復興支援に対するJOCAの提案

 平成23年4月16日
青年海外協力協会(JOCA)
 

「東日本大震災・緊急支援から地域社会の復興支援へ」
―国内協力隊が担う「ふるさと新生事業」-
JOCAの提案

1. 青年海外協力協会(JOCA)の東日本大震災に対する緊急支援活動

  • JOCAは、3月11日の大地震発生直後から緊急支援活動の実施を前提に、被災状況に関する情報収集を開始、2日後の3月13日には先遣隊を現地に派遣。
  • 同15日には仙台市若林区に職員を配置して現地事務所を立ち上げ、区のボランティアセンターの運営支援、岩沼市での医療関係OGの派遣、給水補助活動への支援等を開始。
  • 岩手県遠野市では、市役所からの協力要請に応えて、3月25日に現地に調整員を派遣し、同市が実施している沿岸部の被災地支援事業に協力して、釜石市内の巡回診療のための看護師OGの派遣のほか、大槌町、山田町等への支援活動を展開。
  • 海外からの救助チームや緊急医療チームの受け入れにあたって、日本側のサポート役としての帰国隊員の活用について外務省に申し入れ、その第1号として3月28日から南三陸イスラエルからの医療チームのサポートに看護師OG2名が参加。
  • JOCAとしては、これらの地域での支援活動を展開するとともに、緊急支援フェーズ以降の復旧・復興及び振興段階を見据えた協力に向け、調査活動を進める予定。 

2.緊急支援から地域復興支援へ 

  • 地震発生から1カ月を経過して、「緊急支援フェーズ」から「復旧・復興支援フェーズ」へと支援ニーズにも変化が生じる時期にさしかかっている。
  • 今回の被災状況は、これまでのケースと違い、沿岸部においては特に、津波によって行政機構をはじめ地域社会としての機能が壊滅的な打撃を受けたところが多く、復旧・復興には相当長期的な取り組みが必要な状況となっている。
  • 他方、一昨年の12月には、緊急アピール「青年海外協力隊を国家戦略とする」で、協力隊体験を我が国の地域社会の活性化に生かす「国内版協力隊構想」を打ち上げ、社会還元活動の推進を宣言しているJOCAとして、緊急支援から復旧・復興支援、更には、下記にも示す、地域コミュニティの再生(ふるさと新生)、再活性化に向けた多目的な息の長い取り組みに組織を挙げて取り組む。 

3. 「国内版協力隊」が挑む地域社会再生支援 

  • JOCAのもとに集まった各分野の専門技術・知識を有する帰国隊員が中核となり、多国籍のボランティアとともに日本の地域社会の活性化を目指す「国内版協力隊」が、被災地域の自治体と協力して社会インフラの整備や地場産業の再生等に挑戦する。
  • これは、単なる復旧・復興ではなく、今回の大震災から得られた教訓を最大限に生かした、防災力の高い地域社会づくりを目指すもので、参加するボランティアは、その実践活動の過程で地域おこしに必要な知識やスキルを習得し、国内外の他の地域社会の活性化に取り組む人材として育成される。
  • 青年海外協力隊参加希望者には、地域社会での実践に加え、サイバー講座(e-ラーニング)等を活用して海外ボランティア活動に必要な知識・能力を身につけさせる。
  • その他の参加ボランティアの進路としては、引き続き被災地の地域開発を担う人材として定着する道のほか、少子高齢化が進行する全国各地の地域社会の活性化を担う、あるいは我が国の安全保障上喫緊の課題である離島振興を担う人材としての活用を図ることも視野に入れる。
  • 緊急支援のフェーズから、今後の中長期的な展開を念頭に置いて、単なるマンパワーの提供にとどまることなく、自治体のニーズに即した組織的対応を図る。 

4. 中・長期的取り組みが必要な復旧・復興支援

  • 被害状況から考えて、今回の被災地の復興には相当長期間の取り組みが必要と考えられ、JOCAとしても少なくとも五ヶ年程度の中期的な計画のもとに取り組む必要がある。
  • 次項に述べるJOCAのモデル事業(被災地域の「ふるさと新生」事業)を推進するために、本部に計画の策定・実施を担当する部署を設けるとともに、活動現場を支える現地事務所の体制を整備し、しっかりした実施体制を構築する必要がある。平成23年4月中に仙台市内にJOCA東北支部を新設し、東北各地の現地事務所のサポートにあたらせる。
  • 当面、2011年度から協力隊創設50周年にあたる2015年までの5ヶ年を対象に、国内版協力隊事業創設を含む震災復興関連のモデル事業計画を早急に策定し、必要経費については、特定事業資金として別枠で確保する。 
  • なお、2011年度中に、趣旨に賛同する帰国隊員の中から新規に専属のスタッフを数十名規模で募り、事業を展開する。 

5. JOCA「被災地域のふるさと新生」モデル事業案  

 別紙概念図[PDF280KB]

(1)提案の背景

  • これまで45年間にわたり、さまざまな分野の技術・技能を生かして、発展途上国の地域社会づくりを体験してきた青年海外協力隊の経験者が、その経験を生かして、国際協力の新たな発想の下に多国籍のボランティアによるチームを編成し、今回の東日本大震災で被災した人々とともに、壊滅した地域社会を再生する新しいふるさと創りを目指す。
  • 「新しいふるさと」創りにあたっては、我が国で起こりうる様々な災害への備えを有する防災力の高い地域社会のモデルとして、今後の我が国の国土整備の全体構想の一部として取り入れられるべき水準のものを目指すとともに、この新しい地域社会建設を通じて、多国籍の人材を国内外で災害に強い地域社会づくりの担い手として育てるという新しい国際協力の形を創りだす。

