第3回ふくしま応援ツアー報告:「知ること」から始まる復興支援(2013年11月開催)

「『ボランティアに行って、むしろ現地の方々に元気をもらいました』と言う人がよくいるけれど、なんで、顔で笑って心で泣いてるのに気づいてくれねぇんだ」

2013年11月23、24日に開催された、第3回ふくしま応援ツアー(主催=ふくしま青年海外協力隊の会)のツアー道中、ガイドを務めた清山真琴さん(21-2/チュニジア/作業療法士)が、原発事故により避難した方から聞いたエピソードを、こう紹介しました。この言葉を聞き、私たちは現地の方の声をきちんと聴けているのだろうか、復興支援とは、何をもって「復興」と言えるのか、改めて考えました。

清山さんは宮崎県出身で、「ふくしま心のケアセンター南相馬」に駐在。家族を亡くされた方や、震災後に心の病気が悪化した方などへの対応に加え、作業療法士の経験を生かして、高齢者や子どもへの運動不足の解消案提案などを行っています。被害の大きい地域に行くと腹痛を感じてしまうため普段は足を運ばないものの、参加者の皆さんに現状を知ってもらいたい、このツアーには絶対参加する、とガイドを引き受けられたそうです。

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バスの車窓から見える、除染作業の様子

福島の被災状況は「曖昧な喪失」といわれ、他県とは様相が大いに異なります。そこにモノがあり、壊れてもいないのに手放さなければならない状況。頭で理解はしていても、感情的には容易に納得できるものではありません。しかし怒りの矛先をどこへ向けていいのかもわからない。環境を改善すればいいという訳ではない状況、ジレンマが、福島の復興をより複雑に、より困難にしているように感じられます。そして、突然襲った理不尽な痛みを癒すには、時間が必要です。

被災体験を話して下さった飯館村出身の友田洋さん(8-1/ニカラグア/SE)は、当時、築7年目の家を手放し、現在は会津に避難されています。

「会津での生活には不便がないものの、ときどき荷物を取りに飯館に帰り、自分の家や畑を見ると、飯舘での暮らしに戻りたいという思いが湧いてきます。けれども、子どもへの放射線の影響を考えると、もし避難解除になったとしても飯舘に帰る選択肢はない」。その決断には、苦渋の思いを感じずにはいられません。「幸いにも、子どもたちは会津になじんで元気に生活しており、彼らの故郷はきっと会津になることでしょう」。友田さんの言葉には、故郷を思う気持ちと、寂しさがにじみます。

被災時の状況などを、時に笑いを交えながら話しておられましたが、慣れ親しんだ村から出て行かねばならなかった現実、新しい土地に入っていく時の不安、しかし、その不安をかき消すように分け隔てなく優しく迎え入れてもらえた時の安堵感、その周りの方々への感謝の気持ち、特に周りの方が友田さんのためにして下さったエピソードなどを、こみ上げる思いをこらえながら話していました。辛い状況を悲嘆してではなく、感謝の気持ちがあふれて涙される姿に、東北の人の辛抱強さ、温かみを感じました。

ツアーでは、福島の復興にかかわる関係者による講演もありました。復興庁・JOCA・JICAの三者連携による復興支援員派遣の調整員を務める、福島復興局の渡邉次男OB(S57-2/チュニジア/自動車整備)が福島の復興支援の現状を説明しました。

また、以前、ルワンダで青年海外協力隊員のカウンターパートだったことがきっかけとなり来日して福島県で研修を受け帰国後、祖国で内戦を経験したカンベンガ・マリールイズさんが被災者支援についてお話しくださいました。内戦を逃れて再来日後、現在は、福島県にお住まいです。東日本大震災後はサロンイベントを開催し、祖国で内戦で兄が20年行方不明となっている自身の経験を共有し、「命があれば次があるから」と被災者に励ましを送っています。マリールイズさんは「言うだけならば誰でもできる。実際に福島に来て、人々が頑張る姿を見てほしい」と、ツアー参加者にメッセージを送りました。

2日目には、復興に向けた事業例として、「南相馬市ソーラー・アグリパーク」を視察しました。これは、津波で被災した土地に植物工場と太陽光発電施設をつくり、雇用創出、産業再生の場とするだけでなく、子ども向け体験学習の機会を設け、次世代を担う人材の育成を目指す、2013年3月にオープンしたばかりの施設です。 植物工場は、土を使わず野菜を育てることができ、風評被害の影響を受けない野菜の生産を可能にしています。一行はパークの取り組みを通じ、復興に向けて取り組む福島の姿を学びました。

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バスの窓から見た除染作業の様子

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福島復興局で調整員を務める渡邉次男OB。15名ほどの
帰国隊員が福島県内自治体の「応援職員」として活動

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ソーラー・アグリパークの視察

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アグリパークには野菜工場を併設。風評被害を受けない野菜を生産し、販売している

現状はまだままならないものの、人々は前を見て、着実に自ら歩を進め始めています。悲しいイメージのつきまとう被災地で、風評被害に打ち克つための自然エネルギーの活用、被災した土地の利用、今後を担う人材の育成など、一筋の光を見ることができました。根底に感謝の気持ちをもつ力強い大人たちが繰り広げる仕組みが、復興に関わるだけではない、さらにその先を見据えたより幅広い分野での新たな福島を展開する種となり、そしてその大人の背中を見て育つ子どもたちがしっかりと育てて行ってくれるに違いありません。

辛抱強く、心穏やかな福島の人々は皆、こう話されます。
「ふくしまに来て、ふくしまの現状を知ろうとしてくれるだけでうれしい」

果たして、知るだけでいいのでしょうか。いや、それだけで終わっていいはずがありません。知ったからこそ終われるはずがないのです。そして、福島の人はそれを期待し、だからこそ「まずは知ってほしい」と言っているのではないでしょうか。

このツアーは、福島支援のほんの「入口」に過ぎません。福島の現状を目の当りにし、福島の人々の思いに触れた個々人のこれからのあり方こそが、このツアーの意義を一層高めていくことと思います。

報告:特別業務室 太田路子

 

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