協力隊経験者の「適応能力」「柔軟さ」が復興の現場に役立つ~福島復興局 白井基晴次長インタビュー(2016年3月18日掲載)

東日本大震災から5年が過ぎ、各被災地から新しいまちづくりの様子が伝わってきます。一方で、震災に加え原発事故による災禍に見舞われた福島県の復興はこれからが本格的なステージ。復興支援に多くの人材が求められている福島県の状況について、福島復興局次長、白井基晴氏に話を聞きました。

現在の状況 

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福島復興局白井次長

福島県全体の避難者数は、2012年6月時点では16.4万人でしたが、2016年1月には10万人を下回りました。そのうち、東京電力福島第一原子力発電所の事故により設定されている避難指示区域からの避難者は約7万人と大きな割合を占めています。このように、福島県では、東日本大震災から5年が経った今もなお、多くの被災者の方が長期にわたる避難生活を強いられています。原発事故の問題にいかに対応していくかが福島復興に取り組む際に最も重要な課題であり、他の被災地とは大きく異なるところです。

避難指示区域には、放射線量の高さに応じて、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域があります。これらの区域は福島第一原発が立地する双葉郡の一部の町村を中心に11の市町村にありましたが、除染の取組や天候による影響等により放射線量は低下してきており、また様々な復興への取組によってインフラ等が整備されてきた結果、これまでに田村市、川内村の一部地域に続き、2015(平成27)年9月には楢葉町で避難指示が解除されました。また、南相馬市、川俣町、葛尾村、川内村の残された避難指示解除準備区域で、避難指示の解除に向けた準備宿泊が行なわれています。政府では、遅くとも2017(平成29)年3月までに居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示を解除できるよう環境整備に取り組んでいるところです。

様々な枠組みを通じた人的支援

現在、岩手、宮城、福島の3県にはそれぞれ70名前後の「市町村応援職員」が派遣されており、福島県内には67名が勤務しています。

「市町村応援職員」は、復興庁が、被災地支援の志がある方を公募し、応募者のスキルや資質、経験などを各市町村から寄せられる要請内容とマッチングし、面接などを経て応募者の希望と市町村のニーズが合致した場合にその市町村に派遣する制度です。この応援職員には、青年海外協力隊などのJICAボランティア経験者のほか、民間企業や行政機関での勤務経験を持つ方など、様々な経歴の方からの応募があり、福島県内の被災市町村で活動していただいています。

東北3県には、様々なスキームを通じ、2,200名あまりの人材が被災市町村等に派遣されています(注1)。「市町村応援職員」の制度以外にも、例えば、総務省が中心となり、被災地以外の地方自治体の職員を一定期間応援派遣するスキーム「自治体間派遣(市町村間)」や、国の機関から一時的に職員を派遣する取り組みもあります。また、被災自治体自身が人材不足を補う手段として、自治体OBや民間企業経験者などを任期付職員として採用する場合もあります。この他に、復興庁では「復興支援専門員」として期間業務職員を採用し、復興局やその出先機関に配属し、応援職員の派遣業務や復興事業のサポート業務を行う取り組みもしています。このように、国では、応援職員以外にも被災自治体の人材不足等に対応した様々な人的支援の取組が行われています。

注1: 復興庁 「被災自治体の復興体制の支援」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/post_108.html

福島復興の現場で活躍する協力隊経験者

ところで、応援職員は、各派遣先で熱意をもって業務に取り組んでいますが、中でも協力隊の経験を持つ応援職員は、派遣先の職員や住民の方々と良好な信頼関係を築き、新しい環境にも柔軟に適応しながら高いパフォーマンスを発揮されています。

