務する「復興支援専門員」として活動してきました。

福島県で活動し、2016年3月末に復興支援員の任期を終える森一樹さん(平成21年度3次隊・フィリピン・村落開発普及員/福島復興局配属)、東郷知沙さん(平成23年度2次隊・ガーナ・プログラムオフィサー/福島復興局帰還環境整備センター〔川内村〕配属)、濵田愛さん(平成23年度2次隊・ヨルダン・体育/南相馬市健康づくり課に派遣)、草野恵美さん(平成23年度1次隊・フィリピン・村落開発普及員/双葉町教育委員会〔いわき市〕に派遣)の4人に話を聞きました。

復興支援員たちの写真
(左から)東郷さん、濵田さん、草野さん、森さん

森 一樹さん(平成21年度3次隊・フィリピン・村落開発普及員) 
配属先:福島復興局

2013年7月から、復興支援員専門員として福島復興局で市町村応援職員の業務調整を担当しました。業務内容は青年海外協力隊などJICAボランティアの調整員業務と同様ですが、採用から関わる点が大きく異なります。市町村応援職員の採用、勤務中の業務管理、業務ヒアリングなど勤務中のサポートから退職までの事務業務全般を担います。

震災が起こった日は、協力隊員として活動中のフィリピンから一時帰国で、都内にいました。被害の大きさが気がかりでしたが、帰国の日を延長できず、後ろ髪を引かれる思いで3月15日に関西空港からフィリピンに戻りました。現地でも震災のことを多くの人から聞かれ、帰国したら復興支援に携わりたいと考えるようになりました。

2012年1月に活動を終えて日本に帰国した後、同年4月、岩手県遠野市社会福祉協議会の臨時職員に採用され、2013年3月までの1年間、仮設住宅サポートセンターの生活支援相談員として勤務。任期満了に伴いその年の7月から福島復興局の市町村応援職員調整員となり、これまで2年9か月勤務しました。

調整員の業務では、市町村応援職員の派遣にかかる自治体のニーズ調査も担当しています。当初は、土木や医療系等の専門職の他マンパワー的なニーズも多かったのですが、復興が進むにつれて、土木、保健師の他、建築、学芸員や行政経験者等、以前よりも専門的な資格や経験を持つ人のニーズが高まっています。なお、自治体によってニーズが異なりますので、民間等の社会経験しかない方でも応援職員として採用される可能性は大いにあります。

平成27年12月現在、東北3県に計169名の市町村応援職員がいて、福島県では68名が活動中、うち15名が青年海外協力隊協力隊経験者です。市町村応援職員・復興支援専門員ともに、復興庁の非常勤職員(期間業務職員)として採用され、任期は最長3年間です。自治体によっては、市町村応援職員の任期終了後に直接採用される例も増えているようです。

福島は農業県で、モモやリンゴ等の果物や野菜、山や温泉等の自然の良さがあり、物価も安く、気に入っています。3月の退任後も福島に残り、別の機関で復興関係の業務に携わる予定です。

※協力隊経験者でない人も含む、市町村応援職員の数。
協力隊経験者がある市町村応援職員の数は、2016年3月1日現在、3県あわせて50名で、福島では15名が活動中。

東郷知沙さん(平成23年度2次隊・ガーナ・プログラムオフィサー) 
配属先:福島復興局帰還環境整備センター(川内村)

東日本大震災発生後の2011年8月から協力隊の派遣前訓練に参加しましたが、隊員候補生の中には、被災県出身のため派遣を辞退して復旧・復旧活動に加わる人や、訓練の合間を縫ってボランティア活動をする人もいました。私自身は関西出身で、阪神・淡路大震災を経験し、震災直後は多くのボランティアが駆けつけたものの、年月が経つと支援が手薄になる様子を見ていました。そこで、協力隊で活動してから復興を手伝おうと考えていました。帰国時の説明会で復興支援員の募集を知り、友人からの勧めもあって応募しました。

帰還環境整備センターは福島復興局の出先機関です。2014年1月に着任し、保健福祉課、教育課の業務を担当し、復興局の補助事業、交付金事業、復興計画に基づく交付金申請など、幅広い内容を受け持っていました。時々、担当外の相談が持ち込まれ、そういったときは、ヒアリングをし、役場の方と相談して対応しました。また、川内村は他の被災自治体に先駆けて2012年4月から徐々に帰還を始めた自治体だったので、政府要人の来訪が多く、その業務調整も手伝いました。