(2)提案の骨子 

  • 津波による被災沿岸地域の単なる復旧・復興或いは再開発ではなく、将来二度と今回のような津波災害で壊滅することのない災害に強い新たな町づくりを前提に、被災民の「新たなふるさと」創りを支援する。 
  • 5ヶ年程度の短期集中的な取り組みとする。
  • 新しい町が備えるべき要件
    [1] 高い防災力(高台へ立地。耐震性住宅等)
    [2] 地域自給型の町づくり
    ✔食料の地域自給体制(自給可能な農地、水源の確保)
    ✔エネルギーの地域自給(バイオマス、小水力発電、ソーラー等のソフトエネルギーを活用したエコタウン構想)
    [3] 大都市における大規模災害発生時に被災民を受け入れ可能な余裕をもった町づくり(ドイツの滞在型市民農園・クライン・ガルテン方式の応用あるいは農業公園の設置等を検討)
     
  • 実現の推進力
    [1] 当該地域の自治体がコミュニティ型の企業を創設し、被災者に対する就労支援の一環として被災民を雇用して新たな町づくりを推進。都市計画、土木・建築、農業等各分野の専門技術を有する帰国隊員と多国籍のボランティアにより編成されたJOCAのチームが総がかりで協力。
    [2] JOCAチームは、現地に活動拠点を設置し、多国籍のボランティアによるワークキャンプ方式で事業を推進。 

(3)成果の活用

  • 首都圏の直下型地震や東海地震など将来起こりうる大震災への備えとして、今回の東北地方での新しいふるさと創りをモデルとして、大都市近郊に都市の被災民を受け入れ可能な地域自給型の地域社会を配することが考えられる。(平時には都市住民が週末の余暇活動として農業を楽しむ) 
  • 多国籍の国際ボランティアチームとの共同作業による新しい町づくりの経験は、混成チームの作業過程というノウハウを含めて、世界の他地域で起きる大規模災害時の壊滅したふるさとの蘇生に、理想的なモデルを提供することになり、同時に日本の新しい国際協力の分野を切り開くことにつながる。 

6. 留意すべき背景

(1)ODA無用論に対しては実践活動をもって反論

  • 協力隊事業発足の初期には、「まだまだ日本の国内に多くの問題があるのに、なぜわざわざ海外にまで出かけて他国を援助するのか」という国民の声があったし、このような声は、これまで国内の景気後退期などにもしばしば上がってきた。最近では長期にわたるリーマン・ショック以降の経済的困難を背景とした一昨年来の事業仕分けによってODAに対する強い逆風の中で、今回の大震災が勃発。 
  • 大惨事に直面している日本に他国に援助している余裕はない、今年度のODA予算はゼロにすべきといった極端な声さえ上がっている。協力隊の派遣は中止して、予算を国内の復興支援に回せという声が出てきても不思議ではない。 
  • 今回の大災害に対し、アフリカ等の最貧国を含む世界のほとんどの国から、我が国に対し温かい支援の手が差し伸べられているが、これは協力隊事業を含む我が国の長年にわたる国際協力活動が育んできた各国との友好親善関係の反映であることを忘れるべきではない。 
  • また日ごろ協力隊事業は我が国の国益に資する事業であると声を大にして言っているJOCAとして、この日本の危機的状況に対して組織をあげて立ち上がることができなければ、JOCAだけでなく、協力隊事業の存在理由が問われることとなる。 

(2)自治体とのネットワークの活用

  • JOCAの強みは、各都道府県OB会という全国ネットを有していることと、彼らの地道な日常活動によって全国各地の自治体と太いパイプを持っていることである。被災地域の自治体と直接連携することはもちろん、JOCAは、今次の大災害に対しボランティア派遣など支援の手を差し伸べる意思を有する自治体と被災地を結びつける役割を担うことができる。 

(3)その他の組織との連携

  • 東京大学、新潟産業大学、関西大学、東京農業大学、東京家政学院大学等の協力隊OB・OGが関係する大学に呼びかけ、大学の夏季休暇等を活用して、JOCAの復興支援活動に大学生を参加させるよう働きかけることも可能。 

(4)ボランティア国際年(IYV)プラス10 

  • 今年は2001年のボランティア国際年の10周年の年に当たっているところ、国際ボランティア運動の更なる発展を目指して、UNVを中心として世界のボランティア組織が運動を展開している。 
  • 2001年のIYVを提唱した日本のIYVプラス10の事業として、JOCAの復興支援活動に、UNVをはじめ海外からのボランティアの参加を呼びかけて共同プロジェクトを実施することが可能。 

7. 終わりに 

  • 私たちのこの計画への着手は、転換期にある日本の国際協力の再編成に新しい息吹をもたらすであろう。青年海外協力隊事業がこれまで45年にわたって蓄積してきたすべてを投入して取り組むだけの価値がある戦略事業であると確信する。 
  • 平成23年6月末を目途に事業計画案を策定し、ともに取り組む自治体の理解を求め、早急な事業開始を目指したい。 

以上

▽参考資料:(平成21年12月12日 青年海外協力隊帰国隊員一同)緊急アピール「青年海外協力隊事業を国家戦略とする」

    緊急アピール[PDF/984KB] 

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