東日本大震災ほどの大規模な被災経験は、当然ながら福島県内の各自治体にとっても初めてのことであり、復旧・復興への取組においても初めて経験することばかりです。このため、被災市町村が応援職員の派遣を要請しようとしても、「どんな人材を要請したらよいか」「どのような業務を応援職員に任せればよいか」といったことを明確にすること自体が難しい場合もあります。また、要望通りの応援職員を受け入れることができた市町村も、時間の経過と共に復旧・復興に向けた課題が変化し、業務内容やニーズ自体が派遣中に変わることもあります。派遣された応援職員も、「福島復興の力になりたい」との高い志をもって被災地の現場に飛び込んではみたものの、派遣先で思い通りに業務が進められなかったり、新しい職場環境や生活環境等に戸惑いを感じたりする場合もあります。

そのような状況でも、協力隊経験者は柔軟に対応できる人が多い。周囲の環境や状況変化にも柔軟に適応する能力があり、困難な局面に遭遇しても、これに耐えうる忍耐力と問題解決能力が備わっているという印象があります。

協力隊経験者は、派遣前に訓練所で厳しい訓練を受け、その後も国や地域によっては何もないようなところに単身派遣され、日本とは言葉・文化・習慣が全く異なる環境で任務を達成しなければならないという厳しい状況を経験しているからでしょう。また、派遣先では、単に働くのではなく「派遣先の人と一緒に仕事をする」という協力隊の精神を体現されており、地域の人々とのお付き合いを通じて仲間として受け入れられ、コミュニティーに入り込んだ活動をされている方が多いことも印象的です。隊員時代に、国際協力機構(JICA)や派遣国の行政機関・公益団体等といった様々な公的機関との接点を持った経験から、被災市町村での行政関係の業務に取り組む際にも、さほど抵抗なく入れるところがあるのかもしれません。

私は、2002年6月から3年7か月の間、在ベネズエラ日本国大使館に出向していたことがあり、当時、JICAの事務所が無かった同国では、大使館の経済班にいた私が現地でJICAの技術協力プロジェクトの案件形成等の対応をしていました。そのような中、私が赴任した翌年の2003年春にベネズエラに初めて青年海外協力隊が派遣されることになり、ボランティア調整員の方と共に現地で8名の隊員を受け入れた経験があります。結局、彼らが任期を終えて帰国するまでお付き合いさせていただきましたが、厳しい環境の中でも逞しく活動を続け、現地の受入れ機関からも高い評価を受け、私自身も彼らから勇気をもらう思いをしたことを覚えています。今回、福島でも協力隊経験者の方々と一緒に仕事をする機会に巡り合えたのも何かのご縁かもしれません。

「ソフト面」への支援に協力隊経験者が貢献

2011(平成23)年7月に政府が策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」では、2020(平成32)年度までの10年間を復興期間と定めており、このうち、2015(平成27)年度までの「集中復興期間」の取組により、被災地全体ではインフラ復旧は概ね終了し、住宅の再建が最盛期を迎えているとしています。その一方で、今後は、避難の長期化などに伴う被災者の心身のケアや産業の再生が重要になっています。また、特に福島では、ようやく避難指示の解除等が進み、本格的な復興のステージになる中で、被災者支援や住まいと町の復興、産業・生業の再生、原子力災害からの復興・再生といった取り組みを進めていかなければなりません。他の被災地に比べ、福島では、避難指示の解除に伴い、ようやく住民の生活環境の整備や復興計画などに本格的に取り組むことができるようになる市町村もあります。こうした取組には財政面での支援が重要なことは勿論ですが、ハード面からの支援のみならず、ソフト面での支援、即ち、復興に向けた様々な事業を支え進めていく上で必要となる人材を派遣等を通じて支援していくことが、今後ますます必要になっています。

福島復興の現場で必要とされる専門知識や経験は、市町村の復興の状況や抱える課題、取り組む事業等によって様々ですが、応援職員として活動している協力隊経験者の方々は、いずれも派遣先の市町村等から高い評価を得ており、ご本人としても、様々なご苦労をされながらも、やり甲斐を持って復興支援に取り組まれているようです。

福島の復興支援はこれからが正念場。 「福島復興に協力したい」、そんな熱い志をもった協力隊経験者が続いてくださることを願っています。

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