住居は山間部にあり、コンビニもないところ。着任後、大雪に見舞われて家から出られなかったこともありました。村の人から「大変でしょう」「こんなところに女性一人で大丈夫?」と心配されましたが、協力隊員時代は男性隊員も驚くほど僻地にいたので、まったく気になりませんでした。

復興支援員としての2年間では、被災者の声を聞くことができたほか、国と自治体の業務を側面から見ることができ、勉強になりました。4月からは、川内村に職員として勤務します。

濵田 愛さん(平成23年度2次隊・ヨルダン・体育)
配属先:南相馬市健康づくり課

震災発生後に、協力隊の派遣前訓練に入りました。震災のことは当時から気がかりだったので、任期終了後に復興支援に従事しようと決めていました。派遣先のヨルダンでは福島のことを聞かれましたが、答えられず、被災地の様子を知っておかなければと、復興支援員に応募しました。

2014年1月から、南相馬市の健康づくり課で健康教育を担っています。南相馬市は、市外から避難をして市外に居住している人、市内で自宅に住めないため引っ越している人、市外・県外へ避難している人が混在しています。教室ではさまざまな状況の方とかかわる機会が多く、その中でさまざまな人と交流してきた協力隊経験が役立ちました。一方、方言では苦労しました。高齢者向けの教室も多かったのですが、分からない時は、3回くらい聞き返し、それでも分からないので、諦めたことも・・・。2年間活動しても、福島弁はまだマスターできません。

南相馬市の南部、3分の1がまだ帰還していない区域で、来年度は帰還が始まるかもしれない重要な時期です。そのため、ここに残って何かできるのでは、と思い、4月からは南相馬市役所の任期付職員として業務を継続することになりました。

※注:南相馬市は、居住制限区域、避難指示解除準備区域と、避難不要だった地域が混在している。

草野恵美さん(平成23年度1次隊・フィリピン・村落開発普及員)
配属先:双葉町教育委員会(いわき市)

私も、震災の直後に協力隊の派遣前訓練に入りました。出身は福島県いわき市です。訓練所入所が決まったとき、当時の職場の上司から「福島がこんな状況なのに、海外に行くのか」と冗談まじりに言われました。その言葉が心に突き刺さり、「本当に協力隊に行っていいのか」と悩む中、被災地には、多くの国から援助が寄せられ、中には途上国や貧しい国も含まれていることをニュースで知りました。それは青年海外協力隊など、これまでの日本の海外支援があったからだと思えたとき、ようやく納得できる結論に達しました。自分がこれから海外で積む経験が、ゆくゆくは日本のためになるのではないかと。そう思い、協力隊に行く決心ができました。帰国したら福島の活性化につながる手伝いをしたいと思っていた中、帰国半年前に、JICAのメールマガジンで復興支援員の募集を知り、応募を決めていました。

2013年11月から、双葉町教育委員会生涯学習係で社会教育にかかわる業務を担当しました。双葉町は一度県外に避難した後、福島県内に機能を移した経緯があり、他の県内自治体に比べ、町民が離れ離れになっています。学び・学習の場を提供し、学ぶことの楽しさ、大切さを感じてもらうことが社会教育の本来の目的ですが、震災後は、離れ離れとなった町民が集まれる場としてのコミュニティづくり(きずなの維持)にもつながっています。平成26年度は県内・県外併せて10地域で、健康、手芸、陶芸、現地研修など、幅広い内容の教室を開催しました。平成27年度は、「ふたばの昔ばなし」をもとに紙芝居を制作、発表するという、紙芝居教室を開催しました。双葉町の紙芝居は3月中に町のホームページに掲載予定です。

協力隊時代は、何もないところから課題を見つけ活動する村落開発普及員でした。双葉町の文化や言葉は出身地のいわき市とは異なっており、まずは双葉町を知ることから始め、信頼関係を築いていきました。自分の考えを押しつけず、まずはそこのやり方を知り、従うところは従う。協力隊時代のこの経験が役立ちました。その後徐々に課題が見え始めたときには、第三者の視点で提案したこともあります。それも、信頼関係が築かれていなかったら、受け入れられなかったと思います。

活動では年輩の方と接することが多かったのですが、双葉の方言や文化、双葉町に対する思いに触れ、多くのことを学びました。今後は結婚のため茨城に転居しますが、福島につながる仕事をできれば、と思っています。